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レビュー『鬼滅の刃』挿入歌「竈門炭治郎のうた」

投稿日:2020年12月3日 更新日:

『鬼滅の刃』は、音楽による演出も素晴らしいのを知って欲しい!

作詞:ufotable 作曲:椎名豪 ヴォーカル:中川奈美

突然ですが、私も『鬼滅の刃』という名のビッグウェーブに乗っかってみることにしました。

映画の興行ランキングも国内歴代1位に迫っており、その勢いは留まることを知りません。

「アニメ?ゲームと関係ないじゃん」と思われるかもしれませんが、『鬼滅の刃』につきましては、ある繋がりが存在しております。

当ブログは、関連があるものには首を突っ込んでいくというスタイルを取らせて頂いておりますので、堂々と『鬼滅ブーム』に乗っかって行こうと思います。

『鬼滅の刃』とゲーム音楽を結び付けている存在とは?

わざわざ、こんな下りにしなくてもゲーム音楽ファンの方なら瞬時に理解されているでしょうが、コンポーザーの椎名豪さんの存在によってゲーム音楽と『鬼滅の刃』は結び付いております。

椎名豪さんは現在はフリーのコンポーザーですが、以前はバンダイナムコに所属されており、ゲーム音楽業界においても数々の名作を残されております。

特に「テイルズオブレジェンディア」につきましては、私自身もその素晴らしさに衝撃を受けた作品で、無性に聴きたくなることがあるサントラの1枚になっております。

他にも「エースコンバット3D」「ゴッドイーター」「アイドルマスター」の楽曲も作成されております。

これらの作品は後日レビューするつもりなのですが、『鬼滅の刃』につきましては「ゼノサーガ」でもお馴染みの梶浦由記さんと共に、アニメ及び映画の楽曲を作曲されております。

残念ながらサントラは発売されておらず、情報に乏しいのですが、楽曲の多くは椎名さんが担当されているようです。

更にもう一人、当ブログでご紹介したことのある方との結び付きがあります。

「CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019」に出演されたフュージョンバンドDEZOLVE所属の山本真央樹さんが、アニメ及び映画版『鬼滅の刃』においてドラムを叩かれているのです。

椎名さんに加え、山本さんのドラムの情報を聞きつけた私は、それまであまり関心が向いていなかった『鬼滅の刃』という作品をいよいよ看過できなくなくなったのです。

『鬼滅の刃』と私

楽曲の紹介に入る前に、私がどの程度『鬼滅の刃』という作品に触れているか補足しておきます。

実はブームが到来するずっと以前がら単行本が自宅にありました。

ジャンプ愛好家の家族が、早い段階で『鬼滅の刃』の面白さに気付き、単行本も買っていたのです。

私はと言いますと、マンガやアニメへの関心はあまり高くない方なので、自宅にあるにもかかわらず、単行本を手に取ることはありませんでした。

急に「観てみようかな」と思い至ったのは、映画の公開直後に山本真央樹さんがドラムを叩いているという情報を聞いたのがきっかけです

「映画の前にまずはアニメを見た方が良い」という友人の助言の元、まずはアニメを全話見ました。

そして、続きが気になり単行本も手に取り、読み終わったタイミングで映画を観に行きました。

単行本の最終巻の発売がまだ(もう間もなく発売!)のため、実は物語の結末を知りません。

世の中には、ラストボス直前にゲームを止めてしまう人が多く居らっしゃるそうですが、まるでそのような状況に陥っているかのようです。

ともあれ、一応のところアニメ、映画と単行本で複数回シナリオは追っている形になります。

特に「竈門炭治郎のうた」が使用されているアニメの第19話につきましては、複数回視聴しているという状況になります。

正直なところ流行もののレビュー記事を書くことは怖れも多いのですが、トライすることも大切だと何処かで耳にしたことがありますので、いざ書いていこうと思います。

「竈門炭治郎のうた」の旋律

まず、作曲の方から触れていきます。

椎名豪さんが作曲されておりますが、椎名さんの楽曲は大きく分けてロックテイストの楽曲重厚なオーケストラルサウンドの2種類があると個人的に捉えております。

一概に言えるわけではないのですが、前者は「ゴッドイーター」、後者は「テイルズオブレジェンディア」といったところでしょうか。

「竈門炭治郎のうた」はヴォーカル曲ではあるのですが、楽曲アレンジはオーケストラルサウンドになっており、ストリングス(ヴァイオリン等の弦楽器)を中心とした壮大なサウンドがヴォーカルの後ろで鳴り響いております。

旋律に関しては複雑なものではなく、シンプルなメロディーになっている印象です。

しかし、特徴的に感じられる箇所もあります。

それはメロの部分なのですが、1節ごとに最後の音が下がる、上がるを繰り返しております。

全ての節が下がるラインであった方が自然な旋律に感じられる印象なのですが、2節目と4節目はあえて上げているのではないでしょうか。

加えて、メロディーライン全体で見ますと、徐々に音の高さは高くなって行っています。

どういうことかと言いますと、これらの旋律的特徴は、竈門炭治郎の感情が表現されていると思うのです。

消えることの無い過去の悲しみが、抑えきれない想いが、この旋律に込められているのではないでしょうか。

更に加えますと、節の切れ目が明確で、途切れ途切れな印象を持つこのメロ部分は、一音一音を噛みしめるようにゆったりと聴かせてくる印象を抱きます。

それは、どんなに思い出したくない嫌な過去であっても、それを受け止めた上で一歩一歩やるべきことをやりながら自身の道を進んでいくという、炭治郎の強さにも感じられます。

矛盾しているようですが、人の心というのは意外とこういうものなのかもしれません。

感情が溢れてしまうことも事もある「繊細さ」と、前に進む「強さ」が共存しているのです。

しかし、サビに向けて「強さ」の方がより前に出ていくことになります。

オーケストラルサウンドの力強さによる圧巻のダイナミクスが、それを理解させてくれます。

次に、楽曲の構成について一癖あるのも特徴的だと思います。

こちらの楽曲は、ヴォーカル曲でよくみられる「Aメロ」、「Bメロ」、「サビ」、「Aメロ」、「Bメロ」、「サビ」、「Cメロ」、「サビ」といったシンプルな構成ではありません。

「Aメロ」、「Aメロ」、「Bメロ」、「サビ」、「サビ」、「Aメロ」、「Bメロ」、「サビ」という構成になっております。

これは、第19話のアニメ描写に合わせるための演出的要素がそうさせているのだと思います。

アニメは主に回想シーンと戦いのシーンで構成されており、前者ではメロ部分を、後者ではサビ部分をあてております。

このような演出的要素で楽曲を考えますと、「歌」というものを意識づけて作られているというよりも、「BGMの延長線上にある歌」として意識づけて作られているような印象を持ちます。

椎名さんは「アイドルマスター」でヴォーカル曲も作曲されておりますが、この辺りの特徴は、BGMの作曲家としての側面の方を強く感じられます。

第19話はアニメの中でも特に評判となっているようですが、こうした音楽による演出も間違いなく効果的に働いているのではないかと思います。

「竈門炭治郎のうた」のヴォーカル

次にヴォーカルなのですが、歌唱されているのは中川奈美さんです。

声優であり歌手である中川さんは、ゲーム音楽作品においてもコーラスを担っている作品があるのですが、私が所持している作品で言いますと「ドラッグオンドラグーン3」のBGMで歌われています。

気になって久々に聴いてみたのですが、歌唱方法も異なっており、ちょっと意外な感じがしました。

「竈門炭治郎のうた」では、透明感のある声を際立たせて歌唱されており、技術的には、メロ部分では歌詞をあえて聴き取りづらく、消え入りそうな発声をされており、炭治郎の身に起こった過去の悲しみの感情を表現されているかのようです。

また、全体としてはビブラート等の細かな技術は控えめで、素直に歌われているのが印象的で、それは炭治郎の純真さを表現されているのではないでしょうか。

消え入りそうな導入部分からサビに入ると俄然力強くなり、オーケストラサウンドもそれを盛り立てていきます。

これは正に、炭治郎のもつ強さそのものとして捉えることができます。

ところで、素朴な疑問として「男性キャラクターの心情の歌をなぜ女性が歌っているのか」というのは気になってきます。

曲名だけを見ますと、炭治郎役の声優である花江夏樹さんが歌っているのを想像する方もいらっしゃるかもしれません。

これは私の偏見かもしれませんが、女性ヴォーカルの方が感情の変化、すなわち悲しみが溢れてしまうメロ部分と、力強く前に進むサビ部分の変化が捉え易いかなという印象は持ちました。

感情表現の美しさというところで、個人的には女性ヴォーカルというところを受け入れ易く感じました。

「竈門炭治郎のうた」の歌詞

作詞者は、「unfotable」となっておりますが、この名前は人物名ではなく、アニメ制作会社の名前です。

おそらく、「unfotable」内の複数の方々が作詞に関わっているのではと想像されます。

そうなりますと、ますます演出部分に特化した楽曲であるというのが垣間見えます。

歌詞についてはストレートで伝わり易い表現が多い印象なのですが、アニメのシーンに視聴者が感情移入し易いよう、あえてそのようにしているのではないかと思います。

詳細につきましては、例によって歌詞考察記事にトライしてみたいと思っておりますので、後日触れようと考えております。

まとめ

実はこの楽曲で私が最も気になったのは「竈門炭治郎のうた」という曲名です。

「〇〇のうた」という表現は、非常にシンプルで素直なタイトルの付け方だと思うのです。

実はそこに少し違和感も覚えたりもしたのですが、改めて楽曲を聴いてみますと印象が変わりました。

旋律や歌詞のシンプルさが、「○○のうた」という曲名にしっくりくるようになったのです。

加えて、竈門炭治郎というキャラクターの真っすぐさというのがこの曲名に掛かっているような印象があります。

すなわち、「竈門炭治郎のうた」は、その曲名の通り、竈門炭治郎というキャラクターの想いを歌にした楽曲なのでしょう。

そして、こうした楽曲をアニメの重要なシーンに演出として挿入されているのは斬新に感じられました。

炭治郎が声に出して言う言葉や、目で見て分かる振る舞いだけでなく、その内面までもが歌を通じて視聴者の耳に入ってくるわけです。

それも、歌詞や旋律、楽曲構成、アレンジ、歌唱方法といったあらゆる方法で訴えかけてくるのです。

これだけ素晴らしい演出ですので、視聴者が炭治郎の姿に強く惹きつけられるのは、当然なのではないでしょうか。

物語の続きはアニメになるのか映画になるのか分かりませんが、音楽による演出につきましても非常に楽しみにしております。

声やアニメーションに注目が集まり易いのは分かるのですが、音楽に対しても多くの方の注目が集まることを期待しております。

 

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