複雑な構成のアレンジ盤。騒々しい環境音が意外な味わい深さをみせている!
コンポーザー:鈴木慶一、田中宏和、金津宏、上野利幸
引き続き「MOTHER」シリーズ関連のCDをレビューしていきます。
前作「MOTEHR」から引き続き鈴木慶一さんと田中宏和さんのお二人が担当されており、前作から音楽的な大きな変化はみられません。
金津宏さん、上野利幸さんのお二人が作曲に加わっていますが、担当されている楽曲は非常に少ないです。
とはいえ、お二人の楽曲も違和感なく溶け込んでおります。
「MOTHER2」と私
「MOTEHR」の記事でも触れましたが、私は「MOTHER2」につきましてはゲームボーイアドバンス版をクリアしております。
しかし、記憶の方はと言いますと、正直に申し上げますと残っているものは大変少ないです。
そのような中で現在もはっきりと覚えている程、印象に残っているものもあります。
その1つが戦闘システムで、ダメージを負うとスピーディーにHPの数字が減って行き、素早く回復すれば下がり切る手前でHPを増やせるので、受けたダメージを減らせるというのが斬新で印象深く思っております。
もう1つは「マル・デ・タコ」という名のモンスターです。
その愛嬌のあるビジュアルとユニークな名前に惹かれるものがありました。
しかも、ストーリーが進んで行くと、亜種が出現し、これまたユニークにネーミングが変化していくのが大変お気に入りでした。
終盤で最後の亜種が出てきたのを覚えているのですが、そのネーミングセンスに思わず笑ってしまったのを覚えています。
CDの全体像
こちらのCDは私自身も理解しきれていない部分があり、正直なところ”レビューアー泣かせ”といった印象を持った作品です。
誤った情報が無いように注意はしますが、思い込みや勘違いでそうしたことが起こってしまうかもしれません。
なので、こちらの記事に関してはその辺りを特にご注意頂ければと思います。
まず、いわゆる”オリジナルサウンドトラック”を期待して聴くと残念な思いをしてしまうCDとなっています。
ゲーム内での使用曲は多いのですが、未収録曲が非常に多くなっております。
それも、オリジナル音源ではありませんので、アレンジ盤と言って差し使いないと思います。
加えて、構成がなかなか理解しづらいものになっております。
楽曲のタイトルが基本的に「~のテーマ」という表記から始まります。
この「テーマ」という表現が混乱を招き易いのですが、この部分は「ゲーム内のシーン」を表しています。
すなわち、どの場面で使用された曲なのか、ということを表しています。
そして、その後に曲名が表記されます。
もう既に混乱して、記事を読む気を失くしている方もいるかももしれないので、具体例を示します。
例えば、5トラック目のトラックネームの表示は以下のようになっています。
「ウィンターズのテーマ~スノーマン~ウィンターズホワイト~風が吹く~タッシー!」
このトラックネームで説明しますと、”ウィンターズ”というエリアがありますが、そのエリア内のゲーム場面で流れる曲をメドレー形式にしているということです。
「スノーマン」「ウィンターズホワイト」「風が吹く」「タッシー!」の4曲がメドレー形式で収録されているトラックになっております。
曲名の横に( )表示がある楽曲もあるので、より混乱し易かったりもするのですが、こしたことからも不親切な印象は拭えません。
おそらく、混乱を回避するためには「~のシーンより、曲名」という表記にすれば良かったのではないかと個人的には思いました。
そして、アレンジの方向性についてですが、賛否別れそうなものになっています。
環境音等の効果音が多用されているのですが、その音がかなり前面に出てきます。
中には「旋律をじっくりと聴きたいのに、それを邪魔しているような…」と感じさせるものまであります。
しかし、「これがこのCDの良さでもあるな」と聴き返してみて感じるところがありました。
こうした特徴があるのは、考えようによっては良いところですし、何よりも実際のところ、繰り返し聴くと「意外と良いかも」となってきました。
そんな調子でレートが跳ね上がったトラックもあり、聴き返していて非常に良い時間になりました。
トップレート曲
※ 背景色付は☆5 その他は☆4
ツーソンのテーマ~ボーイ・ミーツ・ガール
ウィンターズのテーマ~スノーマン~ウィンターズホワイト~風が吹く~タッシー!
ドコドコ砂漠のテーマ~乾いたダンス(スーパードライ・ダンス)
フォーサイドのテーマ~摩天楼に抱かれて
サマーズのテーマ~プライヴェートな風
マジカントのテーマ~エイトメロディーズ (記憶の底に)~ウェルカムぼく~夢の迷路~エデンの海~パワー
平和のテーマ~ビコーズ・アイ・ラヴ・ユー
エンディングのテーマ~グッドフレンズ/バッドフレンズ~スマイルズ・アンド・ティアーズ
ツーソンのテーマ~ボーイ・ミーツ・ガール
メロディアスな旋律も良いのですが、それを支える伴奏パートの音色が良いです。
ループの繋がり方が非常に良いのですが、フェイドアウトして行ってしまうのが勿体なく感じます。
2ループしっかり聴けるとまた印象が変わってきたと思います。
ウィンターズのテーマ~スノーマン~ウィンターズホワイト~風が吹く~タッシー!
鈴の音がいかにも雪を思わせます。
メドレートラックなのですが、曲が「ウィンターズホワイト」に移ってもその音が続くのが良い雰囲気です。
「風が吹く」では風の音、「タッシー!」では波の音がガッツリ入ってきます。
このCDの特徴的な部分が出ているトラックです。
ドコドコ砂漠のテーマ~乾いたダンス(スーパードライ・ダンス)
ファーストインプレッションは騒々しい環境音に大いに戸惑いました。
しかし、聴いていくうちにこの環境音が一体化し、曲の一部になっていきます。
繰り返し聴く中で存在感がどんどん大きくなり、ベストトラックに挙げようかと思ったくらいです。
フォーサイドのテーマ~摩天楼に抱かれて
「摩天楼に抱かれて」は「ビコーズ・アイ・ラヴ・ユー」のアレンジ曲になります。
メロディアスな印象が強い楽曲にリズム感が生まれ、街を歩いているような雰囲気が漂っています。
同じ旋律でここまで印象が変わるというのは”ゲーム音楽あるある”なのかもしれませんが、こうした点も魅力の1つであるように思います。
サマーズのテーマ~プライヴェートな風
原曲は金津宏さんの作曲した楽曲になります。
アレンジは、入りの部分の風の環境音の印象が強いのですが、そこから旋律が前に出てくると視野が開けてくるような雰囲気を想像させます。
こうした環境音の使い方は実に巧いなと感じました。
マジカントのテーマ~エイトメロディーズ (記憶の底に)~ウェルカムぼく~夢の迷路~エデンの海~パワー
「エイトメロディーズ」ですが、8小節の美しく暖かみのある旋律は、いかにも「MOTHER」シリーズの曲を聴いているなと思わせます。
徐々に環境音が入ってきますが4ループ近く続くので存分に味わえます。
もうこれだけでトップレートが付いてしまいます。
しかし、「エイトメロディー」の旋律の余韻が残り過ぎて、続く曲はあまり耳に入ってこない部分も感じさせました。
エンディングのテーマ~グッドフレンズ/バッドフレンズ~スマイルズ・アンド・ティアーズ
やはり「エイトメロディーズ」の旋律が印象的ですが、そこから曲が展開していくと曲名も「スマイルズ・アンド・ティアーズ」と変化するのでしょうか。
曲が展開しても最後まで「MOTHER」らしい旋律が続くのが凄いなと思います。
特に終盤の盛り上がりは様々な感情が詰め込められたような壮大さがあり、鳥肌が立ちます。
ベストトラック
平和のテーマ~ビコーズ・アイ・ラヴ・ユー
悩んだ末、こちらを選定しました。
この曲も数えてみますと8小節の印象的な暖かみのある旋律から始まります。
展開すると”愛”という感情の複雑さも思わせるような、ちょっと切ない感じの旋律になります。
その後再び元の8小節の旋律に戻るのですが、ここで聴くと同じ旋律なのに印象が変わります。
「動いて行くものもあるけど、やっぱり大切なものは1つである」そんなことを感じさせられました。
ベストトラックにしたのは、メドレー形式のトラックではないので、この旋律を存分に堪能できるという部分が大きかったように思います。
まとめ
混乱をきたし易いやや不親切さのあるCDですが、メドレートラックもあれば、単一曲のトラックもあり、その辺りが良いアクセントになっているように思います。
前面に出てくる環境音も意外な味わい深さがあり、ちょっと嵌る部分があります。
正直なところ、シンプルにゲーム音源をオリジナルサウンドトラックとしてまとめて欲しいという気持ちがあるのは私も例外ではないです。
しかし、このCDにも良さがありますので、そう思って聴いてみるとまた印象が変わるのではないかと思います。
ゲーム音源でないから、という理由で聴かないのは少々勿体なくも感じますので、「MOTHER」シリーズのファンの方であれば是非聴いてみて欲しいなと思います。