選曲、演奏、アレンジの全てが素晴らしい名盤!
演奏者:江草啓太(ピアコン1号)、中山博之(ピアコン2号)、甲田雅人(ピアコン3号)
今回もピアコンシリーズのレビューを続けます。
植松伸夫さん率いるdog years recordsからリリースされたレトロゲーム音楽のピアノアレンジ盤、「ピアコンシリーズ」の2作目になります。
CDの全体像
前作のピアニストは江草啓太さん1名のみでしたが、今作は2名のピアニストが加わっております。
自称「ショパン中山」と銘打つ中山博之さんは、「ブルードラゴン」や「ロストオデッセイ」の楽曲のオーケストラアレンジも手掛けていらっしゃいます。
後に「PIANO OPERA Final Fantasyシリーズ」でもアレンジ、演奏をされております。
もう一人はちょっと意外な名前で、甲田雅人さんです。
「モンハンシリーズ」や「デビルメイクライシリーズ」のコンポーザーということで、お馴染みの方が多いと思います。
「意外」と申しましたのは、カプコンの作曲家というイメージが強いので、ピアニストとして植松さんと仕事をされるというのがちょっと意外に思えたといったところです。
こちらのCDは、以上3名のピアニストがそれぞれ編曲し、好きなように弾くというスタンスになっております。
選曲含め、企画として面白いですし、演奏や編曲のクオリティも高いです。
故に私自身、数あるピアノアレンジ盤の中でも、特に気に入っているCDの1枚になります。
前作も非常に良かったのですが、3名のピアニストそれぞれが魅力的で、繰り返し聴いてしまいます。
なんと言っても3名それぞれが楽しみながら、やりたいことをやっているという感じが出ており、聴いているこちら側としても楽しい気分になり、非常に好感が持てます。
収録曲
1.スぺランカーメドレー 「スぺランカー」より (編曲、演奏:江草啓太)
2.スタートデモ ~ BGM1 「戦場の狼」より(編曲、演奏:甲田雅人)
3.オープニングテーマ 「ウィザードリィ」より(編曲、演奏:中山博之)
4.スタートデモ ~ 1st & 2nd BGM 「魔界村」より(編曲、演奏:中山博之)
5.OPA-OPA 「FANTASY ZONE」より(編曲、演奏:江草啓太)
6.水の巫女エリア 「FINAL FANTASY III」より(編曲、演奏:中山博之)
7.VampireKiller 「悪魔城ドラキュラ」より(編曲、演奏:甲田雅人)
8.ステージ1 「迷宮組曲」より(編曲、演奏:江草啓太)
9.ステージ1BGM 「がんばれゴエモン!からくり道中」より(編曲、演奏:中山博之)
10.ドラゴンスレイヤーIV 「ドラゴンスレイヤーIV」より(編曲、演奏:江草啓太)
1.スぺランカーメドレー 「スぺランカー」より
演奏とアレンジは江草さんです。
主人公があり得ないくらいにひ弱なことで有名なゲーム、スペランカーからのメドレー楽曲となっております。
オープニングからステージ曲へと原曲に近いアレンジで進みますが、そこから見事なソロへと繋がっていきます。
原曲の音も取り入れながらの素晴らしい展開です。
ゲームオーバーからタイトルに戻るとか、死んでばかりとか、もっとコミカルにアレンジした方が受けは良かったかもしれません。
しかし、ピアノアレンジとして聴くのであれば、このような聴き応えのあるアレンジの方が個人的には良かったかなと思いました。
2.スタートデモ ~ BGM1 「戦場の狼」より
演奏とアレンジは甲田さんです。
同じフレーズを表情を変えて何度もループするという、ピアコンシリーズらしい魅力を感じ取れるトラックです。
恥ずかしながらこちらのゲームタイトルは存じ上げないのですが、それでも聴き入ってしまいました。
3.オープニングテーマ 「ウィザードリィ」より
演奏とアレンジはショパン中山さんです。
中山さんはクラシックがバックっグラウンドにあるためか、クラシカルなアレンジになっています。
ピアコンシリーズには珍しく、ちょっと一癖あり、馴染みにくさは感じます。
聴いていくと味が出てくるタイプのトラックです。
4.スタートデモ ~ 1st & 2nd BGM 「魔界村」より
演奏とアレンジはショパン中山さんです。
実は、お近くで直接演奏を聴けるという夢のような体験をさせて頂いたことがあるのですが、ご本人も「何故こんな難しいアレンジにしてしまったのだろう」とおっしゃっておりました。
真っ黒けな譜面で細かい音符だらけなのですが、その割には聴き易さがあります。
私のお気に入りのトラックの1つです。
5.OPA-OPA 「FANTASY ZONE」より
演奏と編曲は江草さんです。
曲構成的にはスペランカーと似ているかなと感じました。
原曲に忠実な奮起の箇所もソロも非常に魅力的です。
リズムの良さと絶妙な和音で、ピアノソロなのに身体を上下に揺すってリズムを取ってしまいます。
特に終盤の変調してからフィニッシュまでの流れが最高です。
6.水の巫女エリア 「FINAL FANTASY III」より
演奏とアレンジはショパン中山さんです。
これまた選曲が良いですね。
FFからあえてこの曲を持ってくるってのが嬉しいです。
原曲はとにかく恐ろしいくらいに美しい旋律を持っており、ダイナミクスだったり音楽的表現と言う部分においても、演奏やアレンジのやり甲斐のある楽曲だと思います。
左手のきめ細やかな動きの中、右手の主旋律のグイグイと盛り上げられていく様は圧巻です。
7.VampireKiller 「悪魔城ドラキュラ」より
演奏とアレンジは甲田さんです。
こちらの楽曲は、バンドアレンジが非常に映える楽曲なので、ピアノソロだとどうなんだろう?といったところに注目して聴きました。
正直な感想としては、楽曲の良さをピアノで活かすのは難しいなとも思ったのですが、後半のソロから主旋律に戻っていく箇所に聴きごたえも感じました。
左手の伴奏が難しそうですが、演奏としても安定感を感じさせます。
8.ステージ1 「迷宮組曲」より
演奏とアレンジは江草さんです。
聴いていて、浮いては沈むような浮遊感を覚えます。
柔らかく、何とも言えない心地良さもあります。
これはもう、演奏技術の賜物なのではないでしょうか。
特に2ループ目が素晴らしいです。
9.ステージ1BGM 「がんばれゴエモン!からくり道中」より
演奏とアレンジはショパン中山さんです。
ダイナミクスが良い感じです。
中山さんのアレンジはオクターブだったり高音域だったりの活かし方が印象的に感じます。
この辺りの感覚は他のトラックでも感じられますが、特にこちらのトラックで強く感じられます。
10.ドラゴンスレイヤーIV 「ドラゴンスレイヤーIV」より
こちらのトラックは衝撃的でした。
全く知らないゲームの全く知らない曲なのですが、こんなに素晴らしい曲があるのかという衝撃を感じました。
原曲はもちろん素晴らしいのですが、ピアノアレンジ映えも凄いです。
もう、とにかく多くの人に聴いてみて欲しいと考えてしまいます。
メドレー形式ですが、曲の繋ぎ方がまた素晴らしいです。
まとめ
レトロゲームの楽曲ということもあり、知らないゲームの楽曲もあるとは思います。
しかし、「知らない曲だから」といった先入観を持たず、とにかく聴いてみて欲しいです。
知らなくても気に入ってしまうトラックがきっとあると思います。
選曲の良さだったり、3名の素晴らしい演奏やアレンジだたりと、粋な企画だと思います。
それだけに、シリーズの続編がなく、2作しかリリースされていないのが勿体無くてたまりません。
是非3枚目を!という声も挙げたいのですが、そのためにもまずは多くの方にこちらの作品を聴いて頂きたいなと思っております。