待望のゲームオリジナル音源!MOTHERサウンドは何故プレイヤーを魅了させるのか?
コンポーザー:鈴木慶一、田中宏和
前回から引き続き、「MOTHER MUSIC REVISITED」をご紹介していきます。
今回はDELAX盤のみに付属されているゲームオリジナル音源についてレビューしてまいります。
こちらの記事ではサントラレビュー記事として扱わせていただきます。
目次
概要
ゲームのオリジナル音源については、以前にも「MOTHER サウンドトラック」にて収録されたことがあります。
そちらの作品はサウンドトラックというよりはアレンジ盤だったわけですが、最後のトラックに「The World Of Mother」という曲名で一部の楽曲のみをメドレー形式で繋げたものが収録されておりました。
しかし、「ゲームのオリジナル音源をじっくりリピート再生して聴きたい」と思うのはファンなら当然の感覚ではないでしょうか。
その想いが長い年月をかけ、ようやく叶ったのがこちらのディスクになります。
オリジナル音源の全体像
全33トラックで、各楽曲2ループ収録されております。
当然ファミコン音源なので、使用できる音の数に限りがあります。
特徴的なのは、ヴォーカル楽曲をBGMとして編曲されたような楽曲が多く含まれていることです。
そのような楽曲には所謂イントロがあり、メロディーラインが入ってくると思わず口ずさんでしまうような旋律となっています。
旋律の美しさが際立つ楽曲が多く、それらが着目されがちだとは思うのですが、一方ではBGMらしさのある楽曲もあります。
特に緊張感の高まる場面では効果音も大いに駆使し、プレイヤーの掌に汗を握らせるような楽曲があり、結果的にそれらについても耳に残るものが多いです。
ただ、やはり分かり易い良さと言いますか、シンプルに美しかったり、軽快であったりという馴染みやすい主旋律で訴えかけてくるのが『MOTHER』サウンドの人気の理由であるのではないでしょうか。
トップレート曲
※ 背景色付きは☆5、その他は☆4
POLLYANNA (I BELIEVE IN YOU) 作曲:鈴木慶一
BATTLE THEME 2 作曲:鈴木慶一
HUMORESQUE OF A LITTLE DOG 作曲:鈴木慶一
BEIN’ FRIENDS 作曲:鈴木慶一
MAGICANT 作曲:鈴木慶一
WISDOM OF THE WORLD 作曲:鈴木慶一
TWINKLE ELEMENTARY SCHOOL 作曲:鈴木慶一
THE PARADISE LINE 作曲:鈴木慶一
ADVENT DESERT 作曲:鈴木慶一
EASTER 作曲:鈴木慶一
ALL THAT I NEEDED (WAS YOU) 作曲:鈴木慶一
EIGHT MELODIES 作曲:鈴木慶一
ENDING 作曲:鈴木慶一
POLLYANNA (I BELIEVE IN YOU)
パーティメンバーが主人公一人のみの際に使用されるフィールド楽曲です。
冒険の始まりの緊張感を和らげさせるような軽やかでメロディアスな楽曲となっております。
プレイヤーとしてはやや意表をつかれるような感覚を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
とにかく、何でも良いので歌詞をつけて口ずさみたくなります。
BATTLE THEME 2
特定の雑魚キャラ専用の戦闘曲です。
雑魚キャラ固有の戦闘曲というのは他に存在するでしょうか?
私にはちょっと心当たりがありません。
ファンキーでノリの良い楽曲になっております。
序盤の雑魚敵戦からして、一筋縄にはいかないような難易度なのですが、挫折せずに前に進めるのはこうした楽曲の影響もあるのかもしれません。
ゲーム序盤の探り段階のときに「なんか面白いぞ」と思わせる要素の1つになっているように感じる楽曲なので、重要な楽曲の1つだと思います。
BEIN’ FRIENDS
パーティキャラクターが一人増えるとフィールド楽曲がこちらに変わります。
それまでのフィールド曲と共通しているのは、軽やかさと楽曲のイントロ部分の印象深さです。
エンカウント率が高いゲームなのですが、戦闘が終わりフィールドに戻るたびにその都度イントロから再開されるので非常に印象に残ります。
口ずさみたくなる点についても同様です。
TWINKLE ELEMENTARY SCHOOL
学校で使用されている楽曲で、チャイム音をモチーフにされています。
現実世界で馴染みのフレーズを聴くと、ゲームの世界にリアリティが出てくるというわけではないのですが、なんだか親近感を覚えますし、不思議とゲームへの没入感も覚えます。
ADVENT DESERT
やはり軽快な雰囲気の楽曲で、砂漠の楽曲としては一見すると違和感も覚えます。
しかし、繰り返し聴いていると猛暑で頭がくらくらしているような旋律にも感じられるようになります。
軽快さと過酷さが共存したような素晴らしい楽曲だと思います。
EASTER
街の楽曲としては不気味さがあり、プレイしていても旅の終盤に差し掛かったことを感じさせます。
印象的なのは後半部分で、高音域のサウンドに耳が向くのですが、徐々に主旋律やベースラインの心地良さに気づくような仕掛けを感じさせられます。
メロディアスでは無いのですが、ちょっと癖になる楽曲で繰り返し聴きたくなります。
EIGHT MELODIES
現実の学校教育において音楽の教科書にも載ったくらいの有名曲です。
こちらのバージョンは、ややダイナミクスは付けられていますが、主旋律のみで和音も伴奏も打楽器音も何も無いものになります。
しかし、それだけでもう十分に名曲と思わせるだけの美しい旋律です。
美しさだけでなく、どこか神聖さをも感じさせられます。
ENDING
「EIGHT MELODIS」にベース音や和音が加わっております。
後半には追加フレーズもあり、フルバージョンといったところでしょうか。
特に印象的なのは冒頭のオルゴール音のような優しい音色ですが、後半に向けての盛り上げ方も楽曲の展開として素晴らしいです。
そして、余韻を残すように徐々にオルゴール調の主旋律が消えていく楽曲の終わり方もまた素晴らしいです。
ベストトラック
THE PARADISE LINE
1曲だけを選ぶというのも我ながらなかなか酷なルールなのですが、選んだのは鉄道乗車時に使用されているこちらの楽曲です。
楽曲の軽快さが印象的なゲーム序盤においても、この楽曲ではそれが特に強く感じさせられます。
伝わるか分かりませんが、細かな音符で「テケテケテーケ テケテケテーケ♪」となる箇所が特に好きです。
アレンジ盤だと個々の旋律が変わってしまっているのが残念に感じさせられる程です。
実際にゲームをプレイしてもこの鉄道のシーンが最も印象深かったため、こちらの楽曲をベストトラックに選定しました。
まとめ
不気味で重たさの感じさせられるストーリー性と音楽の軽快さというところでのギャップがプレイヤーを魅了する要因になっているように感じられました。
しかし、ストーリーが終盤になってくるといよいよ楽曲にも緊張感が出てくるというのもゲームサウンドとしてよく完成されているなと感じさせられました。
そして何と言っても旋律の心地良さだったり美しさだったりという点がシンプルに素晴らしいと思いました。
私は半ばこちらのゲームオリジナル音源を目当てにCDを購入した部分が正直なところあるのですが、好きな楽曲を繰り返し聴けるようになって良かったなと心底思っております。
『MOTHER』や任天堂作品のファンの方だけでなく、多くのゲームならびにゲーム音楽ファンの方に手に取って頂きたいと思います。