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レビュー「鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編 」オリジナルサウンドトラック

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サントラをあまり聴いたことのない方でも楽しめる豪華なサウンド!

コンポーザー:椎名豪、梶浦由記

今回はゲームサントラではないのですが、ゲーム音楽においても著名な椎名豪さんを中心にサウンドを制作されましたアニメ「鬼滅の刃」のサントラをご紹介します。

なお、私が「鬼滅の刃」のサウンドを聴くに至った経緯の詳細は「竈門炭治郎のうた」の歌詞考察記事をご参照頂ければと思います。

サントラの全体像

ディスク2枚組で楽曲数は42曲、収録時間は85分となっております。

これは個人的には意外なボリュームの少なさに感じました。

というのも、アニメは全26話にわたっており、この楽曲数に収まっているのかという疑問があるからです。

調べてみますと、実際のところ椎名豪さんが作曲された楽曲は、全てがアニメで使用されているかどうかはともかく、サントラ収録曲数の10倍以上に及んでいるそうです(Wikipedia参照)。

とはいえ、オープニングやエンディング曲はもちろん、挿入歌やキャラクターのテーマ楽曲、戦闘曲といった重要楽曲はほぼ収録されており、実際に聴いてみるとボリューム不足は感じさせません。

しかし、未収録曲として梶浦由記さん作曲のメインテーマ曲が意外な収録漏れとなっております。

コンポーザーは既にお名前を出していますが、椎名豪さんと梶浦由記さんです。

どの楽曲がお二人のうちどちらの作曲なのかは、実はトラック名で見分けることができます。

日本語のトラック名は椎名豪さん、英語のトラック名は梶浦由記さんの楽曲となっているので分かり易いです(※ただし、オープニング曲「紅蓮華」の作曲は草野華余子さんです)。

意図的なのかどうかは分かりませんが、聴く方としては作曲者という大変重要な情報が整理し易く、有難いです。

さて、肝心の音楽性の部分における全体的な印象はと言いますと、正直なところ1つの特徴として挙げるのはなかなか難しいです。

その辺りは音楽性が多彩な椎名豪さん”らしさ”とも言えるのではないかと思います。

むしろ、それこそが特徴ではあるのですが、ひとまずベースとしてあるのはオーケストラサウンドというところになります。

奥行きの深い非常にゴージャスなオーケストラサウンドに感じられます。

そのオーケストラサウンドに加わってくるものの1つが、椎名さんが他作品でも聴かせてくれていますが、ロックサウンドになります。

エレキトリックなギターやベース、そしてドラムスのサウンドが加わる楽曲があるのですが、前に出しゃばるのではなく、オーケストラサウンドの良さを消さない範囲での融合を果たしております。

そして、今作ならではの特徴と言えそうなのが和楽器サウンドの存在です。

アニメの舞台が日本ということで、やはり和楽器が入ってくるのは世界観を構築するうえで非常に効果的に働きます。

和楽器とオーケストラサウンドとの調和の素晴らしさは過去にも例えば「大神」や「朧村正」等の作品で実証されている通りです。

その素晴らしさを「鬼滅の刃」という話題作に取り入れられることで多くの方が耳にするというのは個人的に感慨深いものがあります。

さらにもう1つ加わるのが、女性ヴォーカルによるコーラスサウンドです。

特徴的なのは声質、そしてビブラートを効かせたスキャットのような歌唱方法で、まずはそこに耳が行きます。

加えて、タイミング的な特徴もあります。

フレーズが終わった後に一瞬の間をおいて、ヴォーカルが入ってくることがあります。

しかも、ほかの音は鳴りがやや弱くなったりします。

これらの特徴から私は、鬼が出現したときのような独特な空気感を感じ取ったりしました。

トップレート曲

※ 背景色付きは☆5、その他は☆4

[DISC1]

家族 -OST ver.-

brace up and run!

survive and get the blade, boy

鬼殺隊 -OST ver.-

錆兎 出現

朱紗丸と矢琶羽との戦闘

我妻善逸

嘴平伊之助

水の呼吸

[DISC2]

霹靂一閃 六連~鬼殺隊として

水の呼吸発動 -OST ver.-

累と対峙

胡蝶しのぶ 出現 -OST ver.-

冨岡義勇のテーマ~炭治郎の戦い~鬼殺隊

生生流転 -OST ver.-

竈門炭治郎のうた -OST ver.-

柱のテーマ -OST ver.-

栗花落カナヲと対決

新たなる任務~無限列車に向かって

家族 -OST ver.-


家族の暖かみを分かり易く感じさせられる、主旋律が前面に出た楽曲です。

アニメのサウンドについては全く分からないのですが、こうした旋律が明白な楽曲というよりも、あくまでもバックグランドミュージックとして楽曲が前に出てこないイメージをしておりました。

しかし、楽曲のタイプとしてはゲーム音楽に多い旋律が前面に出ているものだったので、「このサントラもそういう方向性なんだな」という安心感を覚えました。

気になるのは、笛の音色なのですが、何の楽器なのかが私の浅知恵では分からないでいます。

尺八とは明らかに異なる高音域ではあるのですが、だからと言ってティンホイッスルであるわけもありません。

和楽器系統の笛の音色というところで考えますと、お祭りのイメージが強いですが、篠笛のような気もします。

brace up and run!


楽曲名が英語ですので、上述の通り梶浦由記さんの楽曲になります。

尺八の音色が中心になっており、時折女性コーラスが混ざります。

すなわち、コンポーザーは違えども、楽曲の構成だったり音色といったところで統一性がもたれております。

作曲者名の情報が無ければ、椎名さんの楽曲に多く触れてきた私でも、どちらの楽曲なのか判別が容易ではありません。

朱紗丸と矢琶羽との戦闘


この戦闘シーンはアニメを見ていて印象に残ったシーンの1つです。

2体の鬼のキャラクター性だったり、能力的な個性も良かったですし、「強かったけど実は…」というストーリー上の展開も印象的でした。

この楽曲の良さは、敵の得体のしれない能力への不気味さを感じさせられる点と、後半になると勇敢さを取り戻したような心情を感じさせられる点です。

 

我妻善逸


屈指の人気キャラクターの一人である善逸のテーマ曲です。

イメージ通りのコミカル性が前面に出た楽曲で、裏打ちのリズムで刻まれる合いの手のような女性コーラスが印象深いです。

欲を言えば、善逸というキャラクターはコミカルさだけが描かれているわけではなく、だからこそ人気があるわけなので、そういった部分をこの楽曲でも感じたかったかなとは思います。

嘴平伊之助


伊之助というキャラクターの私の印象は、向かっている方向が正しいのかはさておき、とにかく猪突猛進するのですが、その背景には繊細さも隠されているキャラクターという印象を持っています。

こちらの楽曲は、猪突猛進というよりは、勇敢さを感じさせる旋律で、ちょっと違和感も覚えます。

一方で楽曲としては和楽器やコーラス、そして時折ロックサンドまで入ってくる非常に豪華なものとなっており、重厚性も感じられ非常に聴き応えがあります。

水の呼吸


水を感じさせる高音域の鍵盤の音色から始まり、勇ましくもメロディアスな主旋律、そしてストリングスやコーラスが加わることにより、楽曲にも力が漲るかのように重厚に展開していきます。

強敵に立ち向かうという心情的な昂りも感じさせられる良い曲だなと感じました。

胡蝶しのぶ 出現 -OST ver.-


屈指の人気キャラクターである胡蝶しのぶの初登場シーンということで、非常に印象深いシーンとなっている方が多いのではないかと思います。

「柱」という存在は炭治郎にとっても視聴者にとってもこの段階ではまだ得体のが知れず、かつこれまで登場の少なかった女性キャラクターであるというところで凄まじい存在感がありました。

一方で、やっと「柱」が来てくれたという安堵感だったり、強きものからの抱擁感も覚えるので私自身も強く印象に残っております。

こちらは、そのようなシーンの楽曲になるわけですが、女性ヴォーカルにギターの伴奏というシンプルな構成になっており、かつ36秒と短いトラックになっております。

シンプルさと短さというところに返って上述のような存在感だったり、安堵感、抱擁感などが凝縮されているように感じられます。

冨岡義勇のテーマ~炭治郎の戦い~鬼殺隊


メドレー形式のトラックですが、ここで富岡さんのテーマ曲が入っております。

富岡さんというキャラクターの印象は、優しさがベースとなっているように感じるのですが、不器用なので誤解を招き易かったり、共感を得られにくかったりするキャラクターという印象です。

主旋律の勇ましく音域が上がったと思ったら、次のフレーズではあまり上がらないという旋律構成に富岡さんの不器用さを感じさせられ、そこが個人的に気に入っています。

竈門炭治郎のうた -OST ver.-


以前にも等ブログで触れている楽曲ですが、改めて聴いてみますと透明感のある中川奈美さんのヴォーカルとピアノ、和楽器の組み合わせが素晴らしく、徐々にオーケストラが入ってくることによる楽曲のダイナミクスも素晴らしいです。

演出音楽としても凄いですし、楽曲そのものにも質の高さを感じます。

柱のテーマ -OST ver.-


「柱」らしく、力強く支えるというところで男性ヴォーカルや金管楽器、エレキギターやパーカッション等で構成されています。

個人的には「支える」というところでベース音が効いてたりしたらもっと良いかなと、素人考えですが思ったりもしました。

炭治郎も絡むシーンのせいか、「竈門炭治郎のうた」の旋律も入ってきます。

いつの日か炭治郎も柱レベルの力を付けるのを暗示しているのかなと妄想したりもしました。

栗花落カナヲと対決


カナヲのテーマ曲とうわけではなく、戦闘曲でもありません。

炭治郎の気の焦りや、カナヲの俊敏な動きを思わせるような楽曲となっております。

「竈門炭治郎のうた」のような旋律も入ってきますし、どちらかというと炭治郎目線での楽曲なのかなと思います。

新たなる任務~無限列車に向かって


シーンの描写というよりは、ストーリーの続きへの視聴者の期待を高めるような意味合いでの楽曲という立ち位置だと思います。

楽曲が盛り上がったところで終わるのである種の余韻が残るので、聴いている方としては期待感をしばらく仕舞っておけるような感覚になります。

ベストトラック

鬼殺隊 -OST ver.-


金管楽器やコーラスが絶妙に絡み、非常に力強く、鬼殺隊の勇ましさを大いに感じられます。

かつメロディアスなので、良さが分かり易く、私自身も最も気に入っている楽曲です。

鬼に立ち向かう彼らの姿こそが「鬼滅の刃」の世界観を象徴しており、重要な楽曲だと感じております。

迷うことなくベストトラックとしました。

まとめ

社会現象を引き起こしたアニメ作品ということで、サントラという音楽をあまり聴いたことのない方々も関心を示す作品だと思いますが、そうした方々にも十分に楽しめるサントラなのではないかと思います。

オープニングやエンディング、挿入歌というところはもちろん楽しめる部分だと思うのですが、その他の楽曲でもメロディアスな楽曲も多いですし、オーケストラや和楽器、コーラスで織りなす音の広がりというのは普段サントラを聴かない人の方が返って大きな感動を覚えるかもしれません。

特に、10代とかの多感な人たちに是非聴いてみて欲しいなと思います。

そして、このような作品を通じて、サントラというジャンルの良さというものが、より多くの人に伝わっていけば嬉しく思います。

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