従来のエースコンバットサウンドにドラマチックさが加わった至福のサントラ!
コンポーザー:小林啓樹、中西哲一、中鶴潤一、大久保博
ゲームのプレイ状況:ノーマル1周(PS4版で2周目プレイ予定あり)
今回はエースコンバットシリーズの中でも屈指の名作と言われる『エースコンバット5 ジ・アウサング・ウォー(以下ACE5)』のサントラをご紹介します。
ゲームの特徴
音楽の話の前にゲームについても触れておこうと思います。
今作はシリーズの中でもストーリーと言いますか、人間ドラマの部分が非常に印象深い作品となっており、前作までとは一線を画しています。
特にヴォイス設定を日本語にすると、前作からのプレイヤーは違和感を覚えても不思議ではないくらい、ドラマチックなものになっております。
ちょっと淡泊にも感じられた前作までのストーリー(これはこれで非常に良かった)が派手に彩られているような印象があり、そこに物足りなさを感じていたプレイヤーにとっては特に楽しめる作品と言えそうです。
仲間との絆といった部分で大きな感動を得られるシナリオになっております。
その反面、ドラマ性の強さゆえにリアリティの薄さは感じられる部分は否めません。
ミッションも多くシリーズ最大のボリュームとなっておりますが、個人的には多過ぎる印象もあった他、シビアでストレスを感じさせるミッションもこの作品から出てきたなという印象も抱いております。
このように好みが分かれる部分もあるのですが、どちらかというとポジティブに捉えている方が多いようで、シリーズ屈指の人気作となっております。
こういった形の方がゲームらしさがあるので、純粋にゲームを楽しみたい人たちの間で評価が高いのは当然ですし、クオリティが高いことには間違いないとは私自身も思っております。
サントラの全体印象
ミッション数が多いため、当然ながら楽曲数も多く、ディスク4枚組の全91曲となっております。
時間にして248分の大ボリュームです。
DISC3まではミッションの楽曲が中心に収録されており、DISC4はアーケードモードのみの楽曲が収録されていると思いきや、ムービーシーンの楽曲も収録されております。
個人的にはミッションの合間のムービーシーンであるので、ストーリーを思い起こす上でこの収録順には疑問が残っております。
この収録順は前作も同様ではあるのですが、前作はムービーシーンは”サイドストーリー”という扱いであったため気になりませんでした。
しかし、ドラマチックでストーリー性の強い今作のサントラとしては、そこには違和感があります。
加えて収録曲が非常に多い点も相まって、サントラとしてのまとまりに欠けてしまっている原因の1つとなってしまっているようにも感じます。
サウンドは『ACE04』の流れを汲んだオーケストラルなものになっておりますが、ゲームのストーリー性のせいか音楽もピアノ楽曲等、ドラマチックに感じられるものが増えています。
コンポーザー陣はバンダイナムコの層々たる面々で相変わらず高いレベルを感じさせますが、小林啓樹さんの楽曲の割合が前作よりも大幅に増えております。
かつメインテーマ等の主要楽曲や、ムービーシーンの楽曲は全曲作曲されていたりしているため、存在感が大きく増しています。
トップレート曲
※ 背景色は☆5、その他は☆4
[DISC1]
Briefing 1 作曲:小林啓樹
Hangar 1 作曲:小林啓樹
Wardog 作曲:中西哲一
First Flight (Arranged ACE COMBAT 04 “Blockade”) 作曲:小林啓樹
Rendezvous 作曲:小林啓樹
White Bird (Part 1) 作曲:大久保博
8492 作曲:中鶴潤一
Reprisal 作曲:中鶴潤一
Shop 作曲:中西哲一
[DISC2]
Four Horsemen 作曲:中鶴潤一
Ice Cage 作曲:小林啓樹
White Noise 作曲:小林啓樹
Free Flight 作曲:小林啓樹
Into The Dusk 作曲:小林啓樹
Final Option 作曲:小林啓樹
Ancient Walls 作曲:中西哲一
[DISC3]
Briefing 2 作曲:小林啓樹
Hanger 2 作曲:小林啓樹
Closure 作曲:中西哲一
Ghosts Of Razgriz 作曲:中鶴潤一
White Bird (Part II) 作曲:大久保博
The Unsung War 作曲:小林啓樹
The Journey Home / The Warsaw Philharmonic 作曲:小林啓樹
Razgriz / The Warsaw Philharmonic 作曲:小林啓樹
[DISC4]
Arcade Elemental Particle 2 作曲:大久保博
Blue Skies (remix) 作曲:大久保博
Razgriz “ACE Combat 5 Main Theme” 作曲:小林啓樹
15 Years Ago 作曲:小林啓樹
New Emblem 作曲:小林啓樹
Unsung Heroes 作曲:小林啓樹
BLURRY 歌:PUDDLE OF MUDD
Hangar 1
機体選択場面での楽曲です。
煌びやかな高音域のパーカッション音が戦闘機の格好良さを感じるのに一役買っており、そこが個人的に気に入っているポイントです。
First Flight (Arranged ACE COMBAT 04 “Blockade”)
ミッション4の楽曲です。
曲名で補足されている通り、前作の楽曲のアレンジ曲になります。
今作のアレンジでもやはり前奏部からしてダイナミクスが素晴らしく、非常に印象深いものになっております。
個人的には前作の方が独特なリズムを感じられるので好みではあるのですが、今作では楽曲を全体での力強さがより感じられます。
ミッションのタイミング的にも今後の展開がワクワクさせられる楽曲に仕上がっているなと思います。
Into The Dusk
ストーリー上、重要なイベントシーンで使用されている楽曲です。
今作のメインフレーズをピアノメインでアレンジされております。
ピアノだからこその楽曲の表情があり、引き込まれるものがあります。
シリーズの楽曲としてはあまり多くない、ドラマ性を前面に出した楽曲のため、個人的にはACE5の象徴的な楽曲だなと感じます。
Closure
ミッション22の楽曲です。
金管メインの楽曲ですが、ピアノも旋律を奏でているわけではないのですが存在感が強いです。
爆発性はなく、ダイナミクスとしてはやや淡々としているのですが、それがまた心地良く感じられます。
The Unsung War
ACE5の楽曲と言えばこちらを思い浮かべる方が多いと思います。
シリーズ恒例のコーラス楽曲ですが、今作では前半の男性コーラスの印象が特に強いです。
伸びやかさよりもキレの良さが印象的なコーラスで、歌詞の響きも非常に良いものがあります。
何度聴いても鳥肌が立つような名曲で、当然ながらベストトラック候補でした。
The Journey Home / The Warsaw Philharmonic
バイオリンコンチェルトと言って良いのでしょうか。
とにかくバイオリンソロが印象的です。
ソロになるとビブラートの美しさが非常に分かり易いので、このようなアレンジも個人的に好きな傾向にあります。
”Home”という単語を見ると暖かみのある旋律を思い浮かべるのですが、正にそのような美しい旋律なのがまた良いです。
Razgriz “ACE Combat 5 Main Theme”
ムービーシーンでの楽曲です。
タイトルの通りACE5のメインフレーズが使用されております。
やはりメインフレーズの伸びやかさというのがエースコンバットサウンドの根本を担っているという印象を持ちます。
こちらのヴァージョンでは、ストリングによるシンプルな構成になっており、ゆったりとした楽曲になっております。
15 Years Ago
ムービーシーンの楽曲です。
こちらの楽曲もメインフレーズをピアノアレンジされた楽曲なのですが、「Into The Dusk」とのアレンジの違いとしては、こちらには回想を思わせるための仕掛けが施してあるという違いがあります。
仕掛けと言うのは楽曲のテンポもそうですし、”間”を使ったピアノの奏法がそれに当たると思っております。
涙を誘うような、切なさが感じられるアレンジになっております。
ベストトラック
Rendezvous
ミッション5の楽曲です。
前奏部の素晴らしいダイナミクスが最高です。
クレッシェンドでダイナミクスが増していくわけですが、1コーラス後また静かな音に戻って再度盛り上がって行くのもたまりません。
エースコンバットシリーズと言えば、やはりミッション楽曲の素晴らしさという点を推していきたいので、こちらの楽曲をベストトラックとします。
まとめ
エースサウンドらしさのあるメインフレーズやコーラス楽曲という魅力は今作でも大いに楽しむことができます。
そんな中でも今作ではピアノやバイオリンソロをメインにしたドラマチックな楽曲が含まれており、そこが前作までとは異なる部分になります。
サントラ全体としてのまとまり感にやや欠ける印象はあるものの、1曲1曲は非常に素晴らしく、それは小林啓樹さんの楽曲もそうですし、中西哲一さん、中鶴潤一さん、大久保博さんそれぞれの楽曲がどれも素晴らしいです。
複数のコンポーザーによる作品でありながら、それでいてどれもエースコンバットサウンドなのは相変わらず凄いなと思わせます。
シリーズファンなら迷うことなく聴いて欲しいですし、有名曲「ZERO」しか知らないような方にも是非聴いてみて欲しいと思っております。
なお、サントラにも収録されているエンディング楽曲の「BLURRY」もまた素晴らしい楽曲なのですが、こちらにつきましては後日記事にしようと考えております。