個性的なサウンドの正体を探る!
コンポーザー:菊田裕樹
早速ですが、オリジナル版聖剣3をクリアしたのでサントラを何度か聴き返してみました。
ゲーム未プレイとクリア済みでは受ける印象はまるで異なります。
具体的には未プレイ時よりレートが上がった曲が10曲近く増えています。
現在は他の作品(FF7リメイク)をプレイしていますが、それでも聖剣3の曲が頭から離れないような状況なので、このタイミングでレビューしようと思います。
目次
サントラの全体像
聖剣3のクリア後レビューでも触れましたが、音楽もなかなか個性的だという印象を持ちました。
漠然とした印象だったのですが、何が個性的に思えたかと考えてみました。
まず全体的にリズミカルな曲が多いように感じます。
どういうことかと言いますと、いわゆる裏打ちのリズムで乗り易い曲で合ったり、パーカッションパートが目立っていたりする曲が多いかなと思いました。
また、旋律の部分では、高らかな旋律が多いです。
私が口ずさむとすぐに裏声になってしまいます。
しかも、裏声からなかなか戻ってこれないという、”風呂場における口ずさみ泣かせ曲”が多いなと思いました。
この辺りも個性的なのではないでしょうか。
そして、これらの高い旋律とリズミカルな曲調が合わさっていることで、ポップな印象を抱きます。
ボス戦の曲等はもちろん異なるのですが、こういった特徴のある曲をフィールド曲として使われたりしているので、ゲームをプレイしていても音楽が非常に印象的で耳に残り易いです。
一方で気になるのは、楽曲名が全て英語なことです。
それも、具体的なゲーム場面を表すような意味の言葉ではなく、実際に曲も複数の異なる場面で使用されているものがあります。
これも個性的に思える部分の1つではあるのですが、私は正直なところ「もったいないな」と思ってしまいました。
曲自体はもちろん良いのですが、これですと「あまりゲームのシーンを考えながら作られていないのかもしれない」と思えてきてしまいます。
サントラを聴いていても、自分の中でいまひとつゲームシーンとリンクさせて聴くことができない部分もあったので、楽曲への思い入れが薄くなってしまいます。
そして、最も気になったのが曲の収録順です。
結構メチャクチャな順番になっています。
例えば、オープニングムービーの曲やトップメニューの曲がDISC2の真ん中あたりに収録されていたり、イベント曲がラストボスバトルの後に収録されてたりという困ったことになっています。
ゲームを振り返りながらサントラを聴くという体験の障害となり、何度聴いても大きな違和感を覚えます。
この点は非常に残念で、経緯も想像が付かないため「どうしてだろう?」という疑問がいつまでも残り、モヤモヤとしてしまっています。
トップレート曲
※ 背景色付は☆5、その他は☆4
[DISC1]
Where Angels Fear To Tread
Ordinary People
Whiz Kid
Walls And Steel
Axe Bring Storm
Little Sweet Cafe
Another Winter
Raven
Swivel
Oh I’m A Flamelet
Don’t Hunt The Fairy
[DISC2]
Person’s Die
Harvest November
Different Road
Powell
Nuclear Fusion
Positive
Meridian Child
Closed Garden
Splash Hop
Last Audience
[Disc3]
Can You Fly Sister?
Decision Bell
Angel’s Fear
Farewell Song
Where Angels Fear To Tread
聖剣2のオープニングデモ曲である「天使の恐れ」のアレンジ曲となっており、今作においてもオープニング曲として使用されています。
世界設定を説明するようなムービーのバックで流れる曲なので、世界観の構築に非常に重要な曲です。
ここで言う世界設定とは、聖剣シリーズ恒例の「マナの樹」にまつわるものなので、前作から引き続きこの楽曲を使用するというのは納得ができます。
「天使の怖れ」がより洗練され、マナの樹の神秘性が表れた楽曲に仕上がっている印象があります。
後半部分の勇ましさもこれから始まる各主人公の物語を想像させ、素晴らしく思います。
Ordinary People
村の曲ですが、なかなかポップな印象が残ります。
パーカッションの一部でもありますが、主旋律が木琴やマリンバといったイメージです。
村の長閑な風景等よりも、村の人々が軽快に、活発に行き来しているような印象を感じさせます。
Whiz Kid
街と言いますか、王国のBGMで使用されています。
スネアの音が前面に出ていて、こちらも勇ましさを覚える楽曲です。
私は途中に高音のポップなバッキングが入る箇所が聖剣3の楽曲らしさが感じられるので好きです。
Walls And Steel
この楽曲は聖剣3の中でも私が耳に残った曲ナンバー1です。
恐ろしいほどに私の頭の中で鳴り続けている曲です。
特に前半部分が似たようなフレーズを繰り返してくるのでヤバいです。
しかし、前半部分では単調なシンプルな曲という印象を抱きますが、中盤、後半とかなり意外な展開をしていくので、そこがこの曲の好きなところです。
耳に残るだけであったら、むしろ嫌いな曲になっていたかもしれません。
そこをがらっと変えてくるので、凄いなと感じさせられました。
ベストトラックに挙げたいくらい好きな楽曲の1つです。
Little Sweet Cafe
商業都市で使用されています。
こちらも風景というよりも、そこで商売をしている人々を想像させます。
というか、想像させるのは”アイツら”です。
不思議な踊りを披露されている例のヤバめな店員たちです。
この楽曲を聴いているとあの謎の光景が目に浮かんできます。
なので、笑ってしまいます。
電車の中とかでは聴かないよう、今後も注意を怠らないようにしていこうと思います。
Swivel
街道や高原で使用されている楽曲です。
この曲をバックに雑魚敵と対峙しながら道を進んで行くのですが、なかなかポップな感じです。
お察しの通り、聖剣3楽曲の特徴である高い旋律とリズミカルな曲調が強く出ている楽曲です。
本来なら使用されるシーンと楽曲の特徴から違和感を覚えてもよさそうにも思えるのですが、実際にプレイしてみるとむしろ前へ前へ果敢に進んで行くような印象を抱き、違和感どころか大変心地良いです。
ゲームBGMとしての新鮮さを感じさせるような素晴らしい楽曲だと思います。
Oh I’m A Flamelet
イベント曲です。
この楽曲は不思議な雰囲気で、曲の展開も意外な方向ばかりへ進むのが特徴的です。
それでいて、心地良く1つにまとまってます。
そんな中で地味にタンバリンの音が効いているという「らしさ」も感じさせます。
聴いていて癖になる素晴らしいトラックです。
Harvest November
砂漠の楽曲です。
この曲も曲の展開が素晴らしく、中毒性があります。
特に前半部分の同じパターンを繰り返すのかと思いきや、ずれていくところが良いです。
絶妙な心地良さがあります。
Powell
森で使用されている楽曲です。
これはプレイしていて、突然曲の素晴らしさに気付き、思わず手を止めて聴き入ってしまいました。
静かに鳴っているタンバリンのようなパーカッション音も良いですし、何よりも曲の最後の部分の展開が素晴らしいです。
例によって意外性のある展開というやつです。
戦闘の効果音とも素晴らしいマッチングをみせます。
こちらも私のベストトラック候補で、悩んだ曲の1つです。
Positive
ボス戦勝利の楽曲です。
軽快ですね。
一歩前に進めて、これからも冒険を勇ましく進められそうな気分にさせられます。
Closed Garden
トップメニューの画面で、ゲームを再開するたびに聴くことになるので印象に残ります。
やはり、ポップな感じです。
しかし何故、収録順でここに来たのだろう、という強い疑問がある楽曲です。
DISC1で聴きたかったです。
Last Audience
闇市等で使用されています。
アイテムの補充に何度も訪れ、その度聴いていたので印象に残っています。
小気味悪さがある楽曲なのですが、私としてはゲーム体験としてここに来るとアイテムの補充ができるとうところで、聴くとむしろ安心感を覚えてしまいます。
菊田さんからしたら不本意かもしれませんが、私にとってはゲーム音楽の印象というのは体験に大きく影響されるというのを痛感させられた楽曲でもあります。
Farewell Song
エンディング中のイベント曲です。
この曲はもう少しスローテンポだったらより好みだったかもしれません。
その後のスタッフロール曲である「Return To Forever」 の後半部分において、こちらにアレンジが加わわりキーが異なる曲が使用されているのですが、実はそちらの方がより印象に残ています。
「終わってしまった」と放心状態でしばらく画面を眺め、しばらくして「なんかこの曲も良くない?」となりました。
この辺りもやはり体験を通して印象付けられています。
ベストトラック
Meridian Child
もはや説明も要らないような名曲ですが、オープニングムービーの楽曲です。
各主人公の導入部分の物語が終わり、いざ旅立つときにスタッフロールの粋な演出と共に流れる楽曲です。
演出的にも非常に印象に残りますし、楽曲も非常にメロディアスで人気が高いのも頷ける楽曲です。
私はゲームプレイ体験以前は聖剣3と言えばこの曲だったのですが、ゲーム体験をしてみるとむしろこの楽曲は異色ですね。
癖が無くメロディアスで、最初から最後までシンプルな心地良さがあります。
特に導入部の後半から主旋律に入るところの盛り上がりなんて王道的なダイナミクスですけど、あっさり虜にさせられます。
その導入部分が前作のラストボス曲である「子午線の祀り」が何気に使用されているというのが、また凄いです。
全然異なる場面なのにナチュナルに取り入れられています。
異色の曲ではありますが、この楽曲で聖剣シリーズに私の関心が向いたという強力な背景があるので、迷いつつもベストトラックの座は譲れませんでした。
しかし、これもDISC1で聴きたかったです。
サントラを聴いているときの違和感も強いですし、初めてサントラを手に取ったとき、「まさか未収!?」と焦りました。
まとめ
各楽曲のレビューをしてもう1度考えてみますと、個性的なのは「高い旋律」と「リズミカルな曲調」だけでなく、「意外な展開をする曲が多い」というのも挙げられそうです。
中毒性が高いですが、これらの個性的で癖のある楽曲が多いため、ゲーム体験がなく聴くとサントラとしてはあまり好評価には繋がりにくいだろうなと思います。
実際のところ、私の中ではゲームプレイ体験が加わったことにより、サントラのお気に入り度も大きく変わりました。
なので、私のように「Meridian Child」で聖剣3に興味を持ったような方が居ましたら、サントラを聴くよりもまずはゲームをプレイした方が良いかと思います。
もちろん、他のサントラについてもゲーム体験は重要なのですが、聖剣3に感じてはそこの影響力が非常に大きいように感じました。
なお、聖剣3リメイク版においては、こちらのオリジナル楽曲をBGMとして使用することも可能となっています。
そちらの購入を予定している方が居ましたら、2周目にオリジナルBGMを使用してみるのも面白いのではないかと思います。