音色だけでなく、たくさんの”美しさ”を感じ取れる!
Nabana:須貝知世、中藤有花、梅田千晶(クロノクロスライブ出演者)
『クロノクロス』20周年ライブツアーに出演されたアーティストのことをまだまだまだ知りたい!
というわけで、このシリーズ第8弾となります。
今回はアイリッシュハープの梅田千晶さんが所属するNabanaの作品をご紹介します。
なお、こちらはクロノクロスライブの物販でも販売されていたCDになります。
目次
Nabanaとは?
北欧、アイリッシュ音楽を奏でる3人組のユニットになります。
メンバーの詳細は公式HPを参照して頂きたいのですが、いずれも現地で直接的に伝統音楽を学んでいらっしゃる、エキスパートの方々です。
担当されている楽器は、須貝知世さんがホイッスルとアイリッシュフルート、中藤有花さんがバイオリン、そしてクロノクロスライブファンにはお馴染みですが、梅田千晶さんがアイリッシュハープを担っています。
気になるのはユニット名である「Nanaba」の由来なのですが、やはり現地の言葉に由来していたりするのでしょうか。
アルバムタイトルもそうなのですが、いかにも女性3人組らしい、華やかで美しい印象をもたらしております。
そして、3人で奏でるその音色は、伝統音楽としての魅力のみならず、艶やかな花を思わせるような上品さが漂っています。
アルバムの全体像
全10曲で収録時間は39分となっております。
短いのですが構成楽器の性質上、静かな楽曲がほとんどのため、率直な感想としてアルバム全体としてのダイナミクスというのは、大きくはないなと感じました。
なので、連続して聴く時間としてはこの短めの時間の方が適切だとも感じました。
魅力的に感じるのは女性的な美しさを感じさせる繊細で上品な和音にあると私は感じ取りました。
当然ながら、アイリッシュ等の北欧音楽に基づいた楽曲なのでしょうが、そうした中にも、このメンバーだからこそ表出される良さがあり、それこそが女性的な美しさなのかもしれません。
公式HPには”美しく瑞々しい日本人の感性に溢れている”と書かれております。
”美しく瑞々しい”という言葉に「確かに!」となったのですが、一方で”日本人の感性”というその部分は未熟な私にはまだ感じ取るのが難しかったです。
そこに着目しながら聴くとまた印象が変わってくるかもしれません。
収録曲
1.Maypole
2.窓辺
3.さんぽ
4.月下美人
5.雨のあと
6.白いカノン
7.夜のひつじ
8.Flower Festival
9.こもりうた
10. Holiday`s Morning
1.Maypole / 作曲:Sarah Deere-Jones
早速アイリッシュハープの前奏から入り、一瞬にして瑞々しく美しいこのアルバムの世界へと導かれるような感覚になります。
ホイッスルによる主旋律も非常にメロディアスで、民族音楽に慣れていない人にも聴き易い楽曲なので、オープニングに相応しいなと思いました。
作曲されたのはNabanaのメンバーではなく、Sarah Deere-Jonesという方で、英語が読めない私には情報が得られなかったのですが、著名なハープ奏者の方のようです。
2.窓辺 / 作曲:梅田千晶
41秒の短い楽曲で、梅田さんの独奏曲になります。
「窓辺」というタイトルですが、私は陽ざしが差し込んでいるような朝の窓辺の風景が浮かびました。
時間だったり、天気だったり、その時の心情であったり、思い浮かべる場面はその人によって異なると思います。
是非これらをイメージしながら聴いてみて欲しいです。
3.さんぽ / 作曲:須貝知世
しっとりとしたハープのイントロによるファーストインプレッションは穏やかな散歩風景を思わせます。
しかし、ホイッスルによる主旋律が入ってきます印象が一変します。
断続的な連なっている細やかな旋律となっており、それもフォルテッシモ調で吹かれているので、やや激しい楽曲になっています。
私は「雨足が強くなってきたのかな?」なんていうイメージを持ちました。
4.月下美人 / 作曲:梅田千晶
こちらの主旋律はアイリッシュフルートでしょうか。
その音色が印象的なのですが、こちらの楽曲では中藤さんのバイオリンに加わり、美しい和音を奏でます。
和音の美しさというのは音楽の醍醐味の1つなのかもしれません。
こちらの楽曲のあまりに美しい和音に、そんなことを思いました。
5.雨のあと / 作曲:須貝知世
3トラック目の「散歩」も須貝さんの楽曲で、その旋律の激しさから「雨」を思わせたのですが、こちらの楽曲では雨が止んでいます。
伴奏のハープによる二分音符が、まだ水が屋根から滴り落ちている風景を想像させます。
こちらも風景が鮮明に思い浮かぶ、美しい楽曲だなと感じました。
6.白いカノン
こちらの楽曲は作曲者の表記がないので、Traditional(伝統音楽)のトラックなのでしょう。
私の存じ上げているカノンとも異なります。
タイトルに入っている「白い」という形容詞も気になることろです。
謎の多いトラックですが、次トラックへの布石になっているようです。
7.夜のひつじ
こちらの楽曲には「Traditional」の表記があり、更に作曲者として梅田さんの表記もあります。
伝統音楽に梅田さんが手を加えたような形ででようか。
主旋律は前トラックと同じものになります。
ということは、前トラックもやはりTraditional楽曲ということで間違いなさそうです。
前トラックとの違いはバイオリンがユニゾンで加わっている点です。
そして、音の強弱的にもフォルテッシモで力強くなっています。
「夜のひつじ」ということは「眠れない夜」のイメージでしょうか。
同じフレーズが繰り返されるので、羊がたくさん出てくる不穏な光景が目に浮かびます。
8.Flower Festival / 作曲:梅田千晶
伸びやかで美しい旋律の楽曲です。
その伸びやかな部分をバイオリンが担っているので、より一層遠くに引き伸ばされそうな感覚があります。
この辺りの楽器の役割も意図的なものだとは思うのですが、3人のバランス構成の良さを感じさせられました。
9.こもりうた / 作曲:梅田千晶
「安らかな眠り」や「母の愛」を思わせる優しい旋律の楽曲です。
主旋律はバイオリンが中心なのですが、ハープが所々で混じってくるのが良いなと思いました。
10. Holiday`s Morning / 作曲:梅田千晶
前トラックで眠りにつき、朝がやってきます。
イントロの秒針を思わせるような音に始まり、なんとなく不ぞろいな旋律だなと思わせ、そこにわざと音を絶妙に外した口笛を合わせてきます。
それらによって、ちょっとまだ寝ぼけたような雰囲気が出ていて面白い楽曲です。
朝の風景を思わせます。
まとめ
聴き返してみても「瑞々しく美しい音楽」であることにやはり間違いはなく、3人のバランスの良さも感じました。
そして、興味深いのは楽曲のテーマが「日常の風景」に纏わるものが多く、しかもそれらがタイトルを適当に付けているわけでは無く、楽曲にその意図が散りばめられており、風景が鮮明に浮かぶような仕掛けがある点です。
伝統音楽だったり、美しさだったりに注目が集まり易いCDだとは思うのですが、「日常の風景」というものにも是非注目して聴いてみて欲しいです。
と、ここまで書いてようやく気付いたのですが、”日本人の感性に溢れている”というのは、まさにそういうことなんでしょう。
「日常の風景」を音楽に昇華する感性と言うのが日本人らしさなのではないでしょうか。
女性的な美しさ、日本人的な感性の美しさ、とにかく美しさに溢れた素晴らしい作品でした。