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FFシリーズ ゲーム音楽レビュー

レビュー「FINAL FANTASY 10」 オリジナルサウンドトラック

投稿日:2020年3月2日 更新日:

FF10の世界にプレイヤーを引きずり込む巧みな楽曲が揃っている!

コンポーザー:植松伸夫、浜渦正志、仲野順也

ゲームのプレイ状況:やり込み+4周くらい

『全ファイナルファンタジー大投票』の放送記念ということで、

FFシリーズの中でも私にとって特に思い入れの深いFF10のサントラをレビューします。

サントラの全体像

まず、過去作と大きく異なるのが、コンポーザー3名による合作という点が挙げられます。

FF9までは植松伸夫さんが全楽曲担当していました。
今作でも植松伸夫さんがメインコンポーザーではあるのですが、当時スクエニに在籍していた浜渦正志さん、仲野順也さんが加わり、合作となっております。

ゲーム音楽は多くの曲数が必要となりますので、現在では合作は珍しくないのですが、PS世代までは比較的単独で担うことが多かった印象があります。

背景としてゲームの発展、すなわちゲームボリュームの増大により、このような合作の流れがじわじわと来たのかな、という印象があります。

FF10においては、聴いたら大体誰の曲であるかが予測できるほど、それぞれの個性が出ています。

1つのシナリオや世界観を共有しているのに、それで本当に良いのか?という疑問も浮かびますが、各場面でのプレイヤーの楽曲イメージと曲が合致しているのか、ゲームをプレイしていて大きな違和感は覚えません。

それどころか、サントラとして聴いていても楽曲の全てがFF10の曲として滞りなく入ってきます。

できることならば、1人のコンポーザーが全楽曲を担ってくれた方がより良いかなと私自身は思うこともあるのですが、

それぞれの個性で素晴らしい楽曲が集まったサントラになっていると思います。

コンポーザーの違いだけでなく、全体的に個性的な曲が並んでいます。

にもかかわらずFF10のシナリオや世界観にネガティブな方での影響をもたらしていないのが、このサントラの特徴だと思います。

その中でも、共通点を探るのであれば、

各キャラクターのテーマ曲ではFFらしい優しさの音楽が垣間見えます。

また、中核となっている曲が3曲ほどあります。

これらの楽曲が印象付けている部分も大きいと思います。

管理人のトップレート曲

※ 背景色付は☆5 その他は☆4

【DISC1】


ザナルカンドにて

プレリュード

ティーダのテーマ

Otherworld

ノーマルバトル

ブリッツに賭けた男たち

ビサイド島

スピラの情景

祈りの歌

召喚

【DISC2】


ユウナのテーマ

萌動

嵐の前の静けさ

ルカ

The Splendid Performance

Blitz Off

アーロンのテーマ

ミヘン街道

旅行公司

リュックのテーマ

【DISC3】


雷平原

ジェクトのテーマ

マカラーニャの森

灼熱の砂漠

素敵だね

【DISC4】


ユウナの決意

いつか終わる夢

深淵の果てに

シーモアバトル

召喚獣バトル

決戦

Ending Theme

素敵だね – Orchestrated version

まずは、上記の中核となる3曲についてお話します。

これらの3曲は、アレンジされた曲も様々な場面で使用されており、重大な役割を担っていますので、中核の楽曲と捉えております。

ザナルカンドにて(曲:植松伸夫)


全FFで1位を獲得した曲です。

私も知らなかったのですが、この曲は植松さん自身も好きな曲なのだそうです。

他にも「PRESS START」で指揮者を担った竹本泰三さんもこの曲が好きだと繰り返しおっしゃっています。

元々はフルート奏者のために作り、没となった曲らしいですが、それをピアノ楽曲として再構築してFF10のオープニングに使用してみたら、これは!という経緯だったようです。

旅の終わりへの不安や、シンを倒すという揺るぎない決意、身近な大切な人やスピラの人々への想い、これらが混在した複雑な心情をを感じさせる名曲です。

祈りの歌(曲:植松伸夫 編曲:浜渦正志)


この曲こそ、最も世界観の構築に重要な役割を果たしています。

エボン教、寺院、召喚獣といったスピラにおける重要な要素をこの曲でまとめあげている印象があります。

聖堂に響き渡るような、どこか西洋の教会っぽい雰囲気も実はベースにはあるように思うのですが、そこから東洋よりに寄せて行ったような絶妙な匙加減を感じます。

曲の短さや、意味が隠されている歌詞というのも、なんだかこの曲を覚えて口ずさみたくなりますし、

実際に口ずさむことでよりプレイヤーもスピラの世界へ入って行けます。

素敵だね(曲:植松伸夫 唄:RIKKI)


メインテーマ曲ですが、この曲を聴くと私はCMも思い浮かべてしまいますね。

キャッチフレーズも印象的でしたね。

この曲やRIKKIさんについては、別に記事を上げようと思いますのでここでは割愛しますが、

重要な場面でアレンジ曲として登場していますので、こちらも中核となる曲目となります。

ここから、上記のアレンジ曲含め、他の楽曲についても触れていきます。

プレリュード(作曲編曲:植松伸夫)


大胆なアレンジなので意外に気付かない人も居らっしゃるかもしれませんが、

この曲はシリーズおなじみの「プレリュード」のアレンジ曲です。

テクノアレンジの機械的なサウンドが、いかにも未来を思わせるような雰囲気なので、プレイヤーを「この世界は何なんだ?」と混乱させる方向に意図的に持って行っているようにも感じます。

そう考えると音楽の力の大きさを改めて感じますね。

ビサイド島(曲:浜渦正志)


長閑でホッとする感じの音楽です。

ゲームの進行上、一息つけるような場面で流れる曲になりますが、プレイヤーを混乱の連続から落ち着かせる、という大きな効果を密かに持っているように感じます。

そう考えるとこの曲も重要な1曲であると捉えられますね。

スピラの情景(曲:植松伸夫 編:浜渦正志)


来ました、アレンジ曲です。

「素敵だね」のアレンジ曲で、キーリカ島などで流れます。
ギターの音を活かしてテクニカルなアレンジになってます。
弦楽器特有の小技が素敵です。

キーリカではユウナの重要なイベントがあるのですが、「素敵だね」の旋律が流れるとユウナを感じるような仕掛けがあるように思えるのですが、いかがでしょうか?

ユウナのテーマ(作曲編曲:植松伸夫)


これも主題歌「素敵だね」のアレンジ曲です。

やはり、「素敵だね」はユウナを表した旋律なのかもしれません。

様々な場面で流れますが、ビサイドを発つ場面が最も印象的です。

前半はユウナの穏やかさを表したかのように物静かですが、
後半になると壮大になり、ユウナの決意の強さを表しているかのように感じます。

萌動(曲:植松伸夫 編曲:仲野順也)


こちらは「ザナルカンドにて」のアレンジ曲で、ジョゼ街道などで流れます。

結構好きな人も多いですよね。

おそらく、心が痛くなるシーンの後に流れる曲なので、印象に残り易いからという理由もあるように感じます。

トライアングル的なパーカション音が凄く効いてます。

ちょっと不思議で不気味な雰囲気もありますが、聴き心地は良いです。

ルカ(曲:仲野順也)


複雑な構成で、メロディアスではないのですが、どこか煌びやかな旋律は、発展した賑やかなスピラらしからぬ街の雰囲気がよく出ています。

船笛が聞こえてきそうで、港町っぽさが凄く良く出ています。

これもスピラのちょっと異なる一面が垣間見えるので重要な1曲だと思います。

Blitz off(曲:浜渦正志)


ブリッツに私はかなり嵌りましたので、ゲーム中で相当聴きました。

しかし、飽きの来ない曲です。

私には何拍子なのかも分かりませんので、全くリズムを取れないのですが、ゴール前での緊迫感を思い出し、みなぎってきます。

マカラーニャの森(曲:浜渦正志)


幻想的な森にぴったりな幻想的な曲です。

ここまでゲームの場面と音楽がシンクロするのは凄いと思います。

曲のダイナミクスも素晴らしく、幻想的な中にも抑揚を感じます。

ユウナの決意(曲:植松伸夫 編曲:仲野順也)


ナギ平原で流れます。

タイトルにある「決意」ってよりは、ナギ平原の雰囲気に合わせて作った曲のようにも思えます。

しかし、それだけではなくユウナの持っている心の穏やかさと、だからこそ揺るぎない決意みたいなものも表現されているように感じます。

広く、壮大な平原。

揺るぎない決意。

仰向けに横たわり、両手を広げ、空気を吸い込むユウナ。

上手く言えませんが、そんな感じの曲です

いつか終わる夢(曲:植松伸夫 編曲:浜渦正志)


「素敵だね」のアレンジ曲で、ザナルカンド遺跡で流れます。

「いよいよ来てしまった、着いてしまった」という雰囲気が出ているオーケストラアレンジです。

パーティの皆がユウナについて思いを巡らせているのですが、そういった部分を何処か物悲しい「素敵だね」で表現しているのかもしれません。

ゲーム中の演出も、これから起こることに頭が一杯で、いまひとつ戦闘に集中しきれないような、そんな部分を演出しているように私は感じました。

余談ですが、私はこの曲を宗谷岬へ向かう車の中でリピート再生しました。

実にくだらないですが、最果て感が出ておすすめです。

召喚獣バトル(曲:仲野順也)


ここで「祈りの歌」が使われていますね。

この曲も壮大な中に物悲しさが出ていて、プレイヤーの涙を誘います。

戦闘曲なのに涙を誘うとか器用なことができるなんて、仲野さんも凄いコンポーザーですよね。

余談ですが、非常に難解な曲で「シアトリズムファイナルファンタジー」で私が最もお手上げだった曲です。

Ending Theme(曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎)


浜口さんと言えばオーケストラアレンジですね。

私は「祈りの歌」から「ザナルカンドにて」に曲が映る部分が好きです。

この曲を聴くとエンディングのムービーを想起し易いです。

どのタイミングで、どのシーンだったのかが全て浮かぶというのは、エンディング曲の中でもこの曲だけかもしれません。

 

ベストトラック

リュックのテーマ(曲:植松伸夫)


これこそが究極の植松サウンドという感じがしますので、ベストトラックです。

どういうことかと言いますと、

植松さんは「優しい音楽を作りたい」というのが作曲のベースにあり、これは作曲を始めた頃からブレていない植松さんの芯の部分なのです。

そして、この曲はその部分をとても強く感じます。

優しく、綺麗な曲です。

リュックといえば賑やか担当ですが、彼女も芯では凄く優しいです。

その優しさを強調しているように思えます。

日常で、つらいことがあると聴きたくなるような曲です。

まとめ

こうして、各曲目について見てみると、いかにプレイヤーをFF10の世界に引き込む曲が揃っているのかが分かります。

だからこそ、3人のコンポーザーが各々の個性を発揮して作られた楽曲で構成されてるにもかかわらず違和感を覚えないのかもしれません。

「ザナルカンドにて」はすっかり有名曲ですが、他の楽曲も素晴らしいので、

全FFで注目されたこのような機会に聴き返してみるのも良いかもしれません。

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