思わず口ずさみながらも、ふっと考えさせるフレーズが潜んでいる!
コンポーザー:境亜寿香、遠山明孝、戸部田英樹、三角由里、三宅優、矢野義人
ゲームのプレイ状況:オリジナル版、リマスター版ともクリア、少々のやり込み
ナー ナナナナーナーナーナーナ かたまりだましーい ♪
というわけで、今回は「塊魂」サントラをご紹介します。
サントラのみの記事になりますので、ゲームレビューにつきましては前回の記事をご参照ください。
サントラの全体像
全16トラック、収録時間は67分となっております。
シンガーソングライター含む多くのアーティストを起用したヴォーカル曲中心の内容になっているのですが、楽曲制作につきましては全曲ナムコのサウンドチームが担っているのが個人的には驚きでした。
作詞者については個人名の情報は無く、「NAMCO」として登録されております。
ロックからピアノソロ、フーガにシャズ、ポップス、マンボ、更には少年合唱から松崎しげる(あえて呼び捨て)まで、とにかくバラエティに富んだジャンルの楽曲で構成されています。
参加アーティストの方々が自身とは別ジャンルの楽曲を歌唱したりしており、楽しさを重視されております。
ある種のバラエティ企画のようなものかもしれませんが、実際に聴いてみますと非常に質の高い楽曲に仕上がっており、大変な意欲作であることが分かります。
思わず口ずさんでしまうような楽しい楽曲ばかりですが、ふっと考えさせられるようなフレーズを含んだ楽曲もあり、聴き応えもあります。
多くの楽曲において、オープニング楽曲である「ナナナン魂」の旋律がベースに潜んでおり、こうした作曲におけるテクニカルな部分も楽しむことができます。
トップレート曲
※ 背景色付は☆5、その他は☆4
ナナナン魂
塊オンザロック~メインテーマ
Overture
月と王子
フーガ#7777
Lonely Rolling Star
ステキ星のさんぽはステキ
Katamari Mambo ~魂シンドロームMix
真っ赤なバラとジントニック
カタマリたいの
さくらいろの季節
愛のカタマリー~エンディングテーマ
ナナナン魂 / 作曲:三宅優
塊魂の世界観を構築する、不思議で楽しい楽曲です。
鼻歌チックなハミング音で主旋律を奏でており、発音は全て「ナ」です。
なぜ「ナ」なのかはよく分かりませんが、この響きがコミカルさを演出しています。
ベース音のヴォーカルも良い味を出しています。
歌っている「ゆうさま」なる人物が何者かが気になるところですが、コンポーザーの三宅優さん自らが歌唱されているようです。
素人とまで言ったら失礼かもしれませんが、歌唱が上手過ぎないことによって返って良い味を出してしまっている珍しい楽曲とも言えるかもしれません。
塊オンザロック~メインテーマ / 作曲:三宅優 ヴォーカル:田中雅之
旋律は前トラックと同様ですが、一転プロのヴォーカリストによる本格的なロックオレンジとなります。
この「本番」が訪れたような流れが個人的に気に入っているポイントです。
田中雅之さんはロックバンド「クリスタルキング」の元ヴォーカリストです。
ヒット曲「大都会」の高音域ヴォーカルはあまりにも有名ですが、こちらの楽曲では低い声で歌唱されています。
しかし、シャウトに関して流石の心地良さを感じます。
ブラス隊のバッキングも良い感じで、賑やかな楽しい楽曲に仕上がっています。
メインテーマに相応しい、素晴らしい楽曲です。
Overture / 作曲:境亜寿佳、三宅優
ここでまた一転し、ピアノソロ楽曲でじっくり聴かせます。
こちらの楽曲も「ナナナン魂」のアレンジ曲になります。
ここまでゲーム内においてもサントラと同じ順番で聴くことになりますが、同一の旋律でしっかりと揺さぶられ、ゲーム全体の楽曲の素晴らしさを予感させます。
月と王子 / 作曲:遠山明孝 ヴォーカル:新沼謙治
この楽曲はラップ調と言ってよいのでしょうか。
主旋律と言うものがあまりなく、詞の印象が深い楽曲です。
ヴォーカルの新沼謙治さんは、なんと演歌歌手です。
メッセージ性の強い箇所があるのですが、そこの力強さが良いです。
これを演歌歌手が、と思うと不思議な魅力をより一層強く感じます。
フーガ#7777 / 作曲:境亜寿佳
アカペラヴォーカルによるフーガ楽曲です。
低音域の主旋律の歌唱から始まり、後を追うように中音域のもう一人が後追いし、さらに高音の女性ボイスが後追いしてきます。
ヴァラエティに富んだサントラですが、その中でも特に強い個性を感じさせます。
ステキ星のさんぽはステキ / 作曲:三角由里
インストルメンタル曲になります。
こちらは最近好きになった楽曲です。
プレイに疲れてステージ選択画面で放置して休んでいたら繰り返し耳に入ってきて、気付いたら耳を奪われていました。
主旋律の無いタイプの不思議な楽曲ですが、癖になってくるものがあります。
楽曲の複雑な展開も素晴らしいのですが、何より音色の組み合わせの良さを感じます。
Katamari Mambo ~魂シンドロームMix / 作曲:三角由里 ヴォーカル:松原のぶえ、坂本ちゃん
こちらの楽曲もサントラの中で強い存在感があります。
タレント坂本ちゃんの合いの手をバックにマンボを歌い上げる演歌歌手の松原のぶえさん。
目立たないわけがありません。
魅力はやはりマンボ特有のリズム感だとは思うのですが、演歌とは全く異なる歌唱方法をしている松原さんにも注目が集まる楽曲です。
部分的にユニゾンで参加していたりする坂本ちゃんも声の相性が良いなと思いました。
真っ赤なバラとジントニック / 作曲:境亜寿佳 ヴォーカル:水森亜土
こちらはジャズテイストの楽曲になっております。
何と言っても透明感のある水森亜土さんのヴォーカルが印象的です。
水森さんは音楽のみならず様々な芸術領域で活躍されている方ですが、ヴォーカリストとしてはジャズにも触れられているようで、他のトラックとは異なり”本業”ということになりそうです。
カタマリたいの / 作曲:戸部田英樹 ヴォーカル:浅香唯
浅香唯さんの歌う”パッヤ パーヤ パー”でお馴染みのトラックです。
こちらも耳に残り易い楽曲です。
ジャンル的にはこちらもジャズテイストで、サックスの音色も印象的です。
ちょっとエロティックな囁きボイスの箇所も洒落ていて素敵だなと思いました。
さくらいろの季節 / 作曲:三宅優 ヴォーカル:かたまり隊Jr
児童合唱による楽曲になります。
メインヴォーカルの少年の歌声がとにかく素晴らしいです。
言葉では言い表せないような、天才的な声の操り方をしてます。
歌詞はどのように解釈すればよいのでしょうか。
子供の時のふとドキドキする感覚とか、その正体がよく分からない感じとか、しかし着実に成長していっている自覚とか、そういったものを表現されているように感じます。
歌詞が何処かぼやけており、それが子供たちの歌声と相まって”子供ならではの感覚”というものが見事に構築された、スペシャルな楽曲だと思います。
この楽曲を聴いて何も感じない方はほとんど居ないのではないでしょうか。
迷った末にベストトラックには挙げませんでしたが、大変な名曲だと思います。
愛のカタマリー~エンディングテーマ / 作曲:矢野義人 ヴォーカル:松崎しげる
とにかく人選が素晴らしいです。
オファーしたナムコにも、引き受けて下さったヴォーカルの松崎しげるさんにも大変な感謝を伝えたいくらいです。
タイトルは氏の代表曲である「愛のメモリー」に掛けています。
素晴らしい歌声で壮大な曲を歌い切り「やっぱうめぇな、凄いな!」などと興奮していると、間奏でやや自虐的でユーモラスな語りが入ります。
エコーの掛かった”日に焼けた肌”はゲーム音楽史の伝説の一幕ではないでしょうか。
歌詞も素晴らしく、色々なものを巻き込んで塊大きくして星にするというゲーム内容に沿っています。
「塊」を「大きな心」という言葉に置き換えているような印象で、ゲームの見方がちょっと変わりますし、それに気づくと松崎しげるの歌唱の暖かみにも気付かされます。
強烈な個性はもはや、音楽ジャンルが「松崎しげる」といった様相を呈しているようにまで感じます。
こちらもベストトラック候補でしたが、最高のエンディング曲だと思います。
ベストトラック
Lonely Rolling Star / 作曲:矢野義人 ヴォーカル:椛田早紀
ヴォーカルは椛田早紀(かばた さき)さんです。
私も当時視聴していましたが、ASAYANの「モーニング娘。」のオーディションで最終審査まで残っていらっしゃった歌手です。
素晴らしい声質、高い歌唱力を感じるのですが、何よりその女性的な歌い方に好感を抱きます。
こちらの楽曲のような乙女チックな楽曲を歌唱するのには持って来いな人材という印象です。
夢を追う恋人を複雑な気持ちを抱きながらも応援する女性の心を歌った楽曲になります。
具体的には、”大切な人だから応援するけど、本当はすぐにでも会いたいし、たまには私のこともかまってね”といった内容です。
楽曲が先にあったのか、ステージが先に合ったのかは分かりませんが、こうした楽曲がゲーム内のおとめ座ステージで使用されているのも粋だなと感じさせます。
歌詞に女性の可愛らしい魅力を感じさせるのが良いなと思うのですが、”語らい重なり カタマリ絡まり”という部分が特に気に入っています。
韻を踏みつつ、カタマリというキーワードもしっかり混ぜてくるのが見事だなと思いました。
コード進行が「ナナナン魂」と一緒のようなので、楽曲のバックで「ナー ナナナナナーナーナーナ ナーナーナナーナー」と口ずさんでみると面白いです。
「塊魂」をプレイしていて最初に好きになった楽曲がこちらで、使用されるステージを選んでプレイしていたくらいの楽曲なので、こちらをベストトラックとして挙げました。
おっさんが口ずさむには余りにも気落ち悪いのですが、プレイしながらどうしても歌ってしまいます。
まとめ
とにかく良い楽曲ばかりで、1度聴き始めると何度も聴いてしまう魅力があります。
ゲームが未プレイであっても、ゲーム音楽ファンならサントラだけは必ずチェックしておいて頂きたいと思う程です。
失礼ながら何故か作曲者と言う部分にあまり関心が行っていなかったのですが、調べてみますと「ことばのパズルもじぴったん 大辞典」の方でもベストトラックに挙げさせて頂いた楽曲のコンポーザーである矢野義人さんがこちらでも大活躍されていました。
矢野さんだけでなく、他のコンポーザーの楽曲も素晴らしいものばかりで、こちらのサントラを聴き返してみたら益々ナムコサウンドへの関心が高まる結果となりました。
というわけで、今後もナムコサウンドにも注目していこうと考えております。