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FFシリーズ ゲーム音楽レビュー

レビュー「Final Fantasy 10 HD Remaster オリジナルサウンドトラック」

投稿日:2020年3月19日 更新日:

楽曲の個性が浮かび上がってくるのが楽しめるアレンジ盤。未収録曲「ワッカのテーマ」も聴ける!

コンポーザー:植松伸夫、浜渦正志、仲野順也

2013年にリリースされたこちらのサントラは、色々と新しいことにトライした作品になっておりますので、まずは、どのような作品なのか説明が必要となります。

なので、そちらから話を進めていきます。

サントラの特徴、全体像

1つ目の特徴は、HDリマスター版のサウンドトラックであるという点です。

FF10をHDリマスターするにあたり、なんと音楽を60曲もアレンジを施しました。

アレンジャーはコンポーザー3名の他、成田勤さん、山崎良さん、野田博郷さんの計6名で行われました。

要するに、FF10オリジナルサントラのアレンジ盤として解釈することもできます。

しかし、ゲームをプレイするに辺りプレイヤー自身がこちらのアレンジ音源か、オリジナル音源かを選択できるようにもなっています。

例えば、新プレイヤーはアレンジ音源を選んだり、オリジナルからの再プレイヤーはイメージを壊さないようオリジナル音源を選んだりするのでしょう。

ちなみに私はオリジナル音源でしかプレイしていないので、こちらの円盤はあくまでもアレンジ盤として楽しんでいます。

今「CD」でなく「円盤」と言いましたが、それがこの作品の2つめの特徴になります。

こちらはCDではなく、Blu-rayディスクとなります。

再生するためにはBlu-rayディスクの再生機が必要で、TVやPCでゲーム映像と共に楽しむという新しいスタイルのサウンドトラックです。

今となってはスクエニが「リバイバルサウンドトラックシリーズ」を続々とリリースし、このようなスタイルの楽しみ方は定着してきています。

しかし、この作品が初めてこのスタイルを試みた作品ということになり、当時は大きな驚きがありました。

しかし、このスタイルには大きな欠点があります。

それは、手軽に聴けないという問題です。

映像付きのものを腰を据えてじっくり聴くというのは、正直なところ時間にかなり余裕のあるときでないと難しいです。

よって、せっかく買っても聴く機会がほとんど無いという状況に陥ります。

それを打破するのが、MP3音源の収録です。

こちらをiTunes等に取り込むことで、通常のCD音源と同様に音楽機器から再生することが可能となっています。

ただ、「上手く取り込めるかな?」、「やり方が分かるかな?」、「ちょっと面倒だな」という微妙な感覚も出てくるのが私の実体験としてありました。

結果的には「なんとかなる」というところで、取り込めないということは無いのですが、多少の手古摺りはありました。

しかし、2つの楽しみ方があるメリットは大変大きく感じました。

コンサート等の全ての映像作品にMP3データが入っていればな、と我儘を言いたくなってしまします。

3点目の特徴は、おまけ要素です。

まず、FF10-2の楽曲も映像と楽しめるよう、10曲と少しではありますが、収録されています。

そして、重要なのは未収録音源の収録です。

3曲だけですがこの価値は低いものとは思えませんでした。

どういった曲なのかは後述します。

各楽曲のレビュー

ティーダのテーマ


主旋律をクラシカルなギターサウンドに変わったのが、個人的には大きなヒットでした。

原曲よりも好みだと感じました。

Otherworld


ドラムのキレが変わっているように感じるのですが、この正体は何でしょうか。

ちょっと音質がHighに感じます。

バランスが整い、ヴォーカルにも深みを覚えるような印象がありました。

ノーマルバトル

このトラックは違和感を覚えました。

特に気になるのは金管の音色です。

パワフルに弾けるような、もっとキレの良い音色の方が良いなと感じました。

ベース音もちょっと癖があるので苦手に感じる方が少なくないのではないかと思います。

勝利のファンファーレ


「ノーマルバトル」と同じ音色ですが、こちらはあまり違和感を覚えませんでした。

バトルシーンからの繋がりを想像すると良いアレンジだなと思いました。

ゲームオーバー


主旋律が原曲よりも浮き上がってくるようなシンプルなアレンジです。

「こういう曲だったんだ!」という新鮮味があります。

ブリッツに賭けた男達


オーケストラルなアレンジで深みが出ていて良いアレンジだと思いました。

ブリッツボールを蹴り上げる描写が目に浮かびます。

ビサイド


原曲から大きく変わっています。

ピアノ、ストリングス、電子音の組み合わせと流れる水を思わせる効果音が合わさり、神秘性が出ています。

アレンジとしては良いなと思うのですが、ゲーム場面では原曲の方が世界観に合致しているかなとも思います。

ユウナのテーマ


旋律はほとんど変わらず、音だけ変えています。

良いなと思いながら聴き進めたのですが、最後の音がほとんど消えてしまっている箇所に違和感を覚えました。

萌動


パーカッションが面白いアレンジです。

トライアングルとタンバリンの奏でる不思議なリズム感に私は嵌りました。

ルカ


FF10に出てくる亜人種のラッパを思わせるサウンドが出てくるのが良いですね。

ルカの風景が思い浮かんだので、これも好みのトラックです。

アーロンのテーマ


これはもっと渋いアレンジを期待してしまいました。

私がイメージするアーロンの楽曲はもっと低音域が鳴り響いているものです。

低音域の楽器が無く、むしろ爽やかな感じすらあるこちらのトラックとは大きなギャップがありました。

ミヘン街道


チップチューンアレンジでも存在感がありましたが、この楽曲はアレンジに関しては合うものが多い印象があります。

こちらのアレンジではサックスの主旋律がまた良い味を出しているように感じます。

リュックのテーマ


柔らかみがなくなり、歯切れがあまり良くないと言いますか、伸びやかさが出ていて原曲の良さがやや失われている感じがします。

ピアノコレクションでもそうでしたが、この曲はアレンジは難しいです。

雷平原


この曲はアレンジで最も大きく変わった曲だと思います。

ピアノと「カチカチ」と鳴らす時計の秒針のような効果音との相性が凄く良く感じます。

しかし、今にも雷が来そうな雰囲気は薄れていますので、この曲では雷を200回避けるのは難しそうです。

ジェクトのテーマ


これは原曲より好みです。

ギターの音がクリアになってテクニカルなサウンドに聴き入ってしまいます。

シーモアの野望


これは聴き返していて驚きました。

原曲より良く感じます。

やはり全体的にクリアになっている印象なのですが、野望がより鮮明になる感じがします。

バッキングに耳を凝らしてみても面白い聴こえ方がします。

灼熱の砂漠


この曲も良いアレンジに感じました。

メロディーとバッキングの強弱のバランスが原曲と反対になった印象で、聴いていてむしろ、しっくり来ます。

それでいて、砂漠の中の朦朧としてきそうな感覚も消えてないです。

ユウナの決意


原曲も大好きですが、こちらの方がやや広大な平原をイメージし易いなと思いました。

ピアノが良いアクセントになってますね。

そして、ループの繋がり方が大変素晴らしく、繰り返し聴きたくなります。

未収録音源

おまけ1(まぼろし) 作曲:仲野順也


この曲は聴いていてニヤけてしまいました。

すぐに仲野さんの曲だと分かりました。

「FF10」というよりも「デュープリズム」の楽曲を思わせます。

変な話ですが、未収録なのもちょっと納得いってしまいました。

しかし曲の質は大変高く、聴けて嬉しくてたまらないです。

眠ったままにならなくて良かったと思います。

ちょっと「素敵だね」のメロ部分の旋律が混じっているように思いました。

仲野さんのらしさ全開の「素敵だね」アレンジの曲だとしたら必聴レベルだなと思います。

おまけ2(ノスタルジア) 作曲:植松伸夫

この曲も仲野さんっぽい印象なのですけど、植松さんらしいです。

今度は「エアリスのテーマ」のメロ部分が混じっているように感じました。

この曲が使用されるようなノスタルジア、すなわち故郷を懐かしむような場面はあったでしょうか。

一度その景色とお別れをしたら、振り向かずに旅してるユウナ一行の前では意外と出番が無い曲かもしれませんね。

おまけ3(ワッカのテーマ) 作曲:植松伸夫


オリジナルサントラを買ったばかりの頃、曲目を眺めていて「あれ、ワッカのテーマ曲は無いんだ」と思ったのを今でも覚えています。

それが、今ここに!

飛び上がる勢いで嬉しいですね。

曲調は植松節と言いますか、優しさが出ているキャラクター曲という印象です。

ワッカのイメージを曲にするって結構難しいように感じるのですが、信じるものと裏切りの狭間で揺れ動きながらも進んで行くワッカのイメージと重なるような気がする楽曲です。

曲の方も進んだり、ちょっと立ち止まったりしますので。

良い曲なのに未収録なのはちょっと残念ではあります。

では、なぜ未収録なのでしょう?

出番があったとしたら初登場時だとは思います。

しかし、この場面で使用されているのはまさかの「ティーダのテーマ」です。

よりによって、他のキャラクターのテーマ曲にポジションを奪われています。

どんな世界でもレギュラー争いは残酷なものですね。

確かにビサイドの浜辺の描写との相性的に「ティーダのテーマ」の方が良いよなとは思うので、未収録もやむを得ないかなと思いました。

ブリッツでもティーダの方がエースですし、仕方が無いです。

ところで「キマリのテーマ」は…

「極北の民」?

いやいや”民”であって、キマリではないじゃないですか。

霊峰ガガゼトの山道を通されないのはキマリだけなわけで、”民”ではありません。

「極北のキマリ」でも良いので聴いてみたいところです。

まとめ

全体的に言えることは音質がクリアになってます。

例えるならば、レコーディング環境が良くなったようなイメージで、曲の持つ個性も浮かび上がってくるような楽曲が多かったです。

ただ、癖があったり、大きくイメージが変わるような楽曲もあるのでアレルギー反応みたいなものが出る人も居るかもしれません。

なので、サントラというよりもアレンジ盤だと思って楽しむ方を私はお勧めします。

そして、未収録曲は魅力たっぷりなので、こういった機会を逃すのはちょっと勿体無いので、是非楽しんで頂きたいです。

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