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レビュー「MONOGATARE-EP」/ 森 空青

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「ライブアライブ」にも通ずる”熱さ”を感じられるコンセプトアルバム!

参加アーティスト:STEVIE、増倉義将、小寺可南子、原田謙太、時田貴司

今回は久々にゲーム音楽に関連したアーティスの作品をご紹介しようと思います。

「ライブアライブ」のライブイベントにも出演されていたギターリスト森空青さんのソロ名義アルバム第2弾となります「MONOGATARE-EP」のレビュー記事を書いていこうと思います。

アルバムの概要

1作目はギターインストアルバムだったのですが、本作を構成する全ての楽曲がヴォーカルの入った楽曲となっています。

上述の通り森空青さんのソロ名義アルバムではあるのですが、4名のゲストシンガーの方々が参加されており、それぞれをヴォーカリストとしてフィーチャリングした楽曲が4曲収録されています。

そして最後に4人全員が一堂に会した「MONOGATARE」が収録されている全5曲のEP、すなわちコンパクト盤となっています。

こうした構成からも分かるように、コンセプトアルバムのような趣があります。

最初の4曲についてはそれぞれのヴォーカリストが作詞作曲において楽曲作成にも参加されておりますが、まずこれらに耳を傾けると、この作品のコンセプトとして「世の暗い部分に負けず、希望を見出すために願い、行動して新しい世界に変えていく」というものがあるように個人的に感じられました。

森さんや4人のアーティトが各々の表現でこうしたコンセプトを制作過程や演奏、歌唱で表現されている印象で、非常に「熱さ」を感じさせてくれる作品になっています。

コンセプトミニアルバムが大好物な私にとってはこの時点で既に名盤なのですが、最後に「MONOGATARE」において熱量が一気に昇華し、メッセージ性を明確に残してきます。

多人数による歌唱によって、シンプルに迫力が増す点が非常によく作用しているのですが、「物語れ!」というワードによってリスナーへ逃れのようの無い強いメッセージ性が降り注いできます。

そして、この楽曲の作詞をされたのが「ライブアライブ」のプロデューサーである時田貴司さんです。

この作品の「熱さ」という部分においてはやはり、「ライブアライブ」に通ずるものがあり、そこで時田さんが最後に出てくることで「なるほど、そういうことか」とさせられます。

印象的なドット絵のアルバムジャケットについても実はグラフィックデザイナーの倉島一幸さんによるもので、「ライブアライブ」との関連性も少なく無い作品となっています。

森空青さんのギターサウンドも特筆すべきものがあり、アコースティックなサウンドから激しく唸るエレキギターソロまで大いに楽しませてくれます。

ギターサウンドのみならず、全体的なロックサウンドとしても洗練されており、特に4曲目「From the New World」のベースサウンドが印象的でした。

収録楽曲

1.What if (feat. STEVIE)

2.So What So What (feat. 増倉義将)

3.CRY NO MORE (feat. 小寺可南子)

4.From the New World (feat. 原田謙太)

5.MONOGATARE (feat. STEVIE, 増倉義将, 小寺可南子 & 原田謙太) 

1.What if (feat. STEVIE)


STEVIEさんは44MAGNUMというロックバンドのヴォーカリストで、ゲーム音楽としては「グランブルーファンタジー」でボーカリストを担った経験もある方です。

こちらの楽曲では作詞をされており、森さんと共に作曲にも関わっていらっしゃいます。

「距離」といういうものが楽曲のテーマとなっており、失ってしまった日常(恋人?)との距離を嘆くような内容なのですが。”届かないなら手を伸ばせばよい”という表現で最後に希望を残してくれています。

「日常を取り戻したいんなら願うばかりでなく行動もしないとね」というメッセージ性が感じられる楽曲でした。

2.So What So What (feat. 増倉義将)


増倉義将さんはバンド等の所属はないようで、ヴォーカリストとして活躍されている方のようです。

アニメ「デジモンゴーストゲーム」主題歌などで歌唱されています。

こちらの楽曲では作詞をされ、作曲も森さんと共作でされています。

上記のアニメの歌声とは全く異なる歌唱をされていて、男臭くも技巧的な歌唱が非常に印象的です。

歌詞の”So what”連発の意味がなかなか解釈しづらいのですが、面白いのは前半では「だから何?」って誰かに冷たくあしらわれている印象なのですが、後半では逆に開き直って自分が「だから何?だから何なんだ?だから何なんだああああ!!」と叫んでいるような印象に変わりました。

そう考えるとまた聴き直したくなってくる面白い楽曲だと感じました。

3.CRY NO MORE (feat. 小寺可南子)


小寺可南子さんはゲーム音楽関連の様々な場面で目にする方ですが、個人的にはファルコムのバンドで「I Swear…」など軌跡シリーズの楽曲を歌われていた姿が印象深く残っています。

こちらの楽曲では作詞を手掛け、森さんと作曲もされています。

歌詞としては”傷んだ毛先を切り落とす”ことを比喩に人間関係のことを描いています。

おそらくうまくいかない男女関係の話だとは思うのですが、必要なのは”切り落とす刃”では無く、何だったんだろうと考えさせられます。

どんなカップルだって”始めからうまく歩けない”ことだったり”互い違い”なのは当たり前のことだと受け入れて、少しずつ糸を結ぶように二人の形を作って行けば良かったのかなという後悔が滲んだ内容にも感じられます。

ただ、そうした後悔と言うのもこうしてちゃんと考えることでまた前に進めるんだろうなと、前向きな印象も受けました。

4.From the New World (feat. 原田謙太)


原田謙太さんは「デユエルマスターズ」のCMで歌唱されていたりするので、何気なく耳にしたことがある声だと思います。

シンガーのみならず特撮映像作品の「ドゲンジャーズ」においては全主題歌の作詞も手掛けていらっしゃいます。

こちらの楽曲もやはり作詞されており、森さんと共に作曲もされています。

激しくも安定したロックサウンドでサウンド的な熱量が増し、4曲目と言うこともあるのか”負けないで”といったストレートなメッセージ表現がいよいよ出てきます。

歌詞を直に受け取ると「もう諦めて新しい世界に行こう、生きていくことには変わらないんだから負けずに進め!」といった受け取り方になったのですが、殻を破って前に進んで行こうというメッセージが込められていると感じました。

アルバムのコンセプトにぴったりの熱いナンバーだと感じました。

5.MONOGATARE (feat. STEVIE, 増倉義将, 小寺可南子 & 原田謙太)


クライマックスは時田貴司さん作詞のこちらの楽曲です。

おそらくコンセプトを把握された上で作詞されたのだと思うのですが、そのくらいアルバムに上手いことフィットしています。

せっかくなので歌詞については後日考察記事を書こうかなと考えているので詳細は割愛しますが、「物語れ!」というメッセージはシンプルなようで「どういうことなんだ?」とちょっと考えさせられるワードにもなっていて魅力的に感じました。

それにしてもこの楽曲はボーカルの迫力も凄まじいものがあり、なかなか4人の声で熱く歌唱される楽曲って少ないと思うのでまずそこが印象に残ります。

当たり前ですが皆さん声量のみならず歌唱技術的にも上手いですし、それぞれのシャウトが素晴らしいです。

メロ部分のソロパートもサビ部分のユニゾンやハモリも聴きごたえがあります。

「熱さ」が良い感じにフィットするためか、プロレスの納谷幸男選手の入場曲としても使用されています。

プロレスラーでも何でもない私ですが、この楽曲で入場できるというのは何だか羨ましく感じられました。

まとめ

このアルバムの存在を知ることができたのは「ライブアライブ」が好きだったからなのですが、実に幸運なことだったなと感じます。

「ライブアライブ」が多くのプレイヤーの心に残って、一人一人の些細な言動が世に大きな変化をもたらし、リメイク版の発売が実現したという経緯も何だかこのアルバムのコンセプトに通ずるところがあり、感動が更に増すような感覚がありました。

もちろん「ライブアライブ」が好きな方にも聴いて頂きたいのですが、コンセプトアルバムなので「MONOGATARE」のみならず、1曲目から順に5曲全てを聴いた方がより良い体験ができるかなと感じます。

ゲーム音楽が好きである限り、またライブ等で森空青さんのギター演奏を聴く日が来ると思うのですが、その日がますます楽しみに感じられるアルバムでした。

 

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