ヒット作とは呼べなかった「ライブアライブ」は何故リメイク制作に至ったのか?その経緯は熱かった!
2022年 7月22日 発売 / スクウェア・エニックス
2022年2月10日に配信された「ニンテンドーダイレクト」において予期せぬ発表がされました。
なんと「ライブアライブ」のリメイク作品が2022年7月22日に発売されるという、自称「ライブアライバー」の私にとって衝撃的な内容でした。
というわけで、今回の記事ではリメイク作品の制作が実現に至った経緯や、「ライブアライブ」の魅力について「何がそんなに良いのか」というお話を書かせて頂こうと思います。
目次
なぜサプライズだったか?
私自身、「ライブアライブ」という作品は、ゲームが趣味の1つとも言える私の中でも5本の指に入るくらい好きで、特別な思い入れのある作品です。
私はライブイベントに2度参加し、オンライン配信番組も視聴しており、それどころかディレクター(リメイク版ではプロデユーサー)の時田貴司さんツイートも毎日チェックしていたくらいで、「ライブアライブ」の動向については常にアンテナを張っている状態でした。
にもかかわらず、「リメイク」については全く頭に無かったわけです。
正直なところ、せいぜい「Switchでも配信されることはあるかもしれない」程度の予測してしていませんでした。
もう、そのくらい噂が全くありませんでしたし、時田さんからのいわゆる「匂わせ」みたいなものも全くなかったわけです。
それが突然、たまたまライブタイムで視聴していた、むしろライブタイムでの視聴は初めてだった「ニンテンドーダイレクト」においてリメイク作品のトレーラーが流れてきて、それどころか発売日まで決まっていて、「更には予約開始!」なんて言われたらもうパニック状態だったわけです。
よくここまで情報を内密にできたなと感心したりもしたのですが、その日からはもう「ライブアライブ」のことで頭がいっぱいで、サントラを聴いたり情報を集めながら過ごしている今日この頃であります。
リメイク作品の制作が実現に至った経緯
そんな興奮に身を任せ情報収集していたところ、ファミ通の時田さんへのインタビュー記事を見付けたので、読んでみました。
その記事はかなりのボリュームで熱の入った内容だったのですが、時田さんがリメイク作品を制作するに至った経緯について事細かにお話されていました。
詳しくはとにかくファミ通の記事を読んで頂きたいのですが、時田さんがTwitterで仰っていたことや私の参加したイベントでの体験も含め、おおまかな流れを以下にざっとまとめてみます。
① 「ライブアライブ」はヒット作とはならなかった。背景としては「FF6」と「クロノトリガー」というスクウェアのビックタイトルに挟まりる格好になってしまったことで作品が埋もれてしまい、そこにソフトの値段の高騰化という事態も重なってしまった(複数のソフトを購入するのが難しい時代だった)という不運もあり売り上げ本数が振るわなかった。
② 発売からしばらくはあまり大きな話題になることは無かったが、時を経てインターネットが普及してきた時代になると「ライブアライブ」に強い思い入れを持っているファンの存在が分かってきて、口コミがサイトや掲示板、ゲーム実況動画等で広がりをみせ始めていた。
③ たまたま任天堂から「WiiUのヴァーチャルコンソールで配信してみませんか?」という話を受け、これをきっかけに版権元の小学館と話をする機会を得た。結果、複数の漫画家の方々が絡んだ難しい版権問題も整理が進みVCでの配信が可能になった他、Tシャツやタオル等イベントグッズ制作の許可も頂けた。
④ 時田さんはスクエニ社内でタイミングを図り、チャンスのあるときに「ライブアライブ」のリメイク作品や続編タイトルの企画を何回か出していた。
⑤ その結果として実現には至らない状況が続いていたが、イベント(2015年、2018年、2019年のライブイベント及び、2020年のオンライン配信イベント)をコンスタントに開催することで「ライブアライブ」の旗を上げ続けた。
⑥ 旗を上げ続けることでリメイクや続編を望むファンの声が上がり続け、更にはスクエニ社内外(ゲーム制作者の他、声優さん等も含む)からも「ライブアライブ」が好きであるという声が上がってくるようになり、TV番組でも作品を取り上げてくれた芸人(ノブオさん)が現れたりし、「ライブアライブ」への熱が高まって行った。
⑦ このように背中を押してくれる人がたくさん出てきている中、2019年頃(ライブイベント時はまだ何も始動していなかった)に、タイミングよく「ブレイブリーデフォルト」や「オクトパストラベラー」の制作をしているスクエニの浅野チームに合流することができ、「HD-2Dリメイク」という具体的で現実味のある構想が出たことにより、制作が実現することとなった。
私自身もイベントに参加していたので「ライブアライブ」への熱感は肌で体験しておりましたので、そうした熱が背中を押せたと考えると感無量です。
そもそも集客面を考えますとイベントをコンスタントに開催できること自体も凄いことで、たとえ売上本数が少なくても「ライブアライブというゲームが心に刻まれている人たちがいかに多いかということを証明しているかのようでした。
そして、「HD-2D」というのは、私も実際に「オクトパストラベラー」をプレイしていて非常に可能性を感じさせられていたので、「確かにそれなら原作を活かした良いリメイクになるぞ」と思いました。
「HD-2D」であるからこそ「ライブアライブ」の質がより高まるという期待
「HD-2D」というのは、ドット絵でお馴染みの2Dグラフィックに3Dのコンピューターグラフィックを掛け合わせたハイブリット的な新しい試みなのですが、具体的にはキャラクターはドット絵、背景はCGといったようにして制作されます。
これの何が良いかと言いますと、まずドット絵にはレトロゲームのような「ゲームらしさ」というのがあります。
「ライブアライブ」であれば、主人公キャラクター達のイメージイラストを複数の漫画家の方々が描いていた魅力的なキャラクターをドット絵で表現し、それが嵌っていましたので、旧作のキャラクターやゲームのイメージを損なわずリメイクが可能となることが期待されます。
すなわちそれは、「キャラクターが活きる」と言えるのではないでしょうか。
加えて、音楽についても大きな恩恵があります。
近年のゲームはグラフィックの向上により、音楽が強く主張できなくなっています。
例えば、映画音楽もそうですが、メロディーで主張してしまうと演出バランスが悪くなってしまう傾向にありそうです。
すなわち、現代的な高グラフィックのゲームにおいては、メロディアスで馴染み易い、耳に残り易い旋律という「ゲーム音楽らしい音楽の良さ」が薄くなりかねないのです。
しかし、「HD-2D」であれば、キャラクターがドット絵なので、主張の強い音楽が溶け込み易くなるわけです。
私のようなゲーム音楽ファンにとって、こんなに画期的な方法が見付かったことは、これからもゲーム音楽を楽しむにあたっての大きな一歩であると感じているくらいなのです。
「ライブアライブ」のリメイクが「HD-2D」であることの意味合いは非常に大きく、漫画家の方々の描いた魅力的なキャラクターたちが下村陽子さんのメロディアスな楽曲に乗って、旧作のイメージを壊すことなく大いに躍動してくれるのではないかと期待を持つことができるのです。
「ライブアライブ」がプレイヤーたちの心に刻まれたのはどうしてか?何がそんなに良いのか?
旧作については、スーパーファミコンの古いゲームですし、いくら根強いファンが居るからといって完璧なゲームでは無いことは先にお話しておきます。
例えばですが、癖がありますし、あまり親切なゲームではなかったと思います。
具体的には、選択をミスしたときやアイテムを取り逃したときのフォローがあったりするわけではありません。
独特な戦闘システムは馴染み難さもありますし、高レベルで覚える技が「最強技」ではなく、全く使い物にならないなんてこともあります。
それどころかキャラクターによっては初期から使用できる技が最も使い勝手が良い(というか、マシ)なんてことまであります。
こうしたものに翻弄されたり、プレイしていて詰んでしまったりし、そこで止めてしまった人も少なく無いかもしれません。
では、なぜ心に刻まれるかという話ですが、結論から言いますと「演出」があまりに素晴らしいからだと思います。
「ライブアライブ」というゲームにおいて良い部分はたくさんあります。
キャラクターに魅力がありますし、そのキャラクターが発する言葉も印象に残るものが多いです(いわゆる「テキスト」が全般的に優れています)。
シナリオも予測の出来ない展開が待っていて面白かったり、驚かされたり、感動的させられたりもします。
音楽も印象的なものが多く、思わず口ずさんでしまう楽曲がたくさんあります。
効果音も世界観にマッチしており、やたら印象的です。
小ネタも豊富で面白く、プレイヤー同士で会話すると大笑いしたりします。
しかし、これらの良さというものを更に引き出しているのが「演出」の素晴らしさだと思います。
時田さんは演劇のキャリアもお持ちの方なので、何と言いますか、「舞台的な良さ」みたいなものがあるんです。
音楽や効果音の出し入れだったり、テキストの使い方、キャラクターの動きなど、非常に細かなところまで考えて作られているのが分かります。
良いテキスト、いわゆる名言の数々が生まれたのも、演出というところから考えて出てきたセリフ回しだったりするようです。
有名楽曲である「MEGALOMANIA」にしましても、楽曲のクオリティも勿論非常に高いところにありますが、やはり演出効果で更に人を惹き付けている部分があるように感じます。
実際、「すっげー、何だこれカッコイイ」とプレイする手を止めてしまった実況動画なんかも見たことがあります。
そして、個人的にもう1つ強い魅力に感じられるのがプレイしていて「人間味」というものを強く感じられる点です。
「喜び」や「どん底の悲しみ」
「勇敢さ」や「臆病さ」
「リスペクト」や「嫉妬」
「成功」や「失敗」
「信じること」や「裏切られること」
「優しさ」や「理不尽さ」
「ユーモア」や「毒」
「ひたむきさ」や「あきらめ」
「本能」や「知恵」
これらの対極的な要素を素晴らしい演出の人間ドラマで堪能できるのです。
極端なようでいて、結構リアルなドラマにも感じられます。
こうした点も私が「ライブアライブ」に強く惹かれる理由となっています。
リメイク版に期待すること、心配なこと
リメイクされる聞くとシナリオだったりキャラクターだったりに追加要素を期待する人は多いと思います。
それは理解できるのですが、個人的には「ライブアライブ」において追加要素というのは止めて欲しいなと思っています。
原作は不完全なようで完成されたものであると思っているからです。
しかし、それでも修正して欲しいところは1つだけあります。
それは主人公の一人である「アキラ」のキャラ性能です。
主人公たちの中で最もお気に入りのキャラクターなので、もっと戦闘で活躍できるキャラクターになって欲しいなと願っているのです。
「使い勝手の悪さ」といった要素も含めての楽しさではあったのも否定はできないのですが、個人的には主人公といえば「アキラ」なのでもっと格好良い姿を見たいのです。
しかし、これについては上記のインタビューで既に改良されることが時田さんが口にされています。
キャラクターデザインをした島本和彦さん直々に「アキラ」の弱さを改善するよう要望があったとのことで修正が入っているとのことです。
余談ですが、「アキラ」の近未来編で言えば「Go! Go! ブリキ大王!」のバンドメンバーが誰になるのかも気になります。
願望としては、とにかく作品に思い入れのある人が参加して欲しいのですが、ライブ同様にヴォーカルは時田貴司さんに、演奏はLaiD Back Gorillaのメンバーに加え、ギターに旧作パブリッシャーである岡宮道生さんというのも嬉しいなと思います。
話は戻りますが、原作のネガティブな部分はいくつかありますが、それらも含めての「ライブアライブ」なので、全てを改善して欲しいわけではありません。
どこまで修正するかの線引きは難しいところなのですが、今の時代に出すゲームなので「不親切さ」の部分はなるべく修正した方が良いだろうなとは思います。
その点で少し心配なのは、一部に現代的な「シンボルエンカウント」ではなく、「ランダムエンカウント」を採用している編があるのですが、ストレスを感じさせないかというところは気になります。
インタビューによるとエンカウント率を下げるということはやっているとのことですが。
そして、「演出」の部分において、声優による「ヴォイス」が加わりますが、そこは旧作からの最も大きな変化と言って良いと思います。
そこが「ライブアライブ」特有の演出効果に対してプラスに働くのか、マイナスに働くのかというところは少し心配があります。
文字だったからこそ際立っていた演出があったという印象もありますので、巧く嵌って欲しいところだなと願っております。
まとめ
いかにも「ライブアライブ」らしい「熱さ」からリメイク作品の制作に至ったと言えそうで、ここまでは間違いなくサクセスストーリーなのですが、制作し発売することがゴールであるかと言えば、当然ながらそうではありません。
旧作からのファンを満足させること、そして初めてプレイする人たちにも素晴らしいゲーム体験を提供できてこそのサクセスストーリーとなるのです。
そして、その成功の先にはこちらもファンの待望である「続編」という道も開けてくるはずです。
非常に難しい仕事に挑まれていますが、私はきっと成功できると思っていますし、発売されたらしっかりやり込み、「続編」の制作実現や成功のために、良かったことや気になったことを声に出して届けたいと思っております。