戦闘曲はもちろん、穏やかでメロディアスな楽曲も楽しめる贅沢なサントラだ!
コンポーザー:伊藤賢治、関戸剛、植松伸夫
ゲームのプレイ状況:1周(主人公バーバラ)
これまで「PRESS START」2006年公演の演目に焦点を当ててサントラレビューを続けてまいりましたが、ようやく第2部の演目になります。
「ロマンシングサガ ミンストレルソング」(以下、ミンサガ)の楽曲につきましては主題歌「メヌエット」につきましては歌詞考察という形で既に記事を上げておりますが、今回はサントラのレビューをさせて頂きます。
なお、ミンサガの楽曲は「PRESS START」2010年公演でもアンコール曲として再演されておりますので、2006年公演は参加できなかった私も、幸いなことに聴くことができております。
ミンサガの思い出
ゲームにつきましては、1周のみですがエンディングまでプレイ済みです。
発売当初に購入はしていたのですが、独特なシステムに馴染めず、しばらく積んでおりました。
しかし、ある日「何かゲームがしたい」と思い至り、積みゲーを確認していたところ目に留まりプレイし直してみました。
すると、驚くことにクリアまで一気に突き進むほど、プレイに熱中させて頂きました。
2005年発売で、クリアしたのが確か2011年だったので、5年以上積んでいたということになりますので、その長い空白期間は何だったのかと思わせます。
楽しさが分かれば止まらないのですが、慣れないゲームはそこの壁の克服が大きな山だなというのは、今でも感じておりますが、ミンサガについてもそういった側面があったのかもしれません。
ゲームをプレイしてみようと思い立ったのは、やはり音楽の魅力に拠るところが大きかったです。
サントラは発売当初から聴いていたのですが、「実際にゲーム場面で聴くと、どのような感じなのだろうか?」と気になってきます。
私のよくあるパターンですが、こうした経緯でプレイさせて頂きました。
ちなみに、サントラが発売された当時は私はまだまだゲーム音楽初心者でしたが、「伊藤賢治さんの音楽が凄く良い」という噂は当然私の耳にも入ってきておりました。
バイト先で先輩がミンサガの話をしていたときに「音楽に興味あるんですよね」と言ったところ、「いいね。俺、そういう人好き」と喜んでくれ、翌日このサントラを貸してくれたという思い出があります。
その後、自分で買い直したのは、貧乏学生だった当時は、思い切った買い物ではありましたが、「素晴らしい買い物をしたぞ!」と当時の自分を誉めてあげたいと思っております。
サントラの全体像
2020年2月開催の「ロマンシングサガ オーケストラ祭」でも伊藤さんがおっしゃておりましたが、戦闘曲の作曲は実は苦手意識があり、むしろ、しっとりとした楽曲の方が得意とのことです。
このサントラの特徴は、まず戦闘曲が多いことが挙げられると思います。
そこに注目が集まりがちではあるのですが、キャラクター曲や街曲といった、伊藤さんの本業?のしっとしとした楽曲も多く収録されております。
なので、実はバランスの取れたサントラであるように私は感じております。
そして、たくさん詰まっているという部分で、贅沢な気分にもさせられます。
加えて、ゲームについてもそうなのですが、原作の「ロマンシングサガ」から大幅なアレンジが施されておりますので、原曲との聴き比べも楽しめるサントラになっております。
なお、作曲は伊藤賢治さんがほぼ全曲を担っております。
関戸剛さんは基本的にはアレンジの方で関わっており、アレンジされている曲数は非常に多いですが、作曲されているのは「イスマス城襲撃」の1曲のみとなります。
ミンサガの成功は、音楽のアレンジも重要な要素だと思いますので、関戸さんの活躍をご紹介しないわけにはいきません。
考えてみますと、つい先日発売された「聖剣伝説3RoM」の楽曲アレンジもされてましたし、長年かけて膨大な量のスクエニの楽曲に関わってらっしゃるのが見えてきます。
また、植松伸夫さんは「サガ」シリーズのイベント曲で多く使用されている「涙を拭いて」の作曲者で、ミンサガにも使用されていますのでコンポーザーに名前を挙げさせて頂いております。
トップレート曲
※ 背景色付は☆5 その他は☆4
[DISC1]
メヌエット (Minstrel Song Edit)
オーバーチュア
オープニングタイトル
正義の希望 -Albert-
風を信じて -Aisha-
お宝はすべてイタダキさ! -Jamil-
無垢なる守り人 -Claudia-
絶対自由 -Gray-
情熱の瞳、魅惑の舞 -Barbara-
戦いの序曲
閉じられた心
騎士の誇り
クリスタルシティ
[DISC2]
Minstrel Song
熱情の律動
おまえらカンベンしてください!
神々への挑戦 -四天王バトル-
傷心のアイシャ
邪聖の旋律
涙を拭いて
[DISC3]
決戦! サルーイン -Final Battle with Saruin-
たったひとつの願い
永久なる想い
エンドタイトル
メヌエット (Ending Edit)
[DISC4]
ローザリアの窓辺から
騎士団領の窓辺から
フロンティアの窓辺から
ワロン島の窓辺から
リガウ島の窓辺から
ガレサステップの窓辺から
海の見える窓辺から
漁村の窓辺から
いきなりチャールストン!?
永久なる想い (Piano Solo Version)
オーバーチュア
オープニングタイトル
「PRESS START」の演奏曲は2006年、2010年いずれの公演もこちらの2曲で、メドレー形式で演奏されました。
「オープニングタイトル」は、ロマサガシリーズの象徴的な楽曲で、美しい旋律ながらも、物語の予感だったり、冒険への期待感だったりが溢れ出してくる名曲です。
コンサートレポートでも書きましたが、このストリングスの主旋律をコンサートで聴くと私は鳥肌がブワーっとなります。
ただ、毎回「オーバーチュア」の流れから演奏されるのですが、それも重要な要素だと思っています。
心の準備がないまま「オープニングタイトル」の主旋律を聴くよりも、この流れで聴いた方がより、楽曲への感受性が高まるという印象があります。
「オーバーチュア」の最後の余韻を残すようなピアノの動きから、「オープニングタイトル」の前奏が始まる、これでもう、合わせ技一本になります。
そんな状態に陥ってから入ってくる主旋律なので、印象が全く変わります。
「オーバーチュア」自体はメロディアスな楽曲ではないのですが、飛ばしたりせず、続けて聴いてみて欲しいです。
風を信じて -Aisha-
キャラクター曲も良い曲ばかりですが、私は特にアイシャの楽曲が好きです。
前奏部分と言い、主旋律と言い、音色が素晴らしいです。
楽曲全体のダイナミクスも、メロディアスな旋律も、とにかく良いところしかない楽曲だと思っております。
「キャラクター曲はやはり女性キャラクターの方が旋律は美しくなる傾向になるな」と、この楽曲を聴いていても感じました。
お宝はすべてイタダキさ! -Jamil-
男性キャラクターだとジャミルの曲が特に好きです。
軽快で、悪戯心のようなものが見え隠れする旋律となっております。
今にも財布を盗まれそうな気分になり、思わず警戒してしまったりします。
クリスタルシティ
街曲で個人的に特に印象的な楽曲です。
クリスタルを想起させるような透明感のある音色、旋律であるように感じます。
このように、楽曲からイメージが浮かぶ曲と言うのはゲーム音楽としての良い部分が出ているなと思います。
熱情の律動
戦闘曲は大好きな曲が2曲ありまして、甲乙は付けられません。
そのうちの1曲がこちらなのですが、アレンジの良さと言う部分で際立っているなと思います。
テクニカルなギターサウンドと素晴らしいヴォーカル表現の融合が素晴らしく、耳を奪われます。
ずっと聴いていたくなり、1曲が非常に短く感じるトラックです。
神々への挑戦 -四天王バトル-
甲乙つけられない戦闘曲の2曲目です。
こちらは何といっても、メロディアスな主旋律が素晴らしいです。
近くにトランペットを吹ける人が居たら、この旋律をずっと吹いていて欲しいです。
後半のエレキギターソロパートも、これによって楽曲全体にメリハリが付いている印象なので、重要な個所だと思います。
邪聖の旋律
パイプオルガンの印象的な楽曲で、その迫力に問答無用に聴き入ってしまいます。
なんとこちらの楽曲、「ロマンシングサガ オーケストラ祭り」で中澤美帆さんというオルガニストの方にパイプオルガンで演奏して頂いたのを聴くという、素晴らしい機会に恵まれました。
結果、思い入れの強くなった楽曲です。
コンサートでまた聴きたいと強く願っている楽曲なのですが、ひとまずは「ロマンシングサガ オーケストラ祭り」の音源化に期待しております。
決戦! サルーイン -Final Battle with Saruin-
こちらも有名な戦闘曲です。
メロディアスさも残しながら、格好良いロックテイストのアレンジになっています。
特に印象的なのはドラムのリズムで、心地よい疾走感を覚えます。
ライブで聴いてみたい楽曲ですが、今のところ機会に恵まれていないので、情報を見逃さないようにしたいです。
ベストトラック
ローザリアの窓辺から
ベストトラックについては悩みました。
具体的には「熱情の律動」、「神々への挑戦 -四天王バトル-」と悩みました。
そういった中で、何故この楽曲がベストトラックかと言いますと、ちょっと変わった形で思い入れがあるのです。
実はこのサントラはDISC4が非常に好きで、学生時代に図書館でよく聴いていました。
まだゲーム音楽初心者で、ゲームも未プレイだった頃の話です。
「サントラを全部聞くには長過ぎるし、格好良い戦闘曲はあるけれど、それよりも穏やかな楽曲を図書館では聴きたいな」と考えた結果「DISC4だけを聴く」という妙な結論に達し、何度か実行しておりました。
DISC4では同じ旋律の街BGMを様々なアレンジで聴けるのですが、その1曲目がこちらの楽曲になります。
様々なアレンジが施される前の通常バージョンとでも言えそうな立ち位置にあります。
最初に聴く楽曲ということで印象に残り易かったのもあると思うのですが、何より静かな図書館の環境でこのメロディアスな旋律を聴くのが非常に良く、心が安らいだのを今でもよく覚えています。
ゲームを未プレイだったからこその変な聴き方ではあったのですが、音楽が絡んだこうした思い出と言うのはいつまでも残るので、楽曲への思い入れも強くなります。
というわけで、ベストトラックなのですが、戦闘曲に注目が集まる中、こうした穏やかなに楽曲にも注目して欲しいなという気持ちもあります。
まとめ
ベストトラックに街曲を挙げたように、私は”伊藤節”は戦闘曲だけではないと考えております。
ぜひ、その穏やかでメロディアスな旋律にも注目して頂きたいです。
また、これらの格好良い戦闘曲、穏やかな美しい旋律の曲といった両面を楽しめるサントラなので、ゲーム音楽初心者にも聴き易いスタンダードなサントラだと思います。
なので、「ゲーム音楽に興味はあるけど、何を聴いたら良いのか分からない」という方にもお勧めしたいです。