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スクウェア・エニックス ゲーム音楽レビュー

レビュー「オクトパストラベラー 大陸の覇者」オリジナルサウンドトラック

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今作の楽曲も情熱のこもった意欲作!しかし、ソシャゲの音楽について考えさせられる点もあり。

コンポーザー:西木康智

ゲームのプレイ状況:エンディング1つのみ(ゲームレビュー記事参照)

今回は、私が初めてプレイしたソシャゲである「オクトパストラベラー 大陸の覇者」のサントラをご紹介しようと思います。

ゲームの方は未課金プレイを貫いてきた私ですが、サントラを購入するという形で遂に課金することとなりました。

今回の記事では公式ページから閲覧できる西木康智さんの楽曲解説も参考にしながら書かせて頂こうと思います。

サントラの全体像

ディスク3枚組の計46曲収録時間は131分となっております。

ゲームをプレイする中で前作の楽曲も多く使用されていたため、「そんなに新曲たくさんあったかな?」という印象だったのですが、予想を超える楽曲数でした。

前作の楽曲も7曲収録されていますし、そのアレンジ曲も4曲あるのですが、それでもこのボリュームは意外に感じられました。

ゲームの方は現在もまだアップデートが続いており、追加シナリオも入ってきていますが、こちらのサントラに収録されているのは闘技場イベントまでになります。

すなわち、更なる追加曲も今後増えていくことが予測されるため、サントラとしても更なるリリースが控えているかもしれません。

今作においてもオーケストラサウンドが採用され、重厚感のあるオクトパストラベラーらしいサウンドを楽しむことができます。

もちろん、コンポーザーも前作同様に西木康智さんなのですが、そのような中で私が前作と大きく異なっていると感じるのは楽曲構成です。

ソシャゲなので、キャラクターガチャがゲームの基盤となっているという性質があるように感じるのですが、そのためかキャラクター楽曲が敵側のみになっております。

また、物語の舞台となる街が前作と同じであるため、楽曲もそのまま使用されており、新規の街曲はありません

なので、全体としてメロディアスな旋律の楽曲や、穏やかな雰囲気の楽曲が少ないです。

バトル曲の新規楽曲はあるのですが、サントラ全体における抑揚に欠けてしまう部分は否めないので、聴いていてやや重々しくも感じられるというのがサントラ全体としての私の感想になります。

それでは、個々の楽曲はどうなのかというところになってきますので、各楽曲のレビューに移ってまいります。

トップレート曲

※ 背景色付きは☆5,その他は☆4

[DISC1]

OCTOPATH TRAVELLER 大陸の覇者 -メインテーマ-

“強欲の魔女”ヘルミニアのテーマ

“英雄”タイタスのテーマ

“劇作家”アーギュストのテーマ

導かれし旅人たち

バトルアドバンスト

避けられぬ戦いの時

ボスバトル3

ヘルミニア邸

[DISK2]

富に溺れし時

富を極めし者

権力を極めし者

名声を極めし者

記されざる島オルサ

全てを極めし者

OCTOPATH TRAVELLER 大陸の覇者 -エンディングテーマ-

[DISC3]

名もなき町 -発展-

なんて珍妙な!

期待を胸に

穏やかに慎ましく

迫りくる敵

バトル4

ボスバトル2 -大陸の覇者 闘技場ver.

“強欲の魔女”ヘルミニアのテーマ


私がこの楽曲で印象深かったのは、西木さんが解説で触れているティンパニーの重低音や、どこか物悲しいYuccaさんのヴォーカルだけではありませんでした。

その後方で鳴るオルガンのような音色がまた印象深かったです。

聴いていて思い出したのはFF8の楽曲で、「魔女を彷彿とさせるな」と思ったのですが、改めて曲名を見ると”魔女”の文字があるではありませんか。

魔女の姿に映りながらも、もの悲しさを感じさせるキャラクター心理の深い部分を探れるような楽曲であると感じました。

“英雄”タイタスのテーマ


実は、個人的に3人の敵キャラクターの中であまり印象に残らなかったのがタイタスで、ちょっとシナリオも思い出せないでいます。

キャラクター描写に乏しく、プレイヤーの想像に委ねる部分があったのかもしれません。

西木さんの解説をみても、キャラクター性を膨らませて描いているのかなという印象を持ちました。

しかし、根幹となるのは「実直な志」という部分であり、そこをどう表現したのかというところに着目すると、この楽曲の良さも分かってきます。

Kanonさんのコーラスは、「実直な志」とは離れているようにも感じさせられるかもしれませんが、見方を変えると「ぶれない冷酷さ」というのを感じさせられるものがあります。

個人的に節々で聴かれる男性の勇ましい低音域コーラスが加わることで、よりその芯が強くなるような印象を持ちました。

“劇作家”アーギュストのテーマ


幕が上がり、物語が進んでいくような楽曲構成にっております。

なので、キャラクターのテーマ曲としてはその心情を感じさせるのには弱いようにも感じられるのですが、ゲーム中においてはこちらの楽曲によってストーリーを引き立てることで、結果的にキャラクターも印象付けられます

この辺りのアプローチ方法は大変興味深さがあり、ゲーム音楽の在り方を改めて考えさせられます。

楽曲作成は意外と自由な部分もあるのかもしれません。

導かれし旅人たち


ティンホイッスルの大好きな音色なので本来ならレート☆5の楽曲なのですが、ゲームをプレイしてしまうと、あまり聴きたくない楽曲となります。

個人的にはもう★の数はもう見たくないくらいのトラウマです。

すなわち、ガチャを引く際に使用されている楽曲がこちらになります。

ソシャゲの音楽であることの悪い一面を感じさせるのですが、楽曲の質の高さも感じるので非常に複雑な心情です。

バトルアドバンスト


コンサートで聴いていた楽曲で、戦闘曲であることは分かっていたのですが、その正体はシンボルエネミーとの戦闘曲でした。

西木さんの解説ではFFの楽曲っぽいフレーズがあり、そこから植松節の解説をされていましたが、個人的にはあまりFFっぽさは感じず「西木さんの楽曲だよな」という印象です。

特に、前半部分のピアノの響かせ方にそれを感じました。

ボスバトル3


とにかく印象的なイントロから始まり、そこで一気に楽曲のイメージを植え付けるような構成になっており、それは前作の代表曲ともいえる「ボスバトル2」と同じ聴かせ方であると言えます。

そこには気付いたのですが、そもそもイントロを似せて作成されているという西木さんの解説をみて、ちょっと「やられた」感がありました。

ボス戦の演出として非常に効果の高い方法なんだなと改めて感じました。

富を極めし者


テーマ楽曲の主旋律をモチーフにそこから昇華させ、戦闘曲にしています。

西木さんの解説によりますと、リズムの部分ももう1つのモチーフにされているとのことで、確かにそこにヘルミニアの心情が表現されているように感じられます。

その具体的な心情にも触れられているのですが、読みながら聴いていて鳥肌が立ちました。

こちらのサントラの中でも傑作と言える1曲なのではないでしょうか。

権力を極めし者


ここでもテーマ楽曲のコーラスによる主旋律がモチーフになっております。

ヘルミニア同様、リズムモチーフもあるとのことですが、そのリズムは複雑で細やかなもので、結果的に楽曲の疾走感を生み出している印象です。

個人的にはその疾走感に不気味さが感じられ、タイタスの狂気を感じられました。

名声を極めし者


いよいよ終幕を迎えたような物々しいイントロから始まります。

そういう意味ではメインテーマ同様に劇場的な音楽なのですが、アーギュストの心情のダイナミクスも表現されているとのことで、確かに音階的にもダイナミクス的にも起伏に富んだ楽曲となっています。

期待を胸に


プレイしていない部分の楽曲なのか、使用場面が分からないのですが、ギターサウンドが心地良い爽やかな楽曲で、私の好みのタイプです。

ギターも良いですが、ストリングスとの調和も心地良いです。

ベストトラック

OCTOPATH TRAVELLER 大陸の覇者 -メインテーマ-


シリーズのメインフレーズを聴けるのですが、個人的に非常に気に入っているのがそのメインフレーズに入る前のフレーズです。

今作ではどんな物語やキャラクターが待っているのかとワクワクさせられるようなドラマチックな旋律で、たまりません。

そして、メインフレーズへの繋ぎ方がまた素晴らしく、馴染みのある最高な旋律が耳に入ってくると、気持ちが昂ってきます。

何度も繰り返し聴きたくなる、今作のベストトラックです。

まとめ

今作も西木さんの情熱を感じられる意欲作です。

楽曲解説までして頂けるスタンスも大変ありがたく、音楽知識に乏しい私としては勉強もさせて頂いています。

ただ、やはり残念なのはソシャゲの音楽であるという点に集約されてしまうかなと思います。

敵キャラクターというところでは素晴らしい表現を随所に聴けるのですが、主人公と呼べるキャラクターの不在や、物語性というところで、個人的には音楽の役割というところもやや希薄に感じられます。

こうした希薄性は、上記に挙げた明るい楽曲が少ないというところに加えて寂しさを覚える部分です。

各楽曲の素晴らしさを感じる一方で、サントラ全体としては、聴いていて気持ちを揺さぶられるような抑揚に欠けるところがあるので、物足りなさを感じてしまいました。

実は我ながら信じがたいことですが、ゲームを実際にプレイしたところ、なんとサイレントモードのままプレイしてしまっている自分が居たりもしました。

ソシャゲやソシャゲの音楽との付き合い方というところがちょっと分からなくなってしまっているのですが、ソシャゲ音楽とゲーム音楽は切り離して考えるべきものなのかもしれません。

というわけで、今作は意外なところまで考えさせられたサントラなのですが、西木さんの楽曲が好みの方にとっては、やはり聴いておいた方が良いと思います。

特に、お勧めなのは一通り聴いた後、西木さんの解説を読みながら改めて聴いてみて頂けると、楽曲が広がりをみせてくれるので、是非そのようにしてみて欲しいなと思います。

今作は既に成功を収めたソシャゲだと思うのですが、この結果がきっと「オクトパストラベーラ2」の制作という結果に結び付くのではないでしょうか。

ゲームシリーズの発展への期待と共に、西木さんの今後のご活躍も大変楽しみにしております。

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