『MOTHER』シリーズ特有の「なんかイイ感覚」の正体は?
2020年 6月25日 発売 / ほぼ日
ゲームレビューなのか、コミックレビューなのか、カテゴリーが微妙なところではあるのですが、素晴らしい書籍に巡り合えたので記事にさせて頂きます。
そして、こちらを読んだうえで『MOTHER』シリーズの魅力についても今一度、考え直してみようと思います。
目次
「ほぼ日」とは?
例によって私は『MOTHER』シリーズへの関心が最近になって強くなってきたばかりで、知識が乏しい状況にあります。
この記事を目にする読者の方にも、私と同じような境遇の方がいらっしゃるかもしれませんので、まずは情報整理からさせて頂きます。
というわけで、まず気になる「ほぼ日」という言葉ですが、こちらは糸井重里さんが社長を務める「株式会社 ほぼ日」という会社の名前です。
「ほぼ日」とだけ聞きますと不思議な単語に見えますが、こちらの会社では「ほぼ日刊イトイ新聞」という糸井重里さんのエッセイ記事的なものが書かれたウェブサイトを運営されております。
その新聞名の略から「ほぼ日」という不思議な、ある意味糸井さんらしい単語が生まれたのかなと想像できます。
そして、この記事で取り上げます書籍「Pollyanna」につきましても、「ほぼ日」から出版されております。
『MOTHER』シリーズ30周年ということで、シリーズのグッズ販売が展開されておりますが、この書籍もその一環です。
なお、今後の展開としては「MOTHERのことば」という、シリーズ内の言葉の全てを収録した書籍の発売が年内に予定されており、注目を集めています。
当然、私も発売を楽しみにしている人の一人ということになります。
「Pollyanna」は、どんな書籍だったか?
ゲーム『MOTHER』を愛する35人の漫画家・作家が集まって、奇跡のような本ができました。
「ほぼ日」のこの購買意欲を掻き立てるキャッチフレーズのような言葉に惹かれ、私もこちらの書籍を手に取ることになりました。
基本的にはコミックで構成されているのですが、ア・メリカさんの表紙からして既に魅力的で、そちらを捲るとすぐに糸井重里さん書下ろしの「こんなちず」を眺めることができます。
「こんなちず」とは、『MOTHER』シリーズの「言葉の地図」のようなものになっております。
さらに捲りますと、圧巻のドット絵が、そして印象的なゲーム画面の羅列が目前に広がって行きます。
数ページにして、あっという間に『MOTHER』の世界観に没入させられるのですが、そこからコミックが展開されるという、怒涛の素晴らしい構成となっております。
コミックにつきましても、どれもが”MOTHER愛”に溢れており、読んでいて大変気分が良いです。
正直、シリーズ初心者の私には意味を理解できないマンガもあったのですが、そんなことは関係なく雰囲気だけでも十分に楽しむことができました。
”MOTHER愛”は漫画家の方たちだけでなく、読者の方々も同じなんだろうなと想像が膨らんでいきます。
私がよくゲーム音楽コンサートで感じるような、「1つの作品、あるいはシリーズを愛する人たちが集まる空間の言葉で言い表しにくい心地良さ」を感じ取ることができました。
「MOTHER」シリーズのゲーム的魅力の再考
さて、収録されているマンガの中に個人的に大変印象深い作品がありました。
内容の詳細は当然ながらここでは書けないのですが、『MOTHER』というゲームの魅力を再考する上でどうしても必要なので、1つだけ作品内の言葉をお借りさせて頂きます。
まず、どの作品かと言いますとあらゐけいいちさんの作品です。
この作品に『MOTHER』というゲームの魅力について、こんな風に表現されていました。
「なんかイイ」っていう感覚
具体的にどの部分が「なんかイイ」かについても描かれていたのですが、私自身「うん、うん」と頷けるものがありました。
その「なんかイイ」について考えてみたい思います。
『MOTHER』の良い部分として総じて言えることは、従来のゲームには無かった要素の数々なのではないでしょうか。
テキストであったり、ゲームシステムだったり、キャラクターだったり、風景だったり、多くのものにこうした斬新な要素が散らばっています。
一見すると、『MOTHER』の世界観である”現代アメリカ”とは関係の無いような要素も小ネタのように散らばっていて、やっていることは意外と断片的なようにも感じます。
なので、確固たる世界観の構築という部分では、意外と薄いような印象もあります。
しかし、その断片的な要素が次々と襲い掛かってくると、いつのまにかそれが1つの世界、すなわち『MOTHER』という世界を構築していきます。
「ああ、色々やってくるのが『MOTHER』という世界なんだな」というように、プレイヤーの理解が追い付いてくるような感覚です。
そして、1つ1つの要素がボディブローのようにジワジワと効いていき「あれ、このゲーム良いんじゃない?」というように、ふと気付かされます。
しかも、数打ちゃ当たるじゃないですけど、その中のどれかしらが心に突き刺さってくるものがあるんです。
何が突き刺さったのかがプレイヤーによって異なり、他のプレイヤーと共感できるとは限らないというのも『MOTHER』の魅力なのでしょう。
1つポイントであるように感じるのは、主人公やパーティメンバーが子供という点です。
「子供である時間」というのは、プレイヤーによって現役だったり、少し前だったり、昔だったり差異はありますが、プレイヤーの誰もが経験している時間ということになります。
子供から見て「大人の感覚」と言うものは理解し得ませんが、「子供の感覚」というのは誰もが経験し、知っているものになります。
例えば、「好きな食べ物」なんかもそうですが、そこを突いて来るのが『MOTHER』の巧さのように感じます。
要するに、「なんかイイ感覚」とは、そうした子供の頃に感じる面白さだったり、楽しさだったり、ワクワクだったりではないでしょうか。
そして、そういったものを『MOTHER』は具現化してくれているということなのだと思います。
大人も子供も、おねーさんも。
大人にも、子供にも心に刺さる何かがきっとあるわけです。
女の子のキャラクターも居ますし、おねーさんにも何かが突き刺さることでしょう。
まとめ
こちらの書籍につきましては、作品愛の詰まった素晴らしい作品であるというのが第一に感じるところです。
しかし、それと同時に、何処かぼんやりしていた『MOTHER』の魅力についてのヒントが詰まった書籍であるように感じました。
魅力についての答えも私個人の見解は上述しましたが、プレイヤーによってまた異なるだろうなとも思います。
なので、こちらの書籍を読みながら、それぞれにとっての『MOTHER』の魅力について考えてみるというのは有意義なのではないでしょうか。
そして、その上でゲームを再プレイしてみますと、また新しい世界が広がるかもしれません。
そういった意味でも『MOTHER』をとことん楽しむためのスペシャルな書籍とも言えるのではないでしょうか。