ゲームサントラとは異なる、映像作品ならではの植松サウンドを楽しめる!
コンポーザー:植松伸夫(メイン)、関戸剛、福井健一郎、河盛慶次
FF7の2年後のストーリーを描いた映像作品である、FF7ACのサントラをレビューします。
私自身は通常版のDVDの他、コンプリート版となるBlu-rayも合わせて何度も観ている作品となります。
サントラの全体像
植松伸夫さん作曲のFF7の楽曲をロックテイストにアレンジされた楽曲が中心になっている他、「PIANO COLLECTION」の楽曲も映像作品内で使用されているので収録されています。
「PIANO COLLECTION」の楽曲についてはこちらでは触れませんので、これらの楽曲につきましては、こちらの記事をご参照ください。
またイメージソングとして氷室京介さんの「Calling」という曲が収録されています。
プロデユーサーの野村哲也さんがファンであるという縁での起用のようです。
アレンジャーはコンポーザー4名の他に、浜口史郎さん、外山和彦さんの名前があります。
植松伸夫さん、関戸剛さん、福井健一郎さん、河盛慶次さんの面々で、ロックアレンジと言いますと何かピンと来る方も多いのではないでしょうか。
この方々は「THE BLACK MAGES」(以下TBM)のメンバーです。
すなわち、TBMが楽曲の作成に関わっているということになります。
TBMとは日本語にすると「黒魔導士」を意味しますが、こちらは2003年に植松さんやスクエニ社員(かつての社員も含む)の面々で結成されたロックバンドです。
FFの楽曲を関戸さんと福井さんがロックアレンジし、それを演奏するために結成されたバンドで3枚のCDを出しました。
私も観に行きましたが、単独ライブまで成功させた高い人気を誇ったバンドでした。
過去形になっているのはお察しの通り既に解散状態にあります。
この辺の事情は植松さんの言葉から想像するに、おそらくメンバーの仕事形態等の変化に伴い、集まるのが難しくなったのでしょう。
ナチュラルな理由での解散、というイメージを持っています。
ちなみにFFACの楽曲制作に関わった面々の中では、関戸さんがギター、福井さんがキーボード、河盛さんがベースをTBMにおいて担当されていました。
ちょっと私のTBMへの熱が上がり過ぎて話がサントラから逸れてしまいましたが、TBMが活動真っ只中の2005年にこのサントラも発売されました。
なので、FF7ACとTBMは実のところ切っても切れないような関係性にあります。
それを象徴する楽曲も収録されていますので、ここから収録曲の話題へと移ります。
トップレート曲
※ 背景色付は☆5 その他は☆4
[DISC1]
約束の地 ~The Promised Land~
Beyond The Wasteland
Sign
For the Reunion
Water
[DISC2]
J-E-N-O-V-A [FFVII AC Version]
再臨: 片翼の天使 ~Advent: One-Winged Angel~
Cloud Smiles
約束の地 ~The Promised Land~(作曲:植松伸夫 編曲:福井健一郎)
コーラスのみの編成による楽曲です。
この楽曲にはある種の系譜を感じます。
FF7の「片翼の天使」で初めて楽曲の中にコーラスを取り入れ、FF10の「祈りの歌」においてコーラスのみの楽曲を作成し、そこから繋がるようにFF7ACにおいてもこうした楽曲が生み出されました。
これらの楽曲は植松さんが新しい挑戦をしたものだと捉えておりますので、重要な楽曲だと思っております。
作品のオープニングの中で流れるBGMで、非常に強力な印象を残します。
FF7ACの世界観を印象付ける重要楽曲であり、しかもその完成度は福井さんの編曲含め高いです。
オーケストラコンサートにおいても2006年の「VOICES -music from Final Fantasy-」で聴くことができたのですが、是非また聴いてみたい楽曲の1つです。
Beyond The Wasteland (作曲:植松伸夫 編曲:福井健一郎)
これはゲームではなく、映像作品の楽曲なんだなというのを感じ取ることができる楽曲です。
嫌な予感を感じさせる部分が続いてから、それが的中して襲い掛かってくるといったように、ゲームならそれぞれの場面で2つの楽曲を使用して分けられていたかもしれないと思いました。
なんと言いますか、1つの楽曲で”場面”だけでなく、”展開”というものを感じさせます。
かといって、映画音楽的な感じでもないので、そのバランスが非常に気に入っている楽曲です。
Sign (作曲:植松伸夫 編曲:福井健一郎)
ピアノソロの曲かと思いきや、コーラス音も入ってきます。
シンプルさはありますが、怪しさが滲み出た楽曲で思いの外耳に残ります。
サントラとして聴いていても前トラックが「Beyond The Wasteland」、後ろトラックが「ティファのテーマ(Piano Ver.)と続くのですが、この並びが聴いていて非常にしっくり来て心地良いです。
怪しい雰囲気の曲、怪しい雰囲気のピアノ曲、優しいピアノ曲と続くのが良いです。
For the Reunion (作曲:植松伸夫 編曲:関戸剛)
この曲もピアノ、特に静かに入る曲の入りの部分が印象的です。
ピアノの上に、徐々にベース音、パーカッション、エレキギターと順に音を被せていくのですが、そこの調和も凄いです。
やはり前後トラックからの流れも心地良いです。
Water (作曲:植松伸夫 編曲:植松伸夫、河盛慶次)
「エアリスのテーマ」のアレンジ楽曲です。
この楽曲もアレンジが素晴らしいです。
特に聴きどころだと感じるのが、こういう主旋律の無いタイプのアレンジ曲かな?と思わせておいて、間を置いて主旋律のピアノが入ってくるところです。
旋律の崩し方も、そこにエアリスが居るような、居ないような雰囲気になり、非常に映像シーンともシンクロするのでお見事だと思いました。
J-E-N-O-V-A [FFVII AC Version] (作曲:植松伸夫 編曲:関戸剛)
こちらの楽曲は戦闘曲らしいロックアレンジで好きな人が多いと思います。
あまり派手さはなく、低音域でまとめているのがまた格好良く感じます。
Cloud Smiles (作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎)
これぞFFの楽曲!という最高のフィナーレ曲です。
植松さんらしい、優しい主旋律に、それの優しさを増強させる浜口さんのオーケストラアレンジに完璧なコンビネーションを感じます。
なんと、この曲もオーケストラコンサートで演奏されたことがあります。
2004年の「TOUR de JAPON -music from FINAL FANTASY-」で演奏されました。
今思うと非常にレアでしたが、なんとも言えない幸せに満ちた空間になったのを覚えております。
ベストトラック
再臨: 片翼の天使 ~Advent: One-Winged Angel~ (作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎、福井健一郎)
もしかしたらオーケストラにロックバンドのサウンドを乗せるという試みはこの曲が初めてではないでしょうか?
今ではよくある構成なのですが、少なくても私はこの楽曲で初めて聴きました。
オーケストラとロックの素晴らしい融合に非常に興奮して、何度もリピート再生したのを覚えています。
ゲーム音楽の歴史に大きな1ページを作った曲とまで私は思っております。
そしてこの曲と言えばTBMの存在です。
オーケストラコンサートの舞台で彼らが登場したときの喜びは計り知れないものがありました。
TBMが出演してこの曲目を国内で演奏したのは「VOICES -music from Final Fantasy-」と「PRESS START 2007」の2回です。
特に前者の盛り上がりは物凄いものがありました。
もうこのような機会は訪れないでしょうが、この楽曲への思い入れはこうした思い出も相まって私にとって強烈なものになっております。
まとめ
ゲームのサントラとは異なった、映像作品ならではの展開を楽しめる楽曲があります。
また、サントラを聴いていても1つの楽曲における展開だけではなく、各楽曲の流れからくる全体的な展開も感じ取ることが出来るサントラです。
そういった要素に加え、本田聖嗣さんのピアノやTBMのバンドサウンド、さらには浜口史郎さんのオーケストラアレンジと大変多くの要素が詰まった大変豪華なサントラだと思います。
映像作品の方を繰り返し見ながら音楽の良さを徐々に感じていくのも良いと思いますし、サントラで音楽だけに集中して聴いてみるのも多くの人にとって良い時間を過ごせるのではないかと思います。