選曲にはやや疑問も、新しい発見もあるチップチューンアレンジ盤!
編曲:(S_S)、ajiponn、Xinon、mochilon、Far East Recording
今回も20周年を記念してFF9関連の作品になります。
なお、FF9関連のレビュー記事はこちらで最後になります。
リバイバルサントラも楽しみにしており既に予約しているのですが、作品の性格上、リバイバルシリーズはレビュー予定がありませんのでご了承下さい。
CDの全体像
全10曲収録で、収録時間は42分となっております。
賑やかなチップチューンアレンジを長時間聴くというのは、疲れ易い部分があると思います。
ですので、長くは無いのですが程良いボリュームに感じました。
選曲は「FF10 CHIPS」のように「え、その曲を!?」と思うようなサプライズ感は薄い印象です。
アレンジャーは上記の5名の方々になっておりますが、「どうアレンジするのか?」という点については、意外性が薄い分「FF10 CHIPS」程には注目が集まりにくいかもしれません。
また、選曲の中で「グルグ火山」と「プレリュード」については、ちょっと残念に思いました。
確かにFF9で使用されている楽曲ではあるのですが、特に「グルグ火山」は他のナンバリングの楽曲をアレンジして使用された楽曲だからです。
せっかくなので、FF9色の濃い楽曲を選曲して欲しかったなというのが正直なところです。
収録曲
1.いつか帰るところ
2.あの丘を越えて
3.プリマビスタ楽団
4.バトル1~バトル2~ファンファーレ
5.ローズ・オブ・メイ
6.グルグ火山
7.飛空艇 ヒルダガルデ
8.独りじゃない
9.銀竜戦~破滅への使者~最後の闘い
10. プレリュード
1.いつか帰るところ
原曲がシンプルな楽曲ですので、チップチューンアレンジも特に色味を加えるのではなく、音色のみを変更したようなアレンジになっています。
この楽曲のアレンジはちょっと攻め難いところだとは思いますし、1曲目ですのでまずはこういう入り方も良いように感じます。
2.あの丘を越えて
こちらの楽曲は、原曲印象を大きく変えており、チップチューンアレンジの良さを認識し易い素晴らしいアレンジになっていると感じました。
そもそも原曲もアレンジ曲なので、アレンジの重ね掛けということになっているのですが、「そういう曲だったのか!」という発見がありました。
音色が変わることで、実はパーカッション系のリズミカルなアレンジが施されている曲だったんだなということに気付かされたのです。
そのリズミカルさがこちらのチップチューンアレンジでは強調されており、明るく楽しい雰囲気の楽曲に変貌しております。
私は原曲をサントラのベストトラックに挙げたほど好んでいるのですが、こちらのアレンジで聴くのも非常に良いなと感じました。
3.プリマビスタ楽団
基本的にはシンプルなアレンジなのですが、パーカッションの音色だったり、意表を付いた曲の終わり方が印象に残りました。
次のトラックも意識された編曲になっております。
4.バトル1~バトル2~ファンファーレ
「バトル1」の最後、唐突にFF3の「バトル2」に変わります。
そして「あっ、間違えた」と言わんばかりにカセットを入れ替える音が入る演出が加えられています。
そしてFF9の「バトル2」になると思いきや、FF7の「J-E-N-O-V-A」がイントロ等に混在しています。
要するに遊びの要素を多く含んだアレンジになっています。
面白いのは間違いないのです。
しかし、選曲の件もそうですけど「FF9」の楽曲を聴きたいからこちらのCDを手に取っているので、他のナンバリングの楽曲を取り入れる手法は個人的には好印象は持てませんでした。
5.ローズ・オブ・メイ
こちらは比較的攻めた選曲だと思います。
人気曲故に入れたのでしょうが、ピアノの楽曲をチップチューンアレンジするというのは、ピアノの持つ味わい深さが薄れるので単調に聴こえてしまいます。
こちらの楽曲も例外ではなく、単調に感じてしまいました。
しかし、こういう楽曲を収録してこそのチップチューンアレンジだと思いますので、そういう意味では好感を抱きました。
6.グルグ火山
チップチューンらしい元気なアレンジで華やかさがあり、非常に良いアレンジに感じます。
しかし、原曲がそもそもピコピコ音なので、良く聴こえるのはある意味当然と言ったところかもしれません。
ただ、その当たり前を超えるような見事なアレンジに感じます。
選曲としては残念ですが、楽曲自体は気に入っているという、私の中で妙な立ち位置にあるトラックです。
7.飛空艇 ヒルダガルデ
想像よりも派手さの薄いアレンジに感じました。
ビブラートと言って良いのか分かりませんが、主旋律が終始震えています。
個人的に、それによって大空を飛ぶような伸びやかさを失ってしまっているような感覚を覚えてしまいました。
とはいえ、単調にしたら「それもそれで」と思いますで難しいところです。
8.独りじゃない
控えめなアレンジで、チップチューンらしさはあまり無いのですが、原曲に近い雰囲気で聴くことができます。
しかし、「イメージとは異なるな」というのが素直な感想で、特にベース音やパーカッション音に物足りなさを感じてしまいました。
9.銀竜戦~破滅への使者~最後の闘い
ボス戦詰め合わせといった呈ですが、メドレー形式で聴き易いです。
大胆なアレンジは施されておらず、原曲の良さを活かしている印象です。
音の厚みが原曲よりもどうしても薄くなってしまいますが、意外とナチュナルに耳に入ってきます。
10. プレリュード
最後は「Melodies Of Life」と思いきや、こちらを持ってきました。
FF9の楽曲というより、FFシリーズの楽曲なのでやはり選曲には疑問です。
何とも言えない幻想的な楽曲ですが、意外にもチップチューンアレンジでその雰囲気が失われず出されております。
なので、アレンジに関しては素晴らしく感じました。
まとめ
FF9の楽曲への思いが強いためか、少々辛口なレビューになっていまいましたが、新しい発見もあり、聴いてみて良かったなと思わせるCDでした。
チップチューンアレンジの役どころは、やはり「気分転換」にあると思います。
サントラばかり聴いていて「そろそろ何か変わったものが聴きたいな」と思ったときに私は邦楽を聴いたりすることが多いのですが、チップチューンアレンジ盤を選ぶというのも良いなと思いました。
FF9も今年で20周年もファンに愛される作品になりました。
この機会にこちらのCDを手に取ってみるのも良いのではないでしょうか。