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レビュー「希求の丘」 / オオフジツボ

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ここには「求めている音」がきっとある!

ギター:太田光宏 アコーディオン:藤野由佳 バイオリン:壷井彰久

『クロノクロス』20周年ライブツアーの参加アーティストを追いかけた結果辿り着いたオオフジツボですが、CDのご紹介するのはこれで3枚目となります。

先日、レコ発ライブに参戦しましたので、リリースされたばかりの4thアルバム「希求の丘」をひとまず紹介させて頂こうと思います。

CDのご購入は、壷井彰久さんの通販サイトから可能となっております。

アルバムの全体像

全11曲、収録時間は64分です。

アルバムとしては4枚目で、そのリリースは実に5年ぶりとなります。

とはいえ、これはあくまでもスタジオ収録のオリジナルアルバムに限った話になります。

例えばライブ音源をCD化した作品は私が先日レビュー記事を書いた作品も含め6枚もリリースされています。

さらには、ゲーム音楽愛好家の間では「FFCC」のコンポーザーとして有名な谷岡久美さんや、ヴォーカリストのRitaさんとコラボして制作されたアルバムもリリースされています。

その他にもコンセプトアルバムもリリースされていますので、とにかく非常に多くのCDが存在しています。

「希求の丘」というアルバムタイトルに込められている想いは2つあるそうです。

1つは「希求」に関するもので、「リスナーの皆が、そして私たちが求めている音はここにある」という想いです。

もう1つは「丘」に関するもので、「これまでもいくつか越えてきたけれども、この先も壁を越えていこう」という想いです。

あえて1つにまとめるのであれば、「求めている音はここにあるのだけれど、ここをさらに越えていこう」ということでしょうか。

ミュージシャンとしての決意が感じられるアルバムタイトルになります。

実際のところレコーディングは大変過酷なものだったようです。

3人それぞれが求める演奏を追求しながらの収録となったそうですが、その求めるものはお互いに大変なレベルのものだったのは容易に想像がつきます。

お話を聞いた限りでは、レコーディング中に時には衝突したりもしたかもしれませんが、その先に3人が納得できるような納得できる音があったのでしょう。

今作はトラディショナルな楽曲はメドレー形式の1トラックのみですが、3人それぞれが作曲した楽曲がバランス良く収録されているのは今までと変わりません。

太田さんは暖かみのある楽曲が多く、藤野さんは季節や情景を描いたような楽曲が多く、壷井さんはテクニカルで派手さのある楽曲が比較的多いかなという印象を持ちました。

かつてライブで「未発表曲」として演奏された楽曲が当時はタイトル未定だった楽曲も数曲収録されております。

なお、楽曲のストックはまだまだありそうで、今後のアルバムも楽しみです。

収録曲

1.on the ocean(作曲:藤野由佳)

2.POTTER set(作曲:藤野由佳、etc)

3.Home(作曲:太田光宏)

4.はるならい(作曲:藤野由佳)

5.オリオンとシリウス(作曲:壷井彰久)

6.遠すぎた星の夕暮れ(作曲:壷井彰久)

7.Standing Bar(作曲:太田光宏)

8.雪の日(作曲:藤野由佳)

9.Bohemian Vampire Bat(作曲:壷井彰久)

10.  祈り(作曲:太田光宏)

11.  送春(作曲:藤野由佳)

1.on the ocean


藤野さん作曲です。

オープニングのギターに被せるアコーディオンの音色に波音を感じさせます。

そこに今度はバイオリンが入ってきて、その旋律には一瞬の”間”があります。

まるでそれは波音が消える瞬間のような趣です。

ただ、終始穏やかな海の風景ではなく、自然の持つ荒々しさも感じられたりと楽曲の表情は様々です。

あるいは海が近くなったり、遠くなったり、中に入ってみたり、そんな海との距離感に伴う変化なのかもしれません。

海を眺めながら聴きたい楽曲で、旅のお供にしたいと思います。

 

2.POTTER set


3つの楽曲のメドレー形式になっており、藤野さんの楽曲と2名のスコットランド人の楽曲が組み合わさっています。

いずれも踊り出したくなるようなリズムの心地良さがあり、個人的には特に1曲目の裏打ちの旋律の部分が好きです。

もしかしたら本当にダンスミュージックなのかな?と思い、伝統的なスコティッシュダンスについて調べてみたのですが、使用されている楽曲はもっとスローテンポのものでした。

おそらく、藤野さんの楽曲以外の2曲はトラディショナルな楽曲なのではないかと思うのですが、そういった楽曲に触れてみますと音楽的知識が欲しくなってきます。

3.Home


太田さん作曲です。

こちらの楽曲も情景を思い浮かべてしまいます。

序盤の静かな箇所は夜家路についており、その後は急にパッと家庭の明かりが広がるような印象を持ちます。

そして、また静かになると暖かい布団に入ったようなイメージが浮かびます。

アコースティックギターを活かした暖かみのある音色で奏でる優しい旋律が素敵な楽曲です。

4.はるならい


藤野さん作曲です。

「はるならい」とは漢字で書くと「春北風」となります。

季節の変わり目の冷たい風ですが、何処か穏やかさも感じるような情景がこちらの楽曲の旋律からも漂っています。

やはり藤野さんがアコーディオンで風を思わせるフレーズを鳴らしている箇所があります。

波もそうでしたが、アコーディオンという楽器はこういった表現もできる楽器なのだなと気付かされました。

5.オリオンとシリウス


壷井さん作曲です。

タイトルはどちらも天体用語です。

シリウスというのはおおいず座の最も明るい星で、オリオン座の隣に位置しています。

というわけで星空を思い浮かべながら聴くのがこの楽曲の嗜み方ではあるのですが、残念ながらタイトルは後付け…

なんて要らない情報は置いておきまして、星座同士が追いかけっこしているような情景だったり、澄んだ空気感だったりをイメージさせます。

個人的にはシンプルに主旋律が美して、繰り返し聴くことになった楽曲でした。

短いフレーズの繰り返しという側面もあるのですが、初めはギターで、次はバイオリンで、といくつかのバリエーションで聴かせてくれます。

途中ギターの音が止むというのも印象的で、アコースティックなギターサウンドが好きで好きでたまらない私でも「ここも良いな」と思わせるくらいでした。

6.遠すぎた星の夕暮れ


壷井さん作曲です。

こちらの楽曲には壷井さんの作った設定があるそうです。

主人公は太田さんで、長い歳月地球を離れて遠い星に辿り着いた太田さんがその遠さから帰ることができなくなり、夕暮れを迎えて…

確かそんな感じの設定でした。

穏やかさの中に不気味な旋律や和音が交えられており、美しい風景と心の不安のようなものが入り混じっている印象です。

7.Standing Bar


太田さん作曲です。

「立ち飲み屋」という意味のタイトルです。

絶望的な夕暮れを迎えた後の立ち飲み屋というのが、なんとも歪なのですが、それがまた良かったりもします。

実際にバーで掛かっていそうだなと感じさせられるのですが、楽曲のどの要素がそう感じさせるのかと考えるとなかなか難しいです。

ただ、ギターの奏法において歯切れの良さと言いますか、鋭さを感じさせられるのがこの楽曲の最大の特徴かなとは感じましたので、そこにちょっと夜の洒落た雰囲気を覚えました。

8.雪の日


藤野さん作曲です。

こちらの楽曲はライブCD「オオフジツボ探検記4」のボーナストラックとして収録されていたので、当ブログでは既に1度触れている楽曲になります。

その際は「雪の日」の光景が目に浮かぶような静けさを感じる楽曲だと書いたのですが、聴き返してみてもやはり凛々とした雰囲気が前面に出てきます。

静かでゆったりとした音楽的表現が用いられておりますが、やはりアコーディオンが、しとしとと舞い落ちる雪の音を奏でているような印象があります。

9.Bohemian Vampire Bat


壷井さん作曲です。

直訳を試みますと「自由奔放な吸血鬼のコウモリ」といったところでしょうか。

タイトルを見ただけで壷井さんのバイオリンのようなある種の攻撃性を感じられ、壷井さんらしさを覚えます。

そして、想像通り切れ味鋭い壷井さんのバイオリンソロを堪能できるトラックになっており、壷井さん独自の奏法に酔いしれることができます。

10.  祈り


太田さん作曲です。

こちらの楽曲も優しくメロディアスな旋律になっています。

祈りを感じさせる静けさもあります。

どんな祈りなのだろうと考えてしまうのですが、このような暖かみがあると、誰かの幸せを祈っているように感じますので、大切な人の顔を思い浮かべながら聴きたい楽曲です。

11.  送春


藤野さん作曲です。

東京都「アートにエールを!東京プロジェクト」への参加作品とのことです。

アルバム2曲目の「春」になります。

こちらも季節の移ろいのタイミングですが、「はるならい」は冬から春に、「送春」は春から夏に変わる頃の楽曲ですので時期は大きく異なります。

こんな話をしていますと「夏の終わり」を題材にした藤野さんの楽曲も聴きたくなります。

初秋の長雨を意味する「秋霖」という楽曲はコンセプトアルバムに収録されております。

話が逸れましたが、こちらの楽曲は夏の険しさは感じさせないので、そろそろ梅雨を迎えるような時期なのかもしれません。

アコーディオンの3連符が続く箇所に春の暖かみだったり、しとしと雨の予感だったりを印象付けられます。

まとめ

今回の作品を聴いたことで、3人の作曲的な特徴だったり、それぞれの楽器の持つ特徴も感じ取ることができました。

オオフジツボのアルバム作品全般に言えることなのかもしれませんが、どの楽曲も聴く度に発見があるような奥深さがあり、演奏技術の高さも相まって何度も繰り返し聴きたくなります。

私はまだ聴いていない作品がたくさあるので、オオフジツボの「求めている音」についての言及がまだ出来ないところではあります。

しかし、少なくとも3人の融合性だったり、情景を想起させる音の数々といった点において、私はそれを感じ取った気がしました。

今後も他のアルバム作品やライブ音源を聴き、私自身の「求めている音」についても考えていこうと思いました。

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