多人数のコンポーザーでも見事に世界観を構築されたサウンドが素晴らしい!しかし、未収録曲の多さが悔やまれる!
コンポーザー: :板倉真一、加藤恒太、森藤晶司、難波弘之、林秀幸、三俣千代子
人気の実写サウンドノベルゲーム「街」のサントラです。
ゲームのプレイ状況:1周
目次
ゲームプレイ時の思ひ出
私はこのゲームについては発売当初は全く存じ上げておらず、プレイしたのはPS2終期の頃であり、かなり遅めです。
きっかけは、某雑誌の面白かったゲームランキング的なもので、常に上位に居るのが気になったことです。
「どんなゲームだろう?」と調べてみた結果、「面白そうだからやってみよう」と思い立ちました。
そして、埃を被っていたセガサターンを引っ張り出し、プレイに至りました。
サウンドノベルゲーム自体は「弟切草」と「かまいたちの夜」をプレイしたことがありました。
そのイメージを持った上でプレイし始めてみたところ、随分と印象が異なり戸惑ったのを覚えております。
まず「実写」という情報は入っていたのですが、これが思っていた以上にストーリー性を補い、厚みをもたらしておりました。
「かまいたちの夜」以前までのように、シルエット演出でよく見えないというのも怖いけれど、実写でよく見えるというのも怖いなと感じました。
ストーリーはコミカルであり、シリアスでもあり、最後には涙もありと贅沢なストーリーという印象でした。
ゲームシステムは「栞システム」や「ザッピングシステム」といったサウンドノベルゲームの進化した部分を存分に感じさせました。
難易度は個人的にはかなり高く感じられ、実際のところ攻略に手を焼き、プレイ時間も長時間に及んだのを覚えています。
また、作中に度々出てくるコーヒー牛乳を自分も飲みながら「何度飲んでも甘ぇ!」と思いつつプレイしたのも良き思い出となっております。
サントラの全体像
まず触れておかなくてはならないのは、こちらのサントラには非常に残念な点があります。
それは、未収録曲の多さです。
それだけなら受け入れられる余地もあるのですが、鈴木結女さんの主題歌「夜明けのうた」、そして同じく感動のエンディング曲「One And Only」までもが未収録となっております。
後日CDをご紹介しますが、この2曲を聴けるCDは存在しますので、本当は収録して欲しいところですが、まだ目をつぶれます。
しかし、個人的にこのゲームで最も印象に残った曲までもが未収録だったのは受け入れ難かったです。
その曲というのは「シナリオ選択画面」の曲で、ゲームをプレイしていて何度も聴くことになる曲ですので、非常に強く印象に残り、自然と私のお気に入りにもなった曲でした。
「街」と言えばこの曲!とまで感じておりました。
「One And Only」のアレンジ曲なので何となく事情は察せるのですが、この曲が聴きたくてサントラを聴いてみたいと思う方も少なからずいらっしゃると思いますので、注意が必要です。
サントラの特徴としては、コミカルな曲が多めかな?という印象を持ちました。
シナリオもそうですが、このコミカルさを前面に出してきた上で、シリアス描写や感動描写を持ってきますので、まるで計算されているかの如くプレイヤーは感情を揺さぶられることになります。
ゲームを進めてくと、これらのコミカルな曲までもが小気味悪く思えてきます。
コミカルと見せかけて実は…という曲調に感じます。
私がこのゲームに「怖さ」を感じたのは、こういった側面もあるのかもしれません。
ベストトラック
※ 背景色付は☆5、それ以外は☆4
[DISC1]
オタク刑事、走る!
シルベール
Panic Dance
ロケ隊出撃!
ひだまり
The wrong men
昼下がりの庭園
[DISC2]
やせるおもい
しあわせはどこに
さわやかな風、かおる
美子狂想曲
パッピー・マンデー
街へ出よう
優しい風
きっとハッピーエンド
The West
遠く、儚く、愛しいもの
オタク刑事、走る! (作曲:加藤恒太)
この曲を聴いただけでオタク刑事のビジュアルや駆け回る姿を思い起こされます。
ゲームをプレイし始めてまずはオタク刑事のストーリーからプレイしたので特に印象に残っているのだと思います。
そして、オタク刑事といえばコーヒー牛乳ですね。
聴いていると飲みたくなってきます。
シルベール (作曲:板倉真一)
このサントラの中ではちょっと異色な雰囲気の曲で、シューティングやレーシングゲームの音楽っぽさがあります。
かといって、「街」の世界観から外れているという印象はありません。
妙に耳に残ります。
Panic Dance (作曲:加藤恒太)
こういう曲がストーリーのコミカルな部分を引き立てているような気がします。
そういう意味においては、「街」というゲームの象徴的な曲の1つなのかもしれません。
しかし、長い前奏の後に出てくる主旋律はちょっと怪しさや不気味さを伴っています。
そこがまた「街」っぽいなと感じさせます。
ロケ隊出撃! (作曲:森藤晶司)
この曲は、ロケ隊が駆け寄る足音の効果音が伴う印象が強いので、サントラで聴いていても、その足音が聴こえてきそうです。
サックスソロが結構派手なことをやっている割には、意外と馴染んでいるなとも思いました。
ひだまり (作曲:難波弘之)
陽の暖かさよりも、明るさや仄かな眩しさを感じさせる曲調かなという印象です。
おそらく前半部分の音色の印象がそうさせるのだと思います。
なので、タイトルから抱く印象とは少しだけ異なるなと思いました。
The wrong men (作曲:森藤晶司)
この曲は旋律も音の使い方も好みの曲です。
トロンボーンソロでもこの主旋律を聴いてみたいなと思いました。
コミカルな曲調ではありますが、洒落ています。
昼下がりの庭園 (作曲:難波弘之)
どういうシーンで流れていたのか思い出せないので、ゲーム中は印象に残らなかった曲ということになります。
しかし、サントラで聴いていてこれは素敵な曲だなと思いました。
誰かが話を振って、それに別の誰かが返事をしているかのような面白いメロディーです。
昼下がりの庭園で人々が会話しているような絵が浮かんできます。
やせるおもい (作曲:難波弘之)
この曲を聴いただけで作中の主人公キャラの1人である、美子さんの顔が思い浮かびます。
「美子のテーマ」的なポジションであると捉えています。
曲がダイレクトキャラクターと結びつくのは、個性が最も強いキャラクターだからでしょうか。
余談ですが、美子役は無名時代のお笑いコンビ北陽の伊藤さおりさんです。
最近はあまり見ない気がしますが、私はTVで見掛ける度にこのゲームを思い浮かべていました。
さわやかな風、かおる (作曲:森藤晶司)
聴いていると、かおるさんの美しきビジュアルが蘇ってきます。
メロディーは「昼下がりの庭園」とちょっと似た雰囲気のようにも感じますが、作曲者は異なります。
パッピー・マンデー (作曲:林秀幸)
シンプルな明るい曲調のトラックという印象ですが、後半の主旋律の動きが面白く、繰り返し聴きたくなります。
もう1ループ欲しくなるので、収録時間の短さがやや気になるトラックです。
街へ出よう (作曲:三俣千代子)
シンプルな爽やかな曲と思いきや、後半の展開が意外に複雑です。
面白い展開をする曲というのは聴き応えがあって良いです。
音色も旋律によく調和しています。
ベストトラック
遠く、儚く、愛しいもの (作曲:加藤恒太)
余韻を残すような伸びやかな旋律に涙腺が緩みます。
「人の本当の想い」というものは真っすぐには出てきません。
ゆっくりと間を置いて、行ったり来たりしながら、それでも着実に訴えかけてくる、そんなイメージです。
この曲を聴いていると、そういった不器用さの伴う想いのようなものを感じさせます。
一人で夜空を眺めながら物思いに耽るときだったり、子供の寝顔を静かに見つめながら聴きたい曲です。
まとめ
こうしてお気に入りの曲を挙げていきますと、聴きごたえのあるサントラだとは思います。
コンポーザーの人数が多い割には、しっかりと1つの世界観を構築しているなという好印象も抱きます。
しかし、だからこそ未収録曲は残念です。
私はサントラの収録曲を編集して鈴木裕女さんの2曲を入れて聴くようにしているのですが、その方がもっともっと「街」の素晴らしい世界観を堪能できるように感じているからです。
とはいえ、このサントラも「街」ファンにとっては必要不可欠な存在です。
多くの登場人物が出てくるゲームですが、そういった人々や渋谷の街をイメージしながら聴いてみると良い体験を得られるサントラだと思います。