ゲーム会社の垣根を越え、複数コンポーザー陣で挑んだペルソナサウンド! ペルソナサウンドらしさは今作においても健在で大満足の内容!
コンポーザー:目黒将司、喜多條敦志、増岡郷太、比良彩那、赤羽大夢
ゲームのプレイ状況:1周+全ミッションクリア
今回は、前回のゲームレビューに続き、「ペルソナ5 スクランブルザファントムストライカーズ」のサントラをご紹介します。
元はゲームの限定版に豪華グッズと共に同梱されていたのですが、晴れて先日CDの方もリリースされ、私はそちらを購入した形になります。
このサントラの発売情報も私がP5Sをプレイする動機付けの1つとなっていました。
サントラの全体像
ディスク2枚組で全46曲トラックが141分で収録されています。
特筆すべくは何と言ってもコンポーザーの陣容で、ペルソナシリーズのメインコンポーザーである目黒将司さんは今作のために新しい楽曲は提供されておりません(アレンジ楽曲は数曲のみですが使用されています)。
代わりに作曲を担っていらっしゃるのが、アトラスのサウンド部門でめきめきと頭角を現している喜多條敦志さんの他、コーエーテクモゲームスのサウンドチームもコンポーザーに加わっています。
すなわちゲームのみならず、サウンドの方もゲーム会社の垣根を越え共同制作となっているため、異色の作品とも言えるかもしれません。
そうなると、「ペルソナ5」の世界観が変化してしまうのではないかと不安も覚えますが、ゲームをプレイしている分には全くそのようなことは感じられず、むしろ「ペルソナ5」らしさまで感じられる程上手く嵌っている印象でした。
ただし、そこに貢献しているのはコンポーザー陣のみではなく、シンガーのLynさんの影響は多大であったように感じます。
前作「ペルソナ5」においてもヴォーカリストとして起用されていたLynさんが再登板されており、惜しむことなくたくさんの楽曲で歌唱されています。
ゲームをプレイしていて馴染みのあるLynさんの声が聞こえて来たため、サウンドに違和感なくゲームを進めることができたのは間違いなかったと思います。
シリーズらしさという部分ではいわゆる「おしゃれ感」のあるサウンドも健在で、それが抜群の効果音との相乗効果でより強力になるというのも相変わらずなので、ペルソナサウンドが好きな人であれば当作品も満足できる内容だったのではないかと感じます。
トップレート曲 ※背景色付は☆5、その他は☆4
【DISC1】
You Are Stronger 作曲:喜多條敦志 ヴォーカル:Lyn
Strikers 作曲:増岡郷太
Daredevil 作曲:増岡郷太 ヴォーカル:Lyn
Home 作曲:喜多條敦志
AIと心 作曲:喜多條敦志
What you wish for 作曲:喜多條敦志 ヴォーカル:Lyn
愛シ te Wonderland 作曲:比良彩那
Blooming Villain -Scramble- 作曲:目黒将司 編曲:増岡郷太
Vacation 作曲:喜多條敦志
Mori no Miyako 作曲:喜多條敦志
Camping Trip 作曲:喜多條敦志
Sophia’s SHOP 作曲:喜多條敦志
虚飾の魔王城 作曲:比良彩那
Axe to Grind 作曲:喜多條敦志 ヴォーカル:Lyn
Crossover 作曲:赤羽大夢
暴食のワルツ 作曲:比良彩那
Have a Break in the South 作曲:喜多條敦志
Keeper of Lust -Scramble- 作曲:目黒将司 編曲:増岡郷太
【DISC2】
Last Surprise -Scramble- 作曲:目黒将司 編曲:MASA ヴォーカル:Lyn
Freedom Buzz Dance 作曲:赤羽大夢
You Are Stronger -instrumental version- 作曲:喜多條敦志
Rivers In the Desert -Scramble- 作曲:目黒将司 編曲:MASA ヴォーカル:Lyn
Counter Strike 作曲:増岡郷太
AIの心 作曲:喜多條敦志
Demiurge I:Exodus 作曲:増岡郷太
Demiurge II:Negai 作曲:喜多條敦志、増岡郷太
AIの心 -another version- 作曲:喜多條敦志
Towards a Dream -piano version- 作曲:喜多條敦志
願いへ 作曲:喜多條敦志 ヴォーカル:Lyn
Towards a Dream 作曲:喜多條敦志 ヴォーカル:Lyn
Daredevil
主に序盤の重要イベントに使用されている楽曲で、ゲーム進行を盛り上げ大変印象に残る楽曲です。
全体を通じて主旋律の音域の部分でのダイナミクスは少なく感じます。やや低音域に集まっている印象です。Lynさんが得意のシャウトを放てるような場面は少ないです。
しかしながら、要所要所にLynさんのヴォーカルで旋律を突き上げてくる感覚があり、プレイヤーの心情も盛り上げてくるような感覚があります。
ヴォーカルの主旋律にエレキトリックなサウンドも絶妙に噛み合って更に格好良くなっている点も凄いなと思いました。
What you wish for
戦闘曲です。戦闘曲にしてはやや控えめな印象があるのですが、本作の戦闘場面ではキャラクターは激しく動き回り効果音も多く重なりますし、実に多くのキャラクターの声が上がるので、音楽の主張は程々になっているのかなという印象です。
ただし、その加減が絶妙なのか、プレイしてみると戦闘に良く馴染むだけでなく、意外と印象にも残ります。
その辺りはイントロ部分で印象的なフレーズを使ったりして巧みにやられているのかもしれません。
Mori no Miyako
楽曲名的にも伏せることが出来ないのでここまでは地名も出して良いと思うのですが、曲名の通り仙台フィールドで使用されている楽曲です。
実は私が今作の中に出てくる街の中で最も好きだったのが仙台でした。
なぜ好きだったかというところでは、おそらくゲーム内で最初に訪れた街だったためインパクトがあったことや、実生活でも個人的に何度も訪れているといった背景があると思います。
シナリオも共感させられるところがあり、とにかく仙台パートが好きだったので、当然楽曲にも思い入れが出てきます。
この楽曲もイントロ部分が好きで、そこから想像できない旋律に向かうのも面白いなと思います。
Sophia’s SHOP
ソフィアが様々な武器屋アイテムを販売しているオンラインショップを使用する場面での楽曲です。
楽しい楽曲で好きな方多いと思うのですが、やはり浮かぶのはソフィアの声だったり、その独特なテキストですね。
こちらに関してはサントラで聴くというよりゲーム場面で聴いた方がより良く感じます。
Freedom Buzz Dance
これも某街のフィールド楽曲ですね。
音楽ジャンルで言えばジャズ、その中でフュージョン系にも聴こえます。
ベースの独特なラインやドラムのビートの刻み方など、テクニカルな楽曲をフィールドで聴けるというのが洒落ています。
Counter Strike
ボス戦の楽曲です。通常のボス戦では無く、特別なボス戦の楽曲になります。
メロパートとサビパート、間奏まであったりと何も知らない人が聴いたら「何かやたら格好良いバンドのシングル曲かな?」と思うかもしれません。
何より凄いなと思うのは、初めからLynさんのヴォーカルをイメージして作成されていたのが想像できるくらい、旋律にしてもバックサウンドにしても完璧に嵌っているところです。
先日、ペルソナライブが秋に開催されると発表がありましたが、「ペルソナ5S」の楽曲もセットリストに入るようなので、ライブで聴きたい楽曲の1つです。
非常に盛り上がるのではないかと思います。
AIの心
イベント楽曲です。
全体的に格好良い楽曲が多い中、こういうメロディアスな楽曲が入ってくるというのがまた良いですね。
ゲームサントラはやはり贅沢です。
ソフィアの心情だけでなく、表情までもが目に浮かんできます。
Demiurge II:Negai
ラストボス曲です。
ちょっと驚いたのですが、アトラスの喜多條さんとコーエーテクモの増岡さんお二人の共作になっています。
サブタイトルに「NEGAI」とあるように、後述する喜多條さん作曲のエンディング楽曲「願いへ」を増岡さんがロックな戦闘曲にアレンジを加えていく形で作曲されているという形での共作と考えて良さそうです。
言うまでも無く、お二人の凄いところが合わせ技できていますので、圧巻の内容となっています。
AIの心 -another version-
「AIの心」と大きくアレンジが異なるかというと、大きな違いは感じません。
鍵盤の音色がオクターブ高くなっていたり、終盤でストリングス系の音が強めに入っていたりとイベントの描写に合わせて2ヴァーション作られたのかなという印象です。
どちらかというと私はこちらの方がより好みです。
願いへ
Lynさんが歌う感動的なエンディング楽曲です。
恐らく作成されたのはこちらの楽曲が先だったのでしょうが、「AIの心」の旋律が使用されてます。
やはり、ちょっとソフィアを思わせる内容の歌詞にはなっているのですが、「心のまま自分の道を進んで行こう」というメッセージ性がありプレイヤーにも共感させられる内容になっています。
Towards a Dream
「願いへ」の英語ヴァーションです。
個人的には英語で聴く方が好みなのですが、日本語歌詞が前トラックで分かるのでイメージしながら聴くことができるのが良いなと思います。
ベストトラック
You Are Stronger
オープニング楽曲です。
やはりイントロからしてもう良いのですが、ペルソナシリーズらしいオシャレさのみならず、歯切れの良さも感じさせられます。
オープニングムービーでは怪盗団メンバーが1人ずつテンポよく登場していくのですが、楽曲のストリングスサウンドの歯切れの良さが非常にうまく演出しているなと感嘆させられます。
サビに入ると共に戦闘シーンの映像に移るというのも良い具合にいっており、ムービーに合わせて作られた楽曲のようにさえ感じます。
「ペルソナ5S」の看板となるに相応しい名オープニング楽曲で、こちらをベストトラックとさせて頂きます。
まとめ
時にはジャズサウンドでオシャレに、時にはロックサウンドで格好良く、そして時にはメロディアスな旋律も聴かせてくるぺルソナらしい充実した内容で、そこにLynさんのヴォーカルが加わるわけですから大変満足の出来るサントラでした。
発売前から楽しみしていたサントラでしたが、期待を裏切られなかったです。
しかも、私がこれまでほとんど触れたことの無いコンポーザー陣の素晴らしい楽曲にたくさん触れることができて非常に嬉しかったです。
喜多條敦志さんやコーエーテクモゲームスの他作品のサントラも聴いてみたくなってきますし、これからのご活躍も楽しみです。
ペルソナらしいサウンドの魅力を目黒将司さんのみならず、多くコンポーザーの方たちに力でこれからもひたすら良い方向へ築いていくのではないでしょうか。