制作コンセプトが明瞭で、ファンの期待に応えられている抜群のリメイク作品!
2020年 4月24日発売 / スクエアエニックス
まだプレイは継続しておりますが、1周目のエンディングを見終えましたのでレビューさせて頂きます。
予定では4周はしようと思っています。
目次
ポジティブ要素
① 原作の良さを消さないリメイク作品
FF7リメイクの後にこちらをプレイしたのですが、リメイクと言ってもやり方は様々なんだなと感じました。
聖剣3は追加要素はありますが、原作に忠実なリメイク作品です。
改変や余計な追加要素がないため「リメイク」という言葉の中に「リマスター」という言葉も含まれているような印象を持ちました。
しかし、これが大きな成功の要因だったように感じます。
ファンが求めていたものはまさに、このような形でのリメイクだったのではないでしょうか。
「これで良いんだよ!」と思ったのは私だけじゃないはずです。
追加要素はあるのですが、エンディングまでのシナリオには何も変化がありません。
本編中に追加シナリオへの伏線すらありません。
音楽のアレンジも変わっているのは音色が中心です。
旋律はもちろん、リズムやキーも変更が無く、懐かしさすら覚える出来栄えになています。
相変わらずアイテムや武器屋等の店員は不思議な踊りで主人公ご一行を向かい入れます。
こういった「原作で印象的だったものは大きく変化させない」といった方向性が徹底されているなと感じました。
これが非常に印象が良く、特にオリジナル版を若かりし頃にプレイして、それを懐かしみたいプレイヤーにとっては非常に楽しめたのではないでしょうか。
② 遊び易さの部分に改善がみられる
オリジナル版で大変だったアイテムの整理方法に改善がみられていました。
種は一気に植えられますし、装備品は購入画面で装備でき、不要になったものはまとめて売ることができます。
目的地が表記された☆印の存在もゲームプレイを快適にさせてくれました。
階層のあるダンジョンでは、多少の混乱を招いた部分はありましたが、サクサクと進めやすかったです。
このようにオリジナル版で不親切さを感じた部分が改善されているのは、期待していたものに応えてくれたように感じ、嬉しい部分だと思いました。
またオリジナル版では扱い難く、上級者向けのキャラクターであったアンジェラが活躍し易くなったのを始め、どのキャラクターを選んでも大いに活躍してくれるという点でゲームとしての楽しさが大きく増したと思います。
しかも、それぞれのキャラクターにしっかりと戦闘面での個性がありますので、クラスチェンジ含め様々な組み合わせで戦術を練るのも非常に楽しいです。
そして、結果的に全てのキャラクターを操作したくなります。
これらの点も大きなポジティブ要素であると感じました。
そして、これが周回プレイへの意欲にも繋がっていくわけです。
③ 周回プレイが遊び易くなった
上述のように周回プレイの意欲が高まるわけですが、そこに追い打ちを掛けるように「強くてニューゲーム」の要素が追加されています。
元々テンポの良いゲームですが、2周目以降は更にテンポが良くなりますので、従来なら面倒になりがちな周回プレイを快適に楽しむことができます。
選んだキャラクターによる戦略やシナリオの変化を存分に楽しめるのは大変魅力的です。
また、この周回プレイを楽しむのが前提とされているようなバランス調整が施されており、キャラクターのレベルが1周目でも上がり易い仕様になっています。
ここに「周回プレイこそこのこのゲームの醍醐味ですよ!」という制作者側の明確な意図が感じられ、好印象を持ちました。
④ 嬉しい追加要素
「クラス4の追加」
見て下さい、このパワーワードを。
こんなの絶対にクラスチェンジ目指しちゃいます。
こういうワクワクさせる要素をしっかりと、それも適度に追加されているというのはファンの期待にしっかり応えていることを意味しているのではないでしょうか。
ネガティブ要素
① 操作性(ボタン配置、カメラワーク)
ボタン配置は色々試してみたのですが、どれもしっくり来ませんでした。
私のプレイしたSwitch版のデフォルトは、以下の配置ですが、
A 弱攻撃 X 強攻撃 B ジャンプ Y ローリング
私はAとYを反対にしました。
理由は直前にFF7リメイクをプレイしていて、攻撃しようとしてクルクルとローリングする現象が止まらなかったからです。
配置転換してバトルはスムーズになったのですが、フィールドではこれが厄介なことになりました。
モブに話し掛けようとして、あるいはアイテムを取ろうとしてローリング(ひどい時は崖下に転落)ということが何度もありました。
そもそもの問題は話し掛ける、アイテムを取るという操作の判定が悪いということだと思います。
「その距離感でローリングするんかい!」ということも多かったです。
配置を変えてない人で、私同様にリースを主人公にしていたら、モブに話し掛けようとして「そこーっ!!」と、村人やアイテムに襲い掛かる現象は多かったのではないでしょうか。
カメラワークは敵を捕らえにくくなる場面がありましたので、人によっては気になる部分だと感じました。
ロックオンが上手く行かない場面もありました。
② やや気になるロード時間と突然のアプリケーションエラー
私はSwitch版ですが、ロードはやや長く感じられることもありました。
ストレスになる程では無かったので許容範囲でしたが、人によっては受け取り方は異なるかもしれません。
また、突然のアプリケーションエラーが生じたことが1度だけありました。
2周目のクラスチェンジのムービー中でした。
直前にセーブしていたので大きな問題にはなりませんでしたが、この辺りの問題は軽いものではないとは思います。
なお、直後に全く同じようにクラスチェンジしても同じ現象は起こりませんでした。
③ キャラクター同士の掛け合いがいまひとつ
せっかく声優を起用していて、様々なパーティの組み合わせを楽しめるゲームなのに、道中やイベントにおけるキャラクター同士の掛け合いがどこか機械的で魅力に乏しかったです。
中でも酷かったのが2周目でお金が溜まっていると、お金の話ばかり(それも独り言)ばかりを繰り返すようになりました。
厳しい意見ですが、これは作り込みの甘さが出てしまっているなと感じました。
④ 周回プレイはもっと遊びに幅を持たせて欲しかった
周回プレイの引き継ぎ要素が固定になっていますが、これは選択制の方がプレイの幅が広がり、もっとやり込めるゲームになったはずではないでしょうか。
例えば、「俺強ぇ!」状態を楽しみたと思ったときに引き継げる要素が中途半端です。
クラス4の装備品は没収されるのはまだ分かるのですが、装備できるアビリティの数に変化が無いのは「強くてニューゲーム」として中途半端さを感じました。
どのみち雑魚もボスも瞬殺できるわけですから、ここの制限も取っ払って、より多くのアビリティを装備し、もっともっと強さを実感したかったです。
また、瞬殺プレイに飽きてもう1度手応えのあるバトルを楽しみたいと思ったときの選択肢が「ニューゲーム」しかないのも勿体なく感じました。
レベルは1からでも、所持金は引き継ぐとか自由に選択させてくれればもっと周回プレイの回数を伸ばすことができたのではないでしょうか。
そうすれば、「今までプレイしたゲームの中で最も多く周回プレイしたゲームは?」と考えたとき、かなり多くの人がこのゲームを挙げるような現象が起きたかもしれません。
「周回プレイと言えば聖剣3ToM!」というような代名詞が得られた可能性も感じます。
ちょっと妄想しすぎかもしれませんが、それでも勿体なく感じます。
⑤ マルチプレイが実現できなかったのは小さくない課題
私はこの作品に関しては素晴らしい点の方が多く感じますし、実際長く遊べているのですが、それでも100点満点はつけられません。
唯一の減点項目となるのがマルチプレイの撤廃です。
実際にプレイしてみますと、この3Dアクションでマルチプレイというのが技術的に困難なのは理解できます。
おそらく、2画面無いことにはカメラワークの問題がどうしようもないのだろうなと想像つくからです。
しかし、個人的にマルチプレイこそが聖剣シリーズの楽しみという認識があり、オリジナル版で出来たものがリメイクで出来なくなるという”後退”を受け入れるのは難しく、特にプレイ開始時はこの無念さばかりが頭を巡りました。
実際にオリジナル版を夫婦でクリアしたのですが、今作ではどうなったかと言いますと、宝箱等の取り逃しに煩い妻が大部分を操作し、ボス戦を私が操作するというスタイルを選択しました。
私がフィールド移動を操作させてもらえるようになったのは2周目からです。
「楽しさが半減した」とまでは言いませんが、やはり喪失感は大きかったです。
技術の壁を打ち破る、いつかそんな日が来てほしいなと願わずにはいられませんでした。
ポジティブかネガティブか分からない要素
キャラクターの追加が無かった
追加キャラクターという発想はアイデアとしては挙がっていた可能性が高いように思いますが、今作ではみられませんでした。
例えば、弓矢や銃といった遠隔物理攻撃のキャラクターが追加されたら、なんて妄想をしてしまいました。
ただ、シナリオへの影響は必須で、「余計な追加要素」になってしまう可能性も大いに感じます。
さらにパーティの組み合わせが増える、新しい戦い方ができるという魅力は大きいようにも思いますが、ちょっとこれに関しては難題で私には答えが想像もできません。
今後の聖剣伝説シリーズに期待すること
あくまでも私の印象ですが、この作品の反響の大きさを感じております。
多くの人が楽しんでいる声が聴こえてくるのです。
おそらく低予算だったのでは?と思わせる部分もあるのですが、そういった中でこの質のリメイク作品を出せたということは、聖剣シリーズに情熱が再燃する可能性もあるかもしれません。
すなわち、言ってしまいますとナンバリングの新作の制作にも繋がるような会心の作品だったのではないでしょうか。
もし新作の制作が始まるようなことになりましたら、シナリオやキャラクターの部分は改善を期待したいです。
今作においてネガティブ要素には挙げていませんが、グラフィック面の改善によりシナリオやキャラクターの薄さがオリジナル版よりも気になる部分がありました。
キャラクターがちょっと共感に苦しむような言動をし、シナリオが展開されていく部分があり、低年齢層向きのシナリオに感じてしまいましたので、新作ではマナの木の設定はそのままに、シナリオやキャラクターの魅力が高まれば良いなと思いました。
また、今回オリジナル版、リメイク版とプレイしていて気付いたことがあります。
それはSwitchとの相性の良さです。
シナリオは腰を据えて大画面でプレイし、レベル上げ等の作業は携帯モード、という遊び方が個人的になかなか巧く嵌っているように感じたのです。
聖剣シリーズはハイレベルなグラフィックに拘る必要性が無い、そもそも求められていない作品であるように感じました。
なので、その辺りを活かして気軽に楽しめるアクションRPGという立ち位置のシリーズになるのも悪くないように感じました。
かといって、ソシャゲで新作は心底がっかりしますので、そういう方向には捉えて欲しくないなと大変心配はしております。
そして、新作ではマルチプレイもそうですし、オンラインで友人等とプレイできるような作品になったら非常に良いなと期待しております。
ワイワイ遊んで盛り上がる。
そういう部分にも期待したいです。
まとめ
総合的には、ほぼ満足のいくリメイク作品というのが私の感想です。
特にリメイク版としての制作コンセプトが、余計なことをしない、オリジナル版の印象深い要素を大切にする、といったようにはっきりしていることに対し、拍手を贈りたいです。
オリジナル版をかつてプレイし、特に周回プレイした経験があるような方はプレイした方が良いです。
マルチプレイ撤廃だけは要注意なので、そちらを期待している人は体験版からプレイした上で考えるのが良いのではないかと思います。