シリーズサウンドの決定盤がここにある!一方で、今後に向けた楽しみな要素も感じられる!
コンポーザー:小林啓樹、渡辺量、北谷光浩、大久保博、中鶴潤一、中西哲一 、工藤祐介、山内祐介、宮城裕紀子
ゲームのプレイ状況:難易度ACEクリアまで(計3周)
今回はシリーズ最新作「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」(以下ACE7)のサントラをレビューします。
※ ミッションの内容に触れているネタバレ記事になりますのでご注意下さい。
「ACE7」の特徴
今作においてはリアリティ路線が一層強くなり、例えば、風や雲の影響をより受けるようになりました。
個人的にはグラフィックの感動がより大きくなり、高揚感が高まりました。
一方で、ゲームとしての難易度が跳ね上がり、シリーズ玄人向けの作品だったかなという印象があります。
実際のところ、プレイヤーの意見を多く取り入れて作成されたという経緯があります。
意見を届けるプレイヤーというのは、シリーズを遊びつくしたコアなプレイヤーであることが想像されるので、これが難易度が上がった背景としてあるのではないかと私は考えています。
正直なところ、シリーズ初心者にはお勧めしにくいタイトルとなっている印象を持っております。
私自身は、Easyモードから始めたのですが、それでも挫けそうになるほどゲームオーバーを重ねるミッションが複数あり、非常に難しく感じました。
特に砂漠を低空で飛ぶミッションは酷く苦労し、プレイを止める選択肢も頭に過ぎる程でした。
私の周囲ではシリーズファンでありながら、なかなかクリアできないミッションがあり、そこでプレイを止めてしまった人も居たくらいでした。
最もネガティブな感想としては、「リアリティを追求した結果、ゲームとしての爽快感が失われのでは?」という印象を抱いています。
1回でクリアできるミッションはほどんどなく、敵の配置だったり、マップだったりを覚える必要がありました。
しかし、これらを把握し1度クリアしてしまえば、難易度ACEでもスムーズにクリアできるくらいのバランスにはなっており、慣れてくると爽快感が蘇ってくるような感覚がありました。
サントラの全体像
収録曲数125曲、時間にして6時間51分もの大ボリュームになります。
ディスクにして6枚にもなりますが、ゲーム本編の楽曲は4枚目の半分までです。
4枚目の残りはVRモード、5枚目はマルチプレイモード(過去作の楽曲)、6枚目はDLCの楽曲が収録されております。
当然ながら高い買い物になりますし、通して聴くのはなかなか大変で、レビュアー泣かせ(私だけ?)のサントラでもあります。
しかし、シリーズ楽曲のファンであれば、間違いなく満足できる内容になっています。
私は5回通して聴いてはおりますが、基本的にはプレイリストを作った上で楽曲を絞って聴いております。
実はブログ開設初期にレビュー記事を書こうとしていたのですが、そのボリュームのために長い聴き込み期間を要したため、ようやく書ける状態になったといったところです。
コンポーザーはバンダイナムコの層々たる面々が並んでおりますが、メインコンポーザーは小林啓樹さんで、作曲されている楽曲の多さで言えば北谷光浩さんが次いで多くなっております。
加えて、サウンドディレクターとして渡辺量さんの名前があります。
渡辺さんはエースコンバットの楽曲に感銘を受けて入社された経緯があるコンポーザーで、自身も数曲の楽曲を作成されています。
見慣れないコンポーザーのお名前もありますが、DLCの楽曲を担当されている方々になります。
まだ作曲された楽曲は少ないようなのですが、バンナムのコンポーザー陣に加わっているわけですから、今後の活躍が期待されます。
個人的には中西哲一さんの楽曲ももっと多く聴きたかったかなとは思うのですが、レベルの高いエースコンバットサウンドが終結しており、全体としてはやはり満足度が高いです。
全体的なサウンドとしては、よりオーケストラ色が濃くなったなという印象があるのですが、そこは”小林色”が濃くなったというところでしょうか。
印象的な楽曲の出だし部分や、そこから徐々に音の厚みが加わって壮大な楽曲になって行くという特徴も一層濃くなっております。
ゲーム全体を通して、繰り返し聴くことになる短いメインフレーズは今作にも存在しており、確信はできないのですが、こちらは小林さんの作曲されたフレーズなのではないかなと思われます。
伸びやかさのある、いかにもエースコンバットのメインフレーズといったように感じます。
それでは、各曲のレビューに移りますが、ディスク5は過去作の楽曲になりますので、レート付けはしておりません。
また、アレンジ曲につきましてもレート付けはしておりませんので、これらの楽曲には触れない形で書いていこうと思います。
トップレート曲
※ 背景色付は☆5、その他は☆4
[DISC1]
Drag Racer
Fort Grays Air Base Hanger
Charge Assault
Dual Wielder
Gunther Bay
Rescue
Friendly Fire
IUN Debriefing
444th Air Base Hanger
444
[DISC2]
Long Day
Pipeline Destruction
Faceless Soldier
ADFX-10
Siren’s Song
[DISC3]
Magic Spear I
Battle for Farbanti
Homeward
Archange
[DISC4]
Lighthouse
Daredevil
Hush
Space Elevator
Dark Blue
Epilogue
pensées
[DISC6]
DLC New Arrows Air Base Hangar
Enchanter II
Mimic
2015 Trailer
Drag Racer 作曲:小林啓樹
オープニングの楽曲です。
技巧的なギターサウンドの楽曲という印象から一転、後半にメインフレーズが入ってきます。
これが「ACE7か!」という興奮がここから始まります。
Gunther Bay 作曲:小林啓樹
ミッション4の前半部分の楽曲です。
レーダーを避けながら目標地点に向かうというシリーズ恒例のミッション中に掛かる楽曲なのですが、やはり緊張感を感じさせるものになっています。
特に短く入るコーラス部分が印象的です。
Rescue 作曲:小林啓樹
同じくミッション4の中盤部分の楽曲です。
ターゲットをいよいよ破壊していきます。
緊張感のあるミッションの前半部分から解き放たれ自由に飛び回れるようになりますので、解放感があるかと思いきや、何故か不穏な楽曲が続きます。
タイトルの通り、目的は「救出」なのですが、その後の嫌な展開を予感させられるような楽曲となっています。
444 作曲:北谷光浩
急展開を迎えたミッション5の楽曲です。
これまでオーケストラ中心の楽曲だったのが、ここでは一転、ギターやベースのサウンドが印象的な楽曲に変わります。
コンポーザーも変わり、状況の変化を効果的に演出しています。
Long Day 作曲:中鶴潤一
ミッション6の楽曲です。
スコアによってミッションの成功失敗を問われるタイプのミッションです。
補給も必要で、持久戦になります。
派手さの少ないミッションということで、楽曲も激しく揺さぶるような楽曲ではなく、そこか淡々とした雰囲気も感じさせます。
しかし、テンポは意外に速いです。
淡々とやや速い曲調が、終盤になり微妙なスコアになってくることで焦りを感じさせられます。
じわじわと効いてくるような不思議な楽曲になっています。
ADFX-10 作曲:小林啓樹
ミッション10の後半部分の楽曲です。
護衛系なので、緊張感の高いミッションになっております。
メロディアスな主旋律部分があるため、印象に残り易いです。
例によって徐々に盛り上がって行くタイプの楽曲ですが、最高潮に達した際のパワフルな金管の音が非常に格好良く聴こえます。
Homeward 作曲:北谷光浩
ミッション17の前半部分の楽曲です。
スコア系のミッションですが、物語も終盤となり熱を帯びていっている状況です。
独特のリズムで、徐々に厚みが加わり、ストリングスまで入ってきますと迫力が一気に増します。
しかし旋律の高低差は少なく、そういう意味では爆発し切ってはおりません。
物語がどう動いていくのか、終盤の展開を想像させます。
Archange 作曲:小林啓樹
ミッション18の後半部分の楽曲です。
強敵とのドッグファイトという熱い場面で掛かります。
コーラス中心の壮大さを感じさせる楽曲ですが、その旋律やリズムは不気味です。
敵の得体の知れなさを感じさせます。
Lighthouse 作曲:小林啓樹
ミッション19の前半部分の楽曲です。
大きな標的を打ち落としにかかりますが、タフさが楽曲からも感じられます。
当てても当てても、効いたと思っても立て直してくる。
楽曲もそんな構成に感じられます。
Daredevil 作曲:小林啓樹
ミッション19の後半部分の楽曲です。
まず印象的なのは、低音部の響きです。
敵兵器の凶悪さを音楽からも感じ取れます。
そして、何と言ってもメインフレーズのコーラスパートです。
これが最初は静かに入るのですが、楽曲の終盤ではオクターブ上がり、ハーモニーも加わり、圧巻の盛り上がりを見せます。
まるで悲鳴を上げるかの如く、壮絶に堕ちていく。
音楽的演出によって、一場面がより印象深いものになります。
Hush 作曲:小林啓樹
最終ミッションの前半部分の楽曲です。
やはりコーラスを含む楽曲なのですが、特殊な相手と対峙しますのでやや不気味な雰囲気を感じさせる楽曲になっています。
ここでもメインフレーズを用いており、印象付けられます。
Space Elevator 作曲:小林啓樹
最終ミッション後半部分の楽曲です。
例によってシビアな操作性を求められ、手に汗を握りながらプレイすることになります。
そのためか、起伏の少ない落ち着いた楽曲になっております。
しかし、一方では緊張感を助長するかのように、心臓の鼓動を感じさせるパーカッション音が含まれていたりもします。
プレイに必死なのでBGMはなかなか意識できなそうですが、意外と印象に残っている楽曲で、サントラで聴いていてもすぐにゲーム場面が想起されました。
Dark Blue 作曲:小林啓樹
エンディングムービーの楽曲です。
ここはプレイヤーとしては難関ミッションをクリアした直後で、とにかく浸るところなので、楽曲も特に前半部分は控え目になっていますが、後半に向けて「やったんだ!」という気持ちにさせてくれる盛り上がりをみせてくれます。
Epilogue 作曲:小林啓樹
エピローグの楽曲ですが、エンディングテーマ曲のインストゥルメンタル曲になっています。
「エースコンバット」シリーズは、ギターサウンドがまた印象に残り易い印象ですが、今作ではこのような形で使用されており、やはり非常に効果的に作用しております。
pensées 作曲:小林啓樹
エンディングテーマ曲です。
ヴォーカルはソプラノ歌手の盛田麻央さんです。
歌詞の意味は詳しくは分かっていないのですが、モチーフとしてヨーロッパにある実話を使用しているそうです。
登場する女性キャラクターの間にある友情や絆を描かれているようです。
正直なところ初めてこの楽曲をエンディングで聴いたときは、曲調的に「エースコンバット」らしさが無いなと感じ、意外に思える部分が強かったです。
しかし、盛田さんの歌声は聴けば聴くほどに響いてくる感覚があり、まるでキャラクターの心情を全て理解しているかのように感じられます。
ゲーム音楽において、こうしたソプラノ楽曲は新鮮味もあり、今では大変気に入っている楽曲です。
Mimic 作曲:北谷光浩
DLCの楽曲で未プレイのため詳細は分かっていないのですが、プログレッシブな雰囲気もあるロックな楽曲です。
複雑な旋律を奏でる鍵盤の音色が特に印象的ですが、ギターも派手な奏法で盛り立てています。
DLCの楽曲は本編とは方向性が異なっている印象なのですが、新しいサウンドもまた良く感じます。
ベストトラック
Faceless Soldier 作曲:小林啓樹
ミッション9の後半部分の楽曲になります。
男性コーラスとメインフレーズとの掛け合いのような構成になっており、非常に美しいです。
ベストトラックに選定した理由としましては、初めてサントラを聴いたときに最も印象に残った楽曲だからなのですが、それはメインフレーズが最も際立っている楽曲だからだと思っております。
物語終盤の楽曲に注目が集まり易いですが、意外なタイミングで最高な楽曲が収録されているというのがまた好印象です。
まとめ
メインフレーズの多用や、終盤に厚みを増して壮大になって行くというスタイルの楽曲が多く、いよいよシリーズの音楽の方向性が決定的になったのかなという印象を受けるサントラでした。
しかし、そういった中でエンディングテーマ曲の持つ個性だったり、新たなコンポーザー陣の躍動といった、今後の楽しみが益々広がって行くような要素もみられております。
というわけで、サウンド的にも今後の作品が楽しみなので、次世代機でもまた新作が出て欲しいなと期待しております。